ホットケーキじゃないよ
掲載日:2025/12/18
こんばんは……。
わたしは月。鏡だよ。君を映す。
だからこんなにピカピカなのさ。
わたしは月。
君が小さなころから知っている。
君はママが運転する車の後部座席からわたしをみては、怖がっていた。
「ついてこないで」と言ったね。
そしてある日言ったさ、パジャマ姿の君は。窓辺からわたしを指さして「ホットケーキ!」ってね。
わたしは月。
娘になった君が泣いた日を知っている。初恋に胸躍らせもしたね。しあわせな花嫁になった日も見つめていた。
わたしは月。
パートナーはいない。
君は目下恋煩い中。君をそんなに夢中にさせる彼が羨ましいな。
彼にお熱の君も羨ましいな。
わたしは月。
みんな夢想している、神聖を。
けれどわたしはただの月。
涙する時もある。
暫くは永遠の月。
君の息子ももうハタチ。
リボンをつけてアイスキャンデー持ってた君が、立派な母になった。
だのに君はわたしを見つけては、ごめんなさい と謝ってばかり。
わたしは月。
どうやらこれからも生き永らえる。
君達が去りゆくことが……さみしい。
時々黒い雲を纏うのは、泣き顔を隠すため。
わたしは月。言うなれば鏡。
君を映す。
だから誤解しないで。
美しいのさ、君。
ほんとうさ。




