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デストロイクリミナル!  作者: さよなライオン


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第0話 月曜日の憂鬱と、唐突な非日常

 ジリリリリリリリッ!!


 鼓膜を突き刺す電子音で、杉田大智(17歳)は目を覚ました。 重たい瞼をこじ開けると、見慣れた黄ばんだ天井。六畳一間のワンルームには、ゲームのコントローラーと、コンビニ弁当の殻が転がっている。


「……あー……月曜、か……」


 口の中に残る嫌な苦味と共に、大智は重い体を起こした。スマホの画面を見る。午前六時半。 あと三十分で家を出なければ、満員電車という名の護送車に乗り遅れ、学校という名の監獄への出頭に間に合わない。


「行きたくねぇ……」


 心からの本音が漏れた。社畜として摩耗するだけの日々。楽しみといえば、通勤中に見る「アニメ」だけだ。そこには、俺のような冴えない男が、女神に選ばれ、チート能力をもらい、美少女たちに囲まれて無双する輝かしい世界がある。


「はぁ……俺もトラックに跳ねられたりしねぇかなぁ。で、目覚めたら『選ばれし勇者よ』とか言われてさ……」


 叶わぬ妄想を呟きながら、二度寝の誘惑に負けて枕に顔を埋める。あと五分。あと五分だけ……。その「あと五分」が、彼の人生における最後の安らぎだった。


 意識がまどろみの底に落ちていく。薄れゆく感覚の中で、世界がグニャリと歪むような、奇妙な浮遊感を感じた。まるで、ベッドごと奈落の底へ落下しているような――。


 ***


「――っぷしっ!!」


 大智は自身のくしゃみで飛び起きた。寒い。異常に寒い。エアコンの設定温度を間違えたか?それとも窓を開けっ放しに?


「おいおい、勘弁してくれよ……風邪なんて……」


 ぼやきながら布団を引き寄せようとして、空振る。  手触りが違う。せんべい布団の感触ではない。ザリッとした、冷たくて、細かい粒子の感触。


「……は?」


 大智は目を見開いた。そこは、自分の部屋ではなかった。


 見渡す限りの銀世界。針葉樹の森が雪化粧を纏い、吐く息は白く染まる。俺は、パジャマ(擦り切れたジャージ)一枚で、雪原のど真ん中に正座していた。


 思考が停止する。夢か? ドッキリか? それとも拉致?  いや、この突き刺すような冷気は、あまりにもリアルだ。


 数秒の沈黙の後。大智の脳内で、ファンファーレが鳴り響いた。


「き……きた」


 震える唇が、歓喜の言葉を紡ぐ。


「きたあああああっ! 異世界だあああっ! 転移だ! これあれだろ!? 気づいたら森にいるパターンだろ!?」


 寒さを忘れ、大智は立ち上がって空に向かってガッツポーズをした。会社に行かなくていい。満員電車もない。あるのは、無限の可能性と、きっとこれから覚醒する俺の伝説だけ!


「ステータスオープン! ……出ない! アイテムボックス! ……反応なし! なるほど、念じれば発動する隠れスキルタイプか!」


 完全に舞い上がっていた。自分がパジャマ姿で、極寒の雪山に放り出されたという「遭難」の事実に気づかないほどに。


 その時、森の奥から一人の女性が現れた。毛皮のコートを纏った、透き通るような白肌の美女。彼女は驚いたように大智を見つめ、そして優しく微笑んだ。


「あら、こんなところで……。旅の方ですか? よろしければ、温かいスープでもいかがですか?」


 大智は心の中で勝利を確信した。第一村人発見。しかも美女。フラグ成立。これは、約束された勝利のルートだ。


「ええ、ぜひ! 喜んで!」


 満面の笑みで駆け寄る大智。

 

 グサッ


 大智の腹部にはナイフが刺さり、服が血で滲んでいる。

 

 「.......ガハッ」


 痛みで声も出ない。雪の上に倒れる衝撃など、もう感じない。

 意識が遠のいていく.....

 

 最後の力を振り絞り、前を見ると、


 女がこちらを見て微笑んでいた............

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