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第74歩目 はじめての成体!妖狐と二人っきり⑤


前回までのあらすじ


お互いの利害関係が一致したので、妖狐と模擬戦を行うことにした


□□□□ ~美しき大妖怪~ □□□□


薄暗い公園の中お互いに距離を取る。

そしていよいよ模擬戦を開始しようとしたその時、


「ちょ、ちょっと待つのじゃ。今準備するからの」


そう言って妖狐はなぜか服を脱ぎだした。


「・・・」


あまりの唐突な行動に正直呆気に取られてしまった。

これから戦おうというのに、服をなぜか脱ぎだすというあまりにも理解の範疇を越えた行動に一瞬思考が停止する。


・・・。


そんな俺にはお構いなしに妖狐はどんどん脱ぎだし・・・

ついには一糸も纏わぬ姿の妖狐が目の前に現れた。


「うむ。待たせたのじゃ。では早速やるとするかの」


.....なにをやるの!?模擬戦だよね!?まさか夜の模擬戦とかじゃないよね!?


混乱しつつも、妖狐の真意を探る必要がある。


「.....ちょ、ちょっと待て。妖狐はなにをしてんの?」

「なにって.....準備だが?」

「準備だが?じゃなくて!なんで服を脱いだの!?そういう作戦なのか!?」


色仕掛けの作戦とかなら百歩譲ってわかるが.....分かる訳ないだろ!なんの力を見るつもりだよ!?


「作戦な訳なかろう。なにをそんなに動揺しておるのじゃ?妾の裸などいつも風呂で見ておろう」


相当動揺しているので、仮に作戦だったとしても成功なのかもしれない。


しかし、いきなり裸になるのは反則だと思う。

いつもお風呂で裸を見ているからいいとかの問題ではない。

お風呂の時はそれ相応の覚悟をして見ているからいいが、こういう不意打ちには慣れていない。


それにいくら妖狐が幼児体型とは言っても、そこは女体。ついつい色々な場所に目がいってしまう訳で・・・。


「.....ふ、服を着るのは無理か?戦いにくい」

「無理じゃな。せっかく買ってもらった服を粗末にする訳にはいくまい?」

「.....そ、粗末?どういうことだ?」


.....意味深な言葉を言うなよ!気になって・・・


───ちらっ


.....あ~!もう!本当にきれいな体だな!


「今、ちら見したであろう?」

「.....み、見てない」

「妾は主の奴隷なのだから、ちら見などせず堂々と見たら良かろう?」

「.....だ、だから見てないって言ってんだろ」

「その反応.....本当に主は愛い主人なのじゃ。妾は別に嫌でもないから見ても構わぬぞ?」


.....え?嫌じゃないの?それなら・・・いやいや!ダメだ!我慢、我慢!


ひたすら鋼の意思で目を背き続ける。

ここ二日間は妖狐が一緒の部屋なので、夜の日課がおざなりになっているのも精神的にきつい。

一度雰囲気に流されると、今後もずるずるといってしまい、歯止めが効かなくなりそうで怖い。


「.....むぅ。意気地のない主なのじゃ。まぁそんなところも好ましいがの」

「.....い、いい加減俺をからかってないで訳を言え」

「ふむ。まぁ、よかろう。服を脱いだ理由は妾も本気を出すためじゃ」

「・・・」


.....え?なに?脱げば脱ぐだけ力が出るってやつ?お前どこのウ〇仮面だよ!?


「成体に変化すると体が大きくなるからの。そうなると今着ている服が破れてしまうのじゃ」

「あ.....成体になるのか。てっきり痴女になればなるほど力がでるのかと・・・」

「どんな勘違いをしておるのじゃ!?妾を変態扱いするでない!」

「いやいや。妖狐は普通に痴女気質あるだろ.....え?成体になるの!?」

「今そこにツッコむのか!?.....主の感性がよくわからぬのじゃ」


成体と言えば、妖狐が今現在変化できる最終段階だったはず。

きつねから幼体に戻った時もステータスが大幅にUPしているところを考えても、成体になれば更に強くなることが予想できる。


ただ以前幼体が通常の状態と言っていたので、もしかしたら成体になることは体に負担がかかるのではないだろうか。

これは変身系のお約束とも言っていい。某雑誌に登場したフリ〇ザや戸〇呂弟なんかがいい例だ。

もし妖狐もその例に漏れないとしたらとても心配になる。


「.....体は大丈夫なのか?無理はするなよ?」

「む?確かに負担はかかるが、時間制限があるからの。体が無理だと判断したら勝手に戻るから心配ない」

「時間は?」

「30分じゃな」


意外と長かったでござる!

時間制限と言っていたから、てっきり某ウ〇トラマンのように3分くらいかと思っていたが・・・


ただ勝手に戻るとはいえ、30分も負担をかけるのはやはり好ましくないだろう。

そういう疲れや痛みなんかは知らないうちに蓄積されていくものだと、スポーツをやっているものなら誰でも知っている。


.....今回はスポーツではなく、変化だけど・・・まぁ、似たようなもんだろう。


「じゃあ、30分もかからないように気を付けるか」

「ふん!妾をナメるでない!30分ぐらい持ちこたえてみせるのじゃ!」


.....なんでやる気出してんだよ!?せっかく体を気遣ったのに!


俺の気遣いの言葉が気に入らなかったのか、妖狐は闘志に燃えている。


この辺りも異世界との認識違いなのだろうか?

それともプライドの高い妖狐だからだろうか?

どちらにしても全くわからん。


そんな俺をよそに、妖狐はいつものように変化する


───ぽん


かわいらしい音とともに辺りが冷気と煙に包まれる。


───ゾゾゾッ


妖狐の姿は冷気と煙に包まれいまだ見えないが、さすが成体というべきだろう。

悍ましい殺気というか妖気に肌がぴりぴりとする。それに、この体に纏わりつくような威圧感・・・。


.....これか。危険度『中』の正体は。この背筋に嫌な汗を掻く感じ・・・ボス猿戦以来だな。


事実手には汗を掻き、いくばくか心臓の動きも早い気がする。

つまるところ、俺は緊張をしていることになる。逃げられるのなら逃げだしたい気分だ。


・・・。


しばらく待っていると煙の向こうから、まるで他を睥睨するかのような、まるで他を従わせるかのような、高圧的で、それでもどこか親しみに溢れた、きれいな透き通った声が聞こえてきた。


「待たせたの。この変化は慣れていないので時間がかかるのじゃ」

「・・・ッ!」


息を呑むとはこういうことを言うのだろうか。

煙の向こうから現れた存在を一目見ただけで思わず息を呑んでしまった。


目の前に現れた妖狐は確かに成体だ。

きれいな黄色だった髪が銀色に変化し、月の光に照らし出されたその銀髪はまるでこの闇夜の全てを支配してしまうかのような美しい輝きを放っている。長さもかなり伸びており、足元まで届きそうだ。


背丈は少し高くなっているようだが、相変わらず絶壁なのは変わらない。

それでもやはり女性らしい丸みを帯びたその容姿は、少女の側面を残しつつ、大人の色香も併せ持つとても妖艶な妖しさを醸し出している。


そして一番特徴的なのが.....六本の尻尾だ。

六本の尻尾を優雅にたなびかせているその姿は、大妖怪の名にふさわしい王者の風格がある。


これだけの異様でも息を呑むには十分なインパクトがある。

しかし.....それでも.....そんなことを全部抜きにしてもいいぐらいの衝撃がいま俺を襲っている。


それは・・・


「それでは早速やるとするかの」

「・・・」


「いつでもかかってきて良いのじゃ」

「・・・」


「.....む?主?聞いておるのか?」

「・・・」


妖狐が俺の側に近寄ってくるのが見える。


「主~?意識はあるか~?」

「・・・」


体を揺さぶられたことで全身が覚醒していくのがわかる。

脳の神経細胞から体の各部へと電気信号が正常に動きだした証拠だ。


「.....す、すまん。もう大丈夫だ」

「一体どうしたというのじゃ?ぽけっ~としおって」


きっと妖狐にはわからないんだろう。俺がこうなった原因が。

だったら伝えてあげた方がいいだろう。きっと喜ぶだろうし。


「妖狐」

「なんじゃ?改まって」

「すごくきれいだ」

「・・・へ?」


妖狐は突然なにを言われたのかわからないといった感じで呆気にとられている。


「聞こえなかったか?すごくきれいだぞ。心臓が止まったかと思うぐらいびっくりした」

「なっ!なななななにを今更なことを言っておる!あ、当たり前であろう!妾は大妖怪なのじゃぞ!?」


大妖怪は関係あるのか?妖狐だからきれいなんだと思うが・・・


ただよほど嬉しかったのだろうか、六本の尻尾がそれはもう忙しなくぶんぶんと振られている。

かわい・・・いや、これだけの数の尻尾だとちょっとうっとうしいかも?


『脱げばいいってもんじゃない!萌えの極意は脱ぎより着せにあり』と大学の友人が言っていたように、

俺ももふもふについては一言いいたい。


尻尾も増やせばいいってもんじゃない!もふもふもほどほどだから癒されるんだ!


妖狐には後できつく言っておこう。.....いや、心の中でとどめておくか。

怒らせると怖いし。きっと悲しむだろう。


・・・。


もふもふ論に結論が出たところで、妖狐がいつもの質問をしてきた。


「.....そ、そんなに妾は美しいか?」

「もちろん。絶世の美女とは妖狐のことを言うんだろうな」

「.....ね、姉さまと比べてみてどうじゃ?」


.....本当そればっかりだな。アテナにどんだけ対抗意識を燃やしてんだよ。


ただここは妖狐のためにも真実を伝えてあげた方がいいだろう。


「怒らず最後まで聞けよ?いいな?」

「.....む?よ、よかろう」

「ぶっちゃけどっちも美しいんだが、女性という括りで言うなら()()()()アテナが圧倒的に美しかった」

「.....そ、そうか」


妖狐が誰が見ても落ち込んでいるとわかるぐらい項垂れてしまった。

六本の尻尾も地面にペタンとしな垂れている。あれで掃き掃除をすればかなりきれいになりそうだ。


「でも、今の妖狐はアテナに勝るとも劣らない美しさだ」

「ほ、本当か!?」

「あぁ、人は極めればここまで美しくなれるもんなんだな。

 .....いや、妖狐だからか?どちらにしても恐れ入ったよ。すごくきれいだ」


ラズリさんもきれいな人だったが、今の妖狐はそれ以上だ。

アテナを神秘的な美とするなら、妖狐は究極的な美だと言える。今でもドキドキしているぐらいだ。


「.....ひ、一つ、問いたい」

「なんだ?」


ただそんな俺とは対照的に妖狐の反応は意外なものだった。至って冷静である。

てっきり、アテナにも勝るとも劣らないと誉めたもんだから大喜びすると思っていたのだが・・・


「.....そ、それは.....あ、主をも魅了できるほどの美しさだと言えるかの?」


妖狐はそれはもう恋してる乙女のように恥じらいつつ上目遣いで尋ねてきた。

こんな仕草、恋愛ゲームでしか存在しないと思っていた。破壊力は抜群だ!かわいい!


「.....お、俺の反応を見てわからなかったか?妖狐に魅了されまくりだっただろ」

「そ、そうか!妾に魅了されまくりであったか!ならばよい!.....ま、まぁ当然の結果じゃな!」


そう言うと妖狐は、尻尾を嬉しそうにたなびかせながら両手を口にあてる仕草でかわいく微笑んだ。かわいい。


ちゃんとしてれば.....いや、今はちゃんとしてなくても可愛い子なんだよな~。もふもふだし。



.....てか、戦わなくていいのか?30分しか成体でいられないんだろ?



次回、いつも通りの歩さん!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(※以下、主人公の中での順位です)


美女度(かわいいも含んだ上での総合)


『アテナ』≧『妖狐(成体)』>『アクアスカイ』≧『ラピスラズリ』>『妖狐(幼体)』>『ニケ』>『受付嬢(※1)』>『セラフィナイト』>『護衛仲間(※2)』



親愛度(愛情以外に保護欲も含んだ上での総合)


『ニケ』>>>>>『アテナ』>『ラピスラズリ』>>『妖狐』>>>『セラフィナイト』>>『アクアスカイ』>『護衛仲間』=『受付嬢』



大きさ度(なにがとは言えない)


『アテナ』≧『アクアスカイ』>>『セラフィナイト』>『護衛仲間(※3)』>>『ニケ』>『受付嬢(※4)』>越えられない壁>『ラピスラズリ』>『妖狐』



(※1)比較的胸の小さいお姉さん

(※2)フルール受付嬢エシーネさん

(※3)比較的胸の大きいお姉さん

(※4)パレス受付嬢アシーネさん


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