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歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~  作者: なつきいろ
第7章 躍進 -乙女豹アルテミス編-
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第254歩目 十連ガチャ会議!


 前回までのあらすじ


 宵越しの金はもたないのが粋ってもんでしょー( ´∀` )



 遂に目的地である『王都カルディア』に着いた。


「ようやくか。やっと......やっとニケさんに会える。実に二年ぶりだなぁ」


 感慨もひとしおだ。

 期待に胸を躍らせる。


 俺は一刻も早くニケさんに会いたいッ!


 ということで、検問を無事通過後、早速教会に祈りを捧げに───といきたいところだが、その前にやらなければならないことが幾つかある。


 まず、魔動駆輪の都市内使用許可申請は目下の急務となる。

 国王との面会を控えている以上、ここで騒ぎを起こすのは何かとマズい気がする。


 俺は「まだ見ぬお菓子を誰よりも先に食べるんだー( ´∀` )」と脳内お菓子畑なことを言っているアテナと、「あんたの行くところにあたい在りさ」と脳内お花畑に染まっているインカローズを連れて、王都を散策がてら冒険者ギルドへと向かうことにした。


 言うまでもないが、ドールとモリオンは留守番となる。

 ドールは酒に弱く(臭いにも)、モリオンは姉の権限で留守番を強制されたからだ。


「さすが王都だな」


 王都というだけあって、王国内のどの都市にもないにぎやかさがここにはある。

 行き交う人々の数や種族、建物の数など、頭二つ分ぐらいは抜き出ている印象だ。


 それに、絢爛豪華さを競う人間族の国都『フランジュ』とも大分異なる。

 どこか無骨さを残しつつ、こだわりを感じることができる趣のある街並みだ。

 そうだな。昔、大学の友人達と旅行で行ったロドス島の街並みに近いものがある。

 さすが王都というよりかは、「これぞドワーフの都市」とでも言うべきかもしれない。


 ただ、気になることもある。


 見渡す限りに広がる、酒場、酒場、酒場、酒場、酒場、の異様な光景。

 右を見れば『酒店』、左を見れば『酒店』の、のぼり旗がずらっと並んでいる。

 この光景はもはや、『一寸先は闇』ならぬ『一寸先は酒場』状態だ。


「というか、酒場ありすぎだろ!?」

「なんだ、あんたは冒険者なのに知らないのかい?」


 きょとんとした表情を見せるインカローズ。

 その表情からも、恐らくは一般常識レベルのことなのだろう。


「なにを?」

「ここはね、またの名を『酒池肉林の都市カルディア』とも言うんだよ」

「酒池肉林?」

「そうさ、池や湖が作れるぐらい酒が集まる名所ってこと。あたいらにとってはまさに楽園だね」

「それ、酒池肉林の意味間違っているだろ!?」


 インカローズ曰く。


 酒を造るは『酒造りの町ルニアカ』。

 酒を呑むは『酒池肉林の都市カルディア』とのこと。


 冒険者の間では常識らしい。


 今にして思えば、確かに『ルニアカ』には酒場らしきものが全くなかった。

 どうやら、ドワーフの(酒とモノ作りに対する)こだわりは徹底しているようだ。



 ※※※※※



 魔動駆輪の申請を終え、時刻は夕方少し前。

 各家庭及び酒場からは、腹の虫を刺激する夕飯の炊煙(すいえん)が立ち上ぼり始めていた。


 普段なら、俺達も今頃は夕飯の準備に大忙しという状況になっている訳なのだが、今はみんなして真剣な面持ちでテーブルを囲んでいた。


 というのも、今回ばかりは仕方がない。

 確かに夕飯時なのだが、それでも教会はまだ開いている。


 となれば、祈りを捧げにいかない理由はどこにもない。

 また、捧げにいってはいけない道理もない。


「(もぐもぐもぐー)......歩、お腹ぺこぺこペコリ○ヌだよー。空腹過ぎてー、アテナちゃんストライクしそーr(・ω・`;)」

「......はい。アテナ、アウト」

「Σ(・ω・*ノ)ノ 」

「(むぐむぐむぐ)......アユム、我もお腹空いたのだ」

「はいはい。というか、お前ら、お菓子食ってるじゃねぇか! 夕飯前だぞ!?」


 更には、ニケさんのことだ。

 十連ガチャの性質上、ニケさんには必ず当たることだろう。


 それは良いのだが───というか、大変喜ばしいことなのだが......。


 仮に明日祈りを捧げた場合、ニケさんとのデートは明後日以降となってしまう。

 どうやら、神界規定とやらではそういう決まりになっているらしい。


 ただ、そういう決まりとなっているだけで、強制力はないようだ。

 実際、アルテミス様は一切気にした様子もなく、何度も神界規定を破っている。


 しかし、ニケさんは大の規定バカだ。

 必ず、律儀にも神界規定を遵守することだろう。

 そこはニケさんの良い点ではあるのだが、融通の利かない悪い点でもある。


 つまり、何を言いたいかというと「ニケさんとのデートが丸一日お預け状態になってしまう」という訳だ。


 しかし、仮に今日中にでも祈りを捧げることができれば───。


「えー。寝るの遅くなるじゃーんr(・ω・`;)」

約二時間(少し)ぐらい我慢しろ。というか、風呂の時間を減らせ。無駄に長すぎなんだよ」

「ふえええええ(´;ω;`)」


 可哀想だとは思うが、ここは我慢して欲しい。

 オシャレは我慢という言葉があるように、恋路も我慢が必要なのだ。


 まぁ、恋路と言っても俺の恋路なんだけどさ(笑)

 

 そんなこんなで、今はテーブルを囲んで恒例の舞日家会議を開いている。

 議題は当然のことながら───。


「今日のご飯は何にするか、だよねー(o゜ω゜o)」

「ねぇ!? 俺の話を聞いてた!?」


 議題は当然のことながら『神様十連ガチャ前の最終確認』となる。


「確認ー? なんかすることあるー(。´・ω・)?」

「いやいや。たくさんあるだろ。というか、アテナが忘れるなよ」

「(´・ω・`)」

「いや、本当に忘れないで!?」


 今回の十連ガチャは色々と重要だ。

 まず、確定事項として『ヘスティア様にどのような加護を頂く』か。


 本来なら、俺がヘスティア様に直に頼みたいところだ。内容が内容だけに。

 それに、ドール達の分の加護まで頂けるのだから感謝の意もしっかりと伝えたい。


 ただ、ガチャの性質上、ヘスティア様に必ずしも当たるとは限らない。


「そこで、アテナの出番だろ」

「んー(。´・ω・)?」

「んー(。´・ω・)?じゃねぇよ。「お前が伝えてくれても良いよ」と、ヘスティア様がそう仰っていただろ」

「あー! そんなこともあったねー! あーははははは( ´∀` )」

「おいおい......本当に頼むぞ?」


 どうにも不安だ。


 ただ、不安ではあるのだが、恐らくは大丈夫だろう。

 なんたって、この件についてはアテナをして頑張らざるを得ない理由がある。


 それは───。


「姉さま。本当に頼むのじゃ」


 最愛の妹であるドールの切なる願いが掛かっているのだから。


「だいじょーぶ! お姉ちゃんにー、まっかせなさーい(`・ω・´)」

「うむ。よろしく頼む」


 真摯に深々と頭を下げるドール。

 それに応えんばかりに、力強く「ドンッ!」と胸を叩くアテナ。


 ゆらゆらと優雅かつ嬉しそうにたなびくドール二本の尻尾と、胸を叩いたことでぷるんと揺れるアテナの胸のコントラストは美しい姉妹愛には良く似合う。


「それにしても、ドールの希望は本当に『不老』で良いのか?」

「妾の真の望みは『不老』であって『不老』ではない。主と同じにして欲しいのじゃ」

「そう言えば、以前もそんなことを言っていたな」

「うむ。主は元の世界に戻れば歳を取るのであろう?」

「そうだな」

「ならば、妾もそうありたいのじゃ」

「というかさ、それだとドールも一緒に戻れることが前提になっていないか?」


 いや、前々から「どこへなりとも一生付いていく」とは言われていた。


 それについて、個人的に思うところもなくはない。

 それが本当にドールの幸せとなるのだろうか、と。


 しかし、ドールがそう望むのであれば、その気持ちを尊重したいとも思う。

 ただ、問題があるとすれば『本当に一緒に戻れるかどうか』だ。


「それについては問題ないのじゃ」

「なんか当てがあるのか?」

「当然なのじゃ。でなければ、こんなこと望まぬ」


 その当てとやらが何なのかを尋ねたいところだが、今は時間が惜しい。

 詳細は後日に、ということでこの場は流す。


 早速、俺は紙に『精力増強(俺用)』・『不老(ドール用)』・『壮身(モリオン用)』としたためて、アテナに持たすことにした。


「なにこれー(。´・ω・)? 」

「開けなくていい。というか、開けるな。それをヘスティア様に渡してくれ」

「うむ。それならば姉さまでも安心できるというもの。なかなか良い判断なのじゃ、主にしてはの」

「一言多い」


 元より、(通常の)アテナ(の記憶力)など信用に値しない。

 疑って、疑って、なお疑って、更に疑っても不十分なぐらいだ。

 むしろ、最初から諦めの境地で居ることのほうが健全だとも言える。


 だから、アテナには一つのことしかやらせないぐらいで丁度良い。


「問題は、これすらも忘れる可能性があることだよなぁ......」

「まさか、とは言い切れないところが姉さまだからのぅ......」

「そーんな訳ないでしょー! あーははははは( ´∀` )」

「どう思う? というか、どうしたら良いと思う?」

「そうじゃのぅ......。(はた)からでも見えるよう、その無駄に大きい乳の間にも突っ込んでおけば良いのではないか?」


 確かにそれなら目立つし、目にすれば誰でも気にはなることだろう。


 また、アテナの大きさならば、紙がクシャクシャになることはあっても、谷間の間からするりと抜け落ちる心配は全くない。

 欲を言えば、ブラジャーも着けてくれたらより万全だけど......それは高望みし過ぎか。


 問題は───。


「さすがに冗談だよな?」

「......」


 そう思いたいが、ドールさんの目付きは真剣そのものだ。

 いくら名案とはいえ、渇いた笑いしか出てこない。HAHAHA。


 何はともあれ、これでヘスティア様の件は一応片付いたことになる。

 俺達は次なる議題へと駒を進めていった。



 ちなみに、紙は突っ込みました。

 えぇ、突っ込みましたとも。むぎゅっとね。



 ※※※※※



 議題は専ら『どんな加護が欲しいか』に終始している。


 ドールとモリオンには既に俺が神界に行っていることはバレている。

 なので、会議そのものは順調と言えるほど問題なく進行中だ。


 といっても、今回の会議は触り程度に(とど)めている。

「どういうものが欲しい?」、「こんな感じの」、程度の簡単なもの。


 それと言うのも、今回祈りを捧げるのは俺とアテナのみだからだ。


 神様ガチャをするなら、今回から特典が付く十連ガチャのほうが絶対に良い。

 ということは、最低でも攻略の証が十個は必要になるということだ。


 しかし、今回はカルディア王国に突入した瞬間にドールの酒酔い問題が浮上。


 その結果、ドールの攻略の証が四個ほど足りない状況となっている。

 そして、そんな(ドール)の付き添いで留守番の機会が多かったモリオンも同様である。

 言うまでもないが、カルディア王国で知り合ったインカローズもまた同じ理由だ。

 

 だからと言って、ヘスティア様やヘパイストス様の例もあるので、こうして時間が差し迫っている中でもわざわざ舞日家会議を開いている訳だ。


「というかの。結局、その『特典』とやらは何なのじゃ?」

「そうそう。俺も気にはなっていたんだ。アテナ、どうなんだ?」

「んー。知らないよー(・ω・´*)」

「......は?」

「だからー、知らないって言ってるでしょーヽ(`Д´#)ノ」

「なんで、お前が怒っているんだよ......」


 そんな理不尽な行動を取るアテナでも、谷間の間にある紙は落ちていないようだ。

 さすがアテナ(の胸)と言わざるを得ないだろう。


「お前が知らないんじゃ、特典は期待できそうにないな」

「そんなことないよー? パパにちゃーんと「すごいのお願いねー! じゃないとー、口利いてあげないよー!」ってー、お願いしたからねー( ´∀` )」

「それ、お願いというよりも、もはや脅迫に近いな。で、実際はどうなんだ?」

「だいじょーぶ! パパは私の言うことなーんでも聞いてくれるしねー(`・ω・´)」

「ほほぅ。それはそれは......」


 結局、特典の詳細は分からず仕舞いだった。

 ただ、アテナの自信満々な様子から察するに期待しても良さそうだ。


(もしかしたら、もしかして......ゼウス様本人が、なんてこともあったりして!?)


 そう想像するだけで、顔がだらしなくにやけてしまう。

 まぁ、いくら愛娘(アテナ)のお願いとはいえ、さすがにそれはないだろうが。


 しかし、今から楽しみで楽しみで仕方がないのも事実だ。


「でかしたぞ、アテナ。ぽんぽんしてやる」


───ぽふっ。ぽんぽん


「にへへー。ありがとー(*´∀`*)」


 頭をぽんぽんされたアテナは、いつものように八重歯を覗かせながらにぱー☆と微笑んだ。かわいい。


(ちゃんとしてれば可愛い子なんだけどなぁ。胸大きいし)



 その後、ぽんぽんされているアテナをジトーとした目付きで睨みつけていたドールと、羨ましそうに眺めていたモリオン、そして「あたいにもやれ」とうるさいインカローズにもぽんぽんをして、舞日家会議は無事閉幕した。


 結論から言うと、大いに収穫があった。

 というか、「さすがドールさん!」と声を大にして叫んでしまった事案もあった。

 それについては、その時になって改めて紹介しようとも思う。


「行くぞ、アテナ」

「はーい( ´∀` )」


 夕暮れの中、俺はアテナと手を繋ぎ、教会へと急いだ。

 多くの人々は家路につこうかという中での逆行となる。


「な、なんだぁ、あんなに急いで」

「ちょっと! 危ないじゃない!」

「そんなに急いだところで、市場にはもうめぼしいものはないぞ?」


 結構目立ってしまったようだ。

 だが、今はそんな些細なことなどどうでもいい。


(ニケさん、待っていてください。今、あなたに逢いに行きます)


 ニケさんへの想いと、これからそのニケさんに逢えるという期待に胸を躍らせていた俺の足はどこまでも軽く、まるで羽のような軽やかさだった。



「あー。そういえばねー(・ω・´*)」

「ん? なんだ?」

「アルテミスお姉ちゃんがねー、会いに来いってさー(o゜ω゜o)」

「おまッ!? そういう大事なことはもっと早く言えよ!!」



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