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「え!そ、そうかな?ありがとう。あ、美華ちゃん美容院はど 「 坂木、浅野!!」」
どこにするの?という私の言葉を遮り、突然割り込んできた男の子。短めの髪の毛をツンツンと立てていて、体つきはスポーツとかやっていそうな雰囲気。
えっと。
え~と?
誰だっけ?
「なんなの、安藤海翔!私と苺の楽しいお昼タイムを邪魔しないでよ!!」
私の疑問はすぐに解けた。目の前の男の子は安藤海翔君というらしい。他の中学から来た子の名前と顔をまだ覚えられてなくて。
「フルネームで呼ぶな!ま、いいや。今日さアイツらとカラオケ行くんだけど、おまえらも行かない?」
アイツらって誰のこと?安藤君は教室の隅にいた2人をすっと指差した。向こうもこちらに気づいたみたいで人懐こそうにニっと笑い手を振ってくる。
どうしよう悪い人ではないと思うけど、知らない人は苦手……それに男の子だし。でも何で私たちを誘うんだろう?安藤君はもちろん、あの2人とも私は話したことがない。朝に会っていたら挨拶くらいはあるかもしれないけど。
「ねぇ、坂木はどうなの?」
考え込んでいたら、いつの間にか私の顔を覗き込んでいた。
「ひゃあ!」
か、顔が近いよ。驚いて咄嗟に体をずらす。
「こら、苺に近づくな!!」
それに気づいた美華ちゃんが、素早く安藤くんの腕をつかんでずりずりと離してくれた。
良かった。ほっと胸を撫で下ろす。こうゆう時の美華ちゃんはすごくかっこいい。私もはっきりと断らないとダメだよね。
「私は……今日、修ちゃんと待ち合わせしてるからダメかな。安藤君ごめんね。美華ちゃんも一人になっちゃうからやめておく?」
「は?しゅうちゃん?」
美華ちゃんに振ったつもりが、なぜか安藤くんがムッとした表情で聞いてくる。
「そっかそっか、あんたは中学違うから知らないんだよね。成田修一さんのことを!」
「ふん、知らないね」
「イケメン、成績優秀、スポーツ万能……あの爽やかスマイルを見て、恋に落ちた女の子は数知れず。私たちの中学では有名だったんだから」
うんうんと頷きながら、美華ちゃんは修ちゃんの説明をしだす。
そう、修ちゃんはすごくかっこいい。よく女の子に告白されてたのも知っている。そのあと付き合っていたのかは聞いたことがないけれど。小学生の頃から勉強も教えてもらっていたし、運動だって何でもできる、それにすごく優しいんだ。
今日は新しくできたカフェに一緒に行く約束をした。私が雑誌を見て行きたがってたのをちゃんと覚えていて誘ってくれたの。そんな修ちゃんが側に居てくれることは、私の自慢だったりする。