同類
──きっと心身共に疲れていたんだと思う。
夜、明かりを消し、ベッドに横になりながら見るスマホ。
なんとなくインストールしたSNS。
世の人がどんなことを吐き出しているのか、ただただそれが気になって眺めていた。
俺のような人間はいるだろうか、なんて思いながら画面を指でなぞってスクロールする。
定時を少し過ぎた時間。
明日の休みを楽しみ帰りの支度をする。
先輩が笑いながら、追加で持ってくる業務。
どれも期日が近い資料作成。
今日彼女とデートなんだ、と帰っていく先輩。
理解を拒んだ脳はフリーズし、再起動まで時間がかかった。
所謂呆然。
さすがブラック企業。
適当に流し見をしていたところに、通知が1つ。
DMが届いた。
こんばんはー、という短い文章。
子犬のアイコン。
プロフィールを見てみたら、限界社畜OLと書かれていた。
まぁ暇だし。
挨拶を返しだらだらと話し始める。
お互いのブラックな会社について、今何をしてるのか、趣味とかあるのか、明日は休みなのか。
境遇が似ているからか、趣味が似たようなものだからか、存外やりとりは楽しかった。
ただ、
──私は君の味方だからね。
──何かあったら遠慮なく愚痴ってね。
──仕事環境も似てるし、私なら君を理解してあげられる。
連投された文章。
受け取った瞬間、脳が理解した。
あぁ、この人は同じ境遇の者達で愚痴り合いたいんじゃないんだ。
自分より下の人間を探して、自分より下がいるという現実に喜びを感じ、マウントをとっているのだ。
SNSなんてそんなもんか。
楽しく感じていた数分間が、瞬く間に虚無へと変わる。
俺はSNSに何を求めたのか。
同類を探していたんじゃないのか。
同類を探してどうしたかったのか。
結局は相手と同じ。
あぁ、この人達も大変だな、俺はまだまだ大丈夫だな、と見下していたんじゃないか。
── きっと心身共に疲れていたんだと思う。
会話を中断し、アプリをそっと削除した。
スマホの電源を切り、暗闇に包まれる。
俺はまだ落ちたくない。
そう思いながら、迫る眠気に意識を手放した。
筆者の心情100%搾りたてジュースのおかわりいかが?




