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アウトロー・ザ・ビースト  作者: 彼方夢
第一章 LSD事件

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放送室占拠

 放送室の扉が何度も叩かれる。けたたましい轟音が響くたびに皆家の鼓動は早まり、額に汗をかいた。


 それでも伝えなくてはいけない。

 マイクを掴み、一語一語魂を込めて喋る。


「俺は……もともと君たちが言う通り坊ちゃんだった」


 動悸がする。そのせいで少し早口になる。


 ゆっくりと深呼吸をして、呼吸を落ち着かせる。


「君たちのような複雑な家庭環境で育ったわけではない。ただ兄が道を踏み外しただけだ」


 兄の顔が思い浮かぶ。にこりと笑った顔が、皆家は好きだった。


 もう一度、兄に会えたらと思う。だがそれは叶わない。


「俺は、もう転落したんだ。兄のせいで。当時はそんな兄のことを恨んでいた。だが、今は違う」


 扉を叩く音がやんだ。皆家は安堵してそのまま最後の言葉を紡ぐ。



「君、いや、俺はお前たちと対等になりたいんだ」

 


 ――ガチャン。


 放送室の扉が開かれた。

 そこに突っ立っていたのは、悟だった。

 彼は鬼の形相で皆家の胸倉を掴む。

 

「てめえ。何が対等になりてぇだ。調子に乗ってんじゃねぇぞ」


「なあ。俺も少しここの生徒を舐めていたところもあった。今となっては反省している。だから――」


「だから何だ! お前みたいな中途半端にグレルやつが大嫌いなんだよ」


「……俺は中途半端じゃねえ。それを今から証明してやる」


 皆家は煙草に火を点けた。そこから自身の親指の付け根に煙草の先端を押し付ける。痛みで歯噛みしながら必死に声を出した。


「これが俺の根性だ」


「……ちっ。もう勝手にしやがれ」


 悟は広い背中を見せながら去っていった。


 皆家は安堵の息をつく。すると膝が笑い立っていられなかった。



 これで、何かが変わるのだろうか。

 変わっては欲しいが……。





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