表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

メリーさんはお笑いネタから脱却したい

作者: 名井和尚

『もしもし、私メリー。お笑いネタにされて困っているの。』


 その唐突な電話に、俺はなんと答えていいかはっきり言って迷った。なぜならば俺はメリーなどという少女…声からの推測だが…など知らないし、言っている事の意味を理解できなかったからだ。


『もしもし、私メリー。お兄さんはメリーの電話は知らないの?』


 知らないので、とりあえずネットで検索してみる。

 ……とりあえず都市伝説は判ったし、お笑いネタにされていると言っていた理由もわかった。

 迷ったり、壁の中だったり、ロリコンに襲われたり…怖い物知らずなネタが多いよな…うん。


『もしもし、私メリー。怖がられるにはどうしたらいいと思うの?』


 都市伝説から相談を受けるとは奇怪な体験だな。まあ、暇だし考えてみるか…。

 う~む…ホラー映画でも見て参考にしたらどうかな?


『もしもし、私メリー。これからビデオレンタルに行ってくるの。』


 その日はそれ以降、メリーさんからの電話は無かった。今頃、ホラー映画を見て研究しているころだろう。

 次は、背後にあるテレビからズルズル這い出したりしてな。

 まあ突然の縁だけど、少し相談に乗ったことで情が移った。彼女には頑張って都市伝説の本分を取り戻してほしいと思う。


  ◇


『もしもし、私メリー。今、角のポスト前にいるの。』


 二日後、再びメリーさんからの電話が来た。

 今回は俺の反応を見ることもなく、言いたいことだけ言って切った感じではあったが、内容としてはお約束の内容だった。

 さて、どういう風に学んだか少々楽しみである。


『もしもし、私メリー。今、スポーツ用品店にいるの。』


 …おや?この付近のスポーツ用品店ってどこだ?

 隣町だったと思ったが…遠ざかっていないか?


『もしもし、私メリー。今、ホームセンターにいるの。』


 おいおい、一番近いホームセンターでも駅三つは離れてるぞ。

 一体どこへ向かっているんだメリーさん。

 このままでは、迷走して「ここは何処なの?」と泣きながら電話するオチになっちゃうぞ。


『もしもし、私メリー。今、ドアの前にいるの。』


 ブッ!?

 とんだーっ!?一気にきたーっ!?

 徐々に迫りくる恐怖がすっぽり抜けたぞ、おい!

 ふむ…なんだか、メリーさんの行動がおかしい…フェイントか!フェイントなんだな!?

 でも、こういうフェイントの仕方って…参考にしたのは何の映画だ?


『もしもし、私メリー。今、あなたの後ろにいるの。』


 おっと…最後のオチか…どう来るかな。

 って、ここまで来て恐れていない俺も大概だが。


 ブルルン!ドッドッドッドッドッドッドッドッ…

 背後で突然発生したエンジン音に驚き振り返ると、ホッケーマスクで顔を隠した金髪幼女が回転するチェーンソーを振りかぶり、そして………。


  ◇


「もしもし、私メリー。やっといて言うのもなんだけど、これは何か違ってると思うの。」


 俺の目の前で、金髪の幼女は元気なくうなだれていた。

 確かにアレは怖いというより、危ないという感じだった。

 チェーンソーの重さに耐えかね、振り上げそのまま仰向けに倒れたのは胆を冷やした。


「非力なのに力のいる行為は危険だから。大体メリーさんの元は人形なんだから、チャイルドプレイのチャッキーみたくナイフ片手に襲ったほうがいいんじゃない?」

「もしもし、私メリー。アレはゴキ…みたいな動きで嫌なの。」

「じゃあ、電話繋がりで死亡予告を通知するとか?」

「もしもし、私メリー。それは既にメリーじゃないの。」

「でもさ……今のこの状態も『お笑いネタ』ってヤツじゃね?」

「………。」


 愕然とするメリーさんに、俺はホット・ミルクの入ったマグカップをそっと差し出した。

 メリーさんがお笑いから脱却する日は遠い…気がする。


突発的な思いつきで書きました。

最初はスプラッタなオチの予定だったんだけどなぁ…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 実はホッケーマスク怪人の映画でチェーンソーは使われたことは無い
[良い点] スプラッタにならなかったところ [気になる点] 落ちが無かったところ
[一言] 確かに最近は、メリーさんのお笑いネタ多いですよね。 私は大好きなんですけど。 今回のもとっても面白かったです。 もう、メリーさんホラー分野に入れなくなるかも。 ていうか、都市伝説から削除され…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ