仲間集め
クラスメイトの皆家への扱いが明確に変わった。
訝しんではいるものの、危害を加えようとは誰もしなかった。
よく吠える番犬を飼い慣らせばこうなるのもまた必然かな。
すると教室の扉が豪快に開かれた。
思っていたところに番犬こと悟が現れたのだ。
「おい、行くぞ」
「どこに?」
今は昼の十二時。昼食に肖りたいわけだが、邪魔されたので仕方がない。悟の元へとお握りを咀嚼しながら近づいた。
「てめえ。飯食いながら面見せやがって」
「お前が呼んだんだろ?」
苦虫を噛み潰したような顔をする悟。
「まぁいい。早く行くぞ」
廊下を歩きながら悟は語り出した。
「隣町の宙輝高校、知ってるか?」
「ああ。偏差値40程度の、ここと同じ底辺高校だろ?」
悟が怒りからなのかギラついた眼を向けてくる。全く、威勢だけはいいな。
「そこが市内の学生に売りつけているcbdに微量のLSDを混ぜてボロ儲けしているらしい」
「警察の麻薬捜査本部の見解は?」
悟は舌打ちをして睨みつけてくる。
「ポリには頼らねえ」
「じゃねえって。警察も絶対に情報を持っている。警察の記者クラブから公式に注意喚起があったはずだ。どうなんだ?」
皆家のその言葉に目を丸くさせた悟は、坊主頭をガシガシと掻いて、
「いや、すまん。分からねえ」
「……それで、俺を呼んだ理由は?」
「俺等の学生にもLSDの危害が見つかった。だから、抗争だ」
馬鹿馬鹿しい。こういう不良のノリが嫌いだ。中学生のときは憧れていたときもあったけど、それは小学生がテレビの奥のヒーローに羨望するようなもの。つまりは住む世界が違うというわけだ。
「俺に何が出来る?」
「参謀を任せたい。頼むぞ」
そうしたら体育館倉庫裏にいつの間にか着いていた。
そこにいたのは屈強な金髪男と、銀髪ギャル。そして、坂城だった。
皆家は坂城の存在を知って苦笑してしまう。
「お前には負けたよ」
「なんのことだか」
坂城は含み笑いを見せる。
「っていうかあ。ネイル行きたいんだけどお」
爪を触りながら怪訝な表情をしているギャル。
そいつをぴしゃりと睨みつけ、詰め寄る屈強な男。根っからの80年代的ヤンキー、みたいだ。
「少しは統率感を持て! 昴」
「下の名前で呼ばないでって言ってるでしょ! 豪!」
そんな感じにギャル――昴と屈強男――豪の言い争いを端から見ていたら坂城に声を掛けられた。
「こういう青春もいいだろ?」
「そうか?」
「いつか気付くときが来るよ」
しばらく時間が経って、悟が煙草を吸いながら言葉を発した。
「どう相手にお灸を据えるか、意見があるか?」
皆家は少しだけ考えるふりをしてから、言った。
「cbdのルートは?」
「多岐に渡る」
「だったら一本化してしまえばいい」
悟が皆家に対して唾を飛ばすほど怒鳴った。
「軽々しく言うな!」
「cbdを市場より安く売ればいい。そうやって事実上独占状態にさせるビジネスモデルもある。それで校内の生徒は守れるだろ?」
「凄く賢い。何でこんな学校にいるの?」
ギャルが微笑みながら言った。
「まあ、色々あったんだよ」
「奴らがでけえ面してんのが気に食わない」
「だったらそれこそ……」
皆家は長く息を吐いた。
「戦争だろ?」




