OD
机を蹴り飛ばした。
「誰がこんなわびしい金で納得できんだよ」
新興勢力「天照廻」は葉っぱを売ったお金でしのぎを上げているのだが、今回のケツ持ちしてくれている組に払う上納金の額が明らかに少ない。これじゃあ非常にまずい。
「どうすんだよ! あ!」
眼鏡の男がひとりひとり殴っていく。顔面血まみれになった構成員が喘鳴交じりに呟いた。「俺がけじめツケに行ってきます」と。
その言葉を聞いて満面の笑みを浮かべた眼鏡の男。
「それでいいんだよ。さっさと指詰めてこい」
男は組事務所へと走り去っていた。
「あの……轟さん」
眼鏡の男――轟 偲は物凄い剣幕で声を掛けてきた男を見た。
「なんだよ」
「悟のチームの話、どうします?」
「なんでこうむかっ腹立っているときにそんな話しなくちゃいけねぇんだよ」
「すみません……」
轟は座椅子に腰掛け、葉巻の吸い口をナイフで切って火を点け吸い込んだ。
芳醇な香りが雀荘に広がる。
「いつかあいつらは潰れる。とくにあの男……皆家だけはぜってぇ殺す」
「どうしてそこまで皆家のことを?」
「あいつのあの見下した目が気に食わねえ。今度会ったらあいつの目をくり抜いてやる」
「……そういえばあいつ。慶応幼稚舎からのエスカレーター式で高校まで順当に上り詰めた男でしたね」
そういう人生舐め腐った甘ちゃんが、この世で一番嫌いなんだよ。
何もかも手に入って。望んだ通りの人生で。将来も安泰で。
考えれば考えるほど腹が立ってくる。
轟がむせこんだ。少し動悸がする。
精神安定剤をオーバードーズし、ゆっくりと深呼吸する。
「先輩。また倒れますよ!」
「いいんだよ」
こんな身体にした糞みたいな両親を殺すまでは死ぬわけにはいかない。
ああ。人生には殺したい人間が多すぎる。




