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「苺の王子様よ!」
ねっ、とキラキラした瞳で私の方を見る美華ちゃん。王子様って!?
「で、なに?その男とつき合ってるわけっ?」
安藤くんは眉をぴくっと動かして聞いてくる。なんで怒ってるんだろう。カラオケの誘いを断ったからかな?
「え!あの、つき合ってるとかじゃなくて。修ちゃんは私の幼なじみなの。えと、だからね……」
「じゃ、彼氏じゃないんだな?違うんだよな?」
「う、うん」
「よし。また誘うから、今度は一緒にいこうぜ!」
さっきまで不機嫌な表情をしてたのに、いきなり笑顔になった彼は、私の肩をポンポンと軽く叩いて友達のところに戻ってしまった。嵐のように去って行った安藤君。
また誘うって言われたのも驚いてしまった。今度誘われたらどうしよう。でも、あれは社交辞令っていうもの?ただ、言っただけなら良いんだけど……
「あれは一体なんだったの?」
心の中で思ったことが、思わず口に出てしまった。
「苺は可愛いよね。修一さんが心配になっちゃう気持ちがよく分かるわ。でも、私がいるから大丈夫。まかせて!」
美華ちゃんはふふふと笑い、手を伸ばして私の頭を撫でてくる。
「修ちゃん?大丈夫って、どうゆう意味?」
ニコニコしながらも教えてくれる気配はない。分からないことが多すぎる。
『ねぇ、みか……ち』意味を教えてもらおうと思ったら、昼休み終了のチャイムが教室内に響いた。
美華ちゃんは『苺、早く片付けないと授業始まっちゃうよ!』と呟き、さっきまで見ていた雑誌を机の中にしまっている。誰かが開けた教室の窓から風が入ってきて、髪の毛が頬に触れた。
あ、そうだ。
小さい頃……『苺の髪はキレイだね』と修ちゃんに誉められたのが嬉しくて、私は髪を伸ばし始めたんだ。その時の光景が頭に浮かぶ。
うん。やっぱり、私はこのままにしておこうかな。そっと毛先に触れる。ぼんやりと考えながら次の授業の準備を始めた。