放送室占拠
放送室の扉が何度も叩かれる。けたたましい轟音が響くたびに皆家の鼓動は早まり、額に汗をかいた。
それでも伝えなくてはいけない。
マイクを掴み、一語一語魂を込めて喋る。
「俺は……もともと君たちが言う通り坊ちゃんだった」
動悸がする。そのせいで少し早口になる。
ゆっくりと深呼吸をして、呼吸を落ち着かせる。
「君たちのような複雑な家庭環境で育ったわけではない。ただ兄が道を踏み外しただけだ」
兄の顔が思い浮かぶ。にこりと笑った顔が、皆家は好きだった。
もう一度、兄に会えたらと思う。だがそれは叶わない。
「俺は、もう転落したんだ。兄のせいで。当時はそんな兄のことを恨んでいた。だが、今は違う」
扉を叩く音がやんだ。皆家は安堵してそのまま最後の言葉を紡ぐ。
「君、いや、俺はお前たちと対等になりたいんだ」
――ガチャン。
放送室の扉が開かれた。
そこに突っ立っていたのは、悟だった。
彼は鬼の形相で皆家の胸倉を掴む。
「てめえ。何が対等になりてぇだ。調子に乗ってんじゃねぇぞ」
「なあ。俺も少しここの生徒を舐めていたところもあった。今となっては反省している。だから――」
「だから何だ! お前みたいな中途半端にグレルやつが大嫌いなんだよ」
「……俺は中途半端じゃねえ。それを今から証明してやる」
皆家は煙草に火を点けた。そこから自身の親指の付け根に煙草の先端を押し付ける。痛みで歯噛みしながら必死に声を出した。
「これが俺の根性だ」
「……ちっ。もう勝手にしやがれ」
悟は広い背中を見せながら去っていった。
皆家は安堵の息をつく。すると膝が笑い立っていられなかった。
これで、何かが変わるのだろうか。
変わっては欲しいが……。




