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アウトロー・ザ・ビースト  作者: 彼方夢
第一章 LSD事件

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5/21

Clips

 考えろ。考えろ。どうすれば派閥に深入りすること無く派閥から狙われなくなるのか。果たしてそのような方法があるのかどうか。やはり分からない。何かヒントは無いか?

 スマホで不良映画を視聴する。アウトローを映画から勉強しようとしたが、いや待てよ、とすぐに我に返る。これはあくまでフィクション。想像とリアルは違うのだから。マルボロをポケットから取り出す。それをじっと眺めながら嘆息を吐いてします。


「なぁ、お前clipsのボスって知ってる?」

「スヌープドッグだろ?」

 教室の片隅から聞こえた会話。

 スヌープドッグは知っている。有名なアメリカのラッパーだ。

「そうそう。俺、ラップ好きだからclipsに入団するのが夢なんだよ」

「お前馬鹿か? ラップって黒人のものだし、そもそもclipsの入団の儀式知ってんのか?」

「は?」

「いや、は? じゃなくてさ。どうやら儀式はリンチらしいけど、それ知ってたか。知っての発言かって聞いてんだよ」

「え、リンチってどういうこと」

「あくまでストリートラッパーだからな。見せかけのおままごとじゃねぇんだよ」

 リンチ、か。これは想像だが、愛情を知らない危険地帯で育った奴は、暴力で愛情表現するのが正しいと思っているのではないか。

 そんな皆家の推察。当たっているか外れているか。社会的な倫理観が伴っているかどうかはさておいて、同情の余地はある、と感じた。が、その感情を悟ったあとに自分は何様だよ、とも思う。同情なんて安易な言葉で片づけるな。その言葉を用いてしまった時点で自分はそういう生き方をしている人間たちを下に見ていることになる。何様のつもりなんだよ、という話だ。

 ストリートでしか生きれない。その世界しか知れない者たちのことを深く知らずに侮辱するのは違うだろうと思う。

 その瞬間。閃いた皆家は席から立ち上がる。

(そうか。そもそも自分とここの奴らは生きる世界は同じでも、階層が違ったんだ。だったら俺のことを深く知ってもらえばいい。そのうえで侮辱するなり殴られるなりされればいいんだ。そもそも認められないことは当然だった。そいつらに認められる努力をしてこなかったのだから)

 光と影。天と地。一般社会とストリート。線引きすることは勝手だ。だがその勝手な行動を、常識と位置付けるのは違う。

 それは、兄と自身の関係性からも思える。ヤクザになった兄と、上流階級だった皆家がその兄のせいで落ちぶれてしまった過去。

 そのことを伝えなくては。これは感情論でしかないが、言葉にしないと境遇の真意は伝わらない。言葉にした後で、判断してもらえばいいんだ。こいつは迫害するべきかどうか。

 殴られるのは、リンチされるのはその後でいい。

 この学校に転校してきた時点で腹をくくったはずだ。


 教室から飛び出た皆家は廊下をひたすらに駆けた。

 喘鳴を吐きだしながらある場所へと向かう。

 その部屋はヤンキーたちの巣窟になっていた。紫煙が昇っている。

「何だよ。ボンボン」

「……なぁ、この部屋少し貸してもらえねぇか?」

「駄目だね。お坊ちゃんの自習部屋じゃないんだよ」

 皆家は頭を下げた。

「頼む」

 すると煙草の吸殻を投げられる。

「帰れ。めんどいんだよ」

「……俺はもう、逃げたくねえ」

「は? こいつ何言ってんの? 笑えるんだけど」

「俺はマジでこの部屋を明け渡してほしいんだ。その後に嘲笑うなりリンチするなる勝手にしてくれ」

 ヤンキー達は大笑いして、最後に「約束だぞ」と言い残し部屋から去っていった。

 皆家はそれから校内放送のマイクのスイッチを点けた。


「えー、君たちに宣戦布告する。しっかり聞いてくれ」



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