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デストロイクリミナル!  作者: さよなライオン


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第12話 ポンコツパーティー

「痛ぇ、痛ぇよぉ……」


 夕方。工房の隅に敷かれた藁のベッドで、俺は全身包帯ぐるぐる巻きで悶え苦しんでいた。


「ご、ごめんなダイチ……俺たちが調子に乗ったばっかりに……」


「お前の盾っぷり、マジで最高だったぜ!」


「褒めてねぇよ! なんで俺が囮になってんだよ!」


 見舞いに来た三人組にツッコミを入れたその時。


 ――ガシャァァァンッ!!


 表の通りで、凄まじい破壊音が響いた。続いて、ミナさんの悲鳴とポチの泣き声。


「なんだ!?」


 俺は激痛を堪えて跳ね起き、三人組と共に表へ飛び出した。

 そこにいたのは、派手な服を着た肥満体の男と十数人のゴロツキ。そして、太い鎖で繋がれた巨大な鋼鉄の猪――『アイアン・ボア』だった。


「借金の取り立てに来てやったぞ、ガンテツゥ! 権利書を渡しな!」


「帰れ悪徳高利貸しのゲルド! 俺は貴様から金など借りた覚えはねぇ!」


「とぼけるな。親父さんが残した借金だよ。払えねぇなら、この工房は俺が頂くぜ。やれ!」


 ゲルドの合図で、ゴロツキたちが工房を破壊し始める。アイアン・ボアが鼻息を荒くし、農具を踏み潰す。

 親方がハンマーを振り下ろすが、鋼鉄の毛皮に弾かれ、逆に吹き飛ばされた。


「お父ちゃん!!」


 圧倒的な暴力。理不尽な略奪。

 俺はギリッと奥歯を噛み締めた。

 ここは俺の居場所だ。これ以上、目の前で奪われてたまるか!


「おい、お前ら!」


 俺は、震え上がっている三人組を振り返った。


「お前ら、『奇跡の三連星』なんだろ! あの程度のチンピラと豚、どうってことないよな! 今日から俺がお前らの戦術担当だ!」


「え!? あ、ああ! もちろんさ!」


「よし。ザック、お前は工房の裏の『焼き入れ用の油』が入った樽を、チンピラどもの足元にぶち撒けてこい! 一滴も残すな!」


「アイアイサー!」


「モグ! ザックが油を撒いたら、それに火をつけろ! チャッカマンレベルで十分だ!」


「わ、わかった!」


 最後に、大剣を震える手で握るレオンを見た。


「レオン。お前の取り柄は無駄な大声だ。あの豚の意識を限界まで引きつけろ。俺が合図するまで絶対に死ぬな!」


「俺は勇者になる男だからな!! やってやるぜ!」


 三人が配置につく。

 俺は肋骨の激痛を無視し、懐から『アンチ・マジック・ダガー』を抜いた。

 俺自身は紙装甲でも、戦場を「自分の工房」に変えれば勝機はある!


「ヒャッハー! 壊せ壊せぇ!」


「おい、なんか足元が滑るぞ!?」


 ザックが屋根の上から油樽をひっくり返し、チンピラたちが次々と転倒する。


「今だモグ!!」


「燃えろぉっ!」


 モグの小さな火種が油に触れた瞬間――ボウッ!! とチンピラたちの足元が一気に火の海と化した。


「ぎゃあああっ!? 熱ちぃぃっ!」


 パニックに陥るゴロツキども。その隙にレオンが飛び出した。


「こっちだデカブツ!! 俺の必殺・サンダー・ボイス・スラッシュを食らいやがれぇぇっ!!」


 大声と無駄な大振りに、アイアン・ボアのヘイトが完全にレオンに向いた。


「ブヒィィィィッ!!」


「ダイチ! 来たぞぉぉっ!」


「そのまま工房の中に伏せろ!」


 レオンが地面にダイブし、ボアが工房の敷地内へ突っ込んでくる。

 そこは、俺のテリトリーだ。

 俺は天井に吊るされていた極太の鎖を解放した。振り子のように落下した鎖が、ボアの前足に絡みつく。


「ブギッ!?」


 突進の勢いを逆利用され、ボアの巨体が空中に跳ね上がった。


(今だ!)


 俺は滑車を利用してターザンのように飛び上がった。

 空中で無防備になったボアの、唯一の弱点である首の関節の隙間。

 そこに、全体重を乗せてダガーを突き立てる。


 ズプゥゥゥッ!!


 無銘の短剣は、硬い筋肉も骨も無視してボアの延髄を完璧に切断した。

 ドスンと地面に落下し、ピクリとも動かなくなるボア。


「な……ば、馬鹿な!? アイアン・ボアが一撃で!?」


 ゲルドが腰を抜かし、ゴロツキたちと一目散に逃げ出し始めた。

 

「終わった……いてててて!!」


 俺はダガーを鞘に収めると同時に、その場に崩れ落ちた。


「ダ、ダイチ! お前、すげぇ! 一撃だ!」


「お頭の囮も完璧だったぜ!」


「ボクの魔法も役に立ったよね!?」


 三人組が駆け寄り、俺を囲んではしゃぎ回る。ガンテツ親方もミナさんも、涙ぐみながら俺たちを抱きしめた。


          ***


 その夜。

 片付けを終えた俺たちは、特製シチューを囲んでいた。


「くぅ〜っ! 五日ぶりのまともな飯だぜ!」


「お前ら食い過ぎだ! 俺の分も残しとけ!」


 三人組は鍋を空にする勢いでガツガツと食っている。


「ところで、お前ら」


 ガンテツ親方が尋ねた。


「今日は随分と遅くまで居座るじゃねぇか。宿には帰らなくていいのか?」


 三人の手がピタリと止まり、お互いの顔を見合わせた。


「実は……宿代が払えなくて叩き出されまして……」


「今日から野宿確定なんですぅ……」


 こいつら、マジのホームレスかよ!

 俺がツッコミを入れようとした瞬間、親方が頭を掻きむしって言った。


「二階の物置部屋が空いてる。今日からそこを使え」


「えっ!?」


「ただし! 明日から工房の修理と素材の運搬、ダイチの護衛をきっちりやってもらうぞ。日当は三食付きで銅貨一枚だ!」


「お、親方ぁぁぁっ!!」


「一生ついていきますぅぅ!」


 三人が号泣しながら土下座する。

 俺は、その騒がしい光景を見ながら、思わず吹き出してしまった。


「……ふっ、あははははっ!」


 笑った。心の底から笑った。

 泥臭くて、騒がしくて、アホばっかりだ。でも、最高に頼もしい。


「おいダイチ! 明日から俺たちが先輩だからな! しっかりしろよ!」


「誰が先輩だ。お前らは俺の駒だ。明日からビシバシ扱き使ってやるから覚悟しろ!」


「なんだとぉ!?」


 騒がしい夜が更けていく。

 俺の武器と頭脳、そしてこいつらの行動力。

 ポンコツパーティの、最強の反撃がここから始まる。

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