戦争?
「戦争だろ?」
場の空気が固まった。
「お前、いま凄い顔しているぞ。まるで狂人だ」
狂人、とヤンキーに言われるのは癪だ。人生そのものを狂い始めているヤンキーに言われる筋合いは無いね。だがそんなお気持ち表明をすればこいつらから半殺しにされてしまう。ここは飼いなられた犬のように尻尾と舌を出すしかないのか。
「でも、お前の気持ち。熱いぜ。そこまでの奴だったなんてな」
「ほんと、すごい」
「……じゃあこいつの役目なんだっけ。あっ、参謀か。だったら抗争の作戦立案、頼むぜ」
そうなるよなぁ。
とはいえ皆家は喧嘩などしたことが無い。ストリートとは無縁のボンボンの家庭で育ったからだ。というか、一般階級でも喧嘩なんて時代遅れだという認識が過半数を占めるはずだ。
「決戦は来月だ。通告を頼んだ。昴」
「下の名前で呼ばないでよ。……まぁ、いつものようにやっておく」
「頼んだ」
こうして皆家の初集会は終わった。独特の緊張感や、熱を帯びた感情の発露だったりを感じたりして新鮮だったが、正直なところもうこりごりだった。
帰宅した。玄関は、いや家全体がいつも通り陰湿で、思わず気分まで落ち込み、影を差して来そうだ。
ナイキの靴を脱ぎそんな玄関に上がる。
母親がリビングで家事をしている。いや、家事をしているフリの間違いか。
「母さん。薬飲んだ?」
「……」
母親は無表情で兄の好きだったカレーライスを作っている。
……実は母は鬱病で、発症理由は兄がヤクザになったことが原因。
父親はそんな母の介護が嫌になり蒸発。
自由奔放だよな。本当に。父も兄も。
何が喧嘩だよ。調子に乗っていたことを我に返った瞬間に恥ずかしく思う皆家。




