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人間と魔族の連合パーティー。最重要任務は『魔王の封印』

作者: 小雨川蛙

 

「作戦を確認する」


 魔王城の一室。

 城主さえ知らない一年かけて造った隠し部屋の中、パーティーリーダーである女勇者が言った。


「まず、魔王の力は去年よりも強くなっている。あなた達はおろか私でさえ比較にならない」

「勇者なのにな」

「うるさい。バカ。いつまで経っても代替わりしない魔王に対して、こっちは何回も代替わりしてんのよ!」


 呆れ気味に呟いた魔族の青年に対して勇者は即座に反論する。


「だ・い・い・ち! あんただって仮にも魔王の一族でしょ!? なんで魔王と比べてそんなに力の差があんのよ!」

「魔王が突然変異なんだよ、ボケ。本来なら精々が俺くらいの実力なのに……」

「ならもっと修行でもしなさいよ!」

「まぁまぁ、喧嘩はしないで」


 青年と勇者の言い争いを穏やかな老魔道士がなだめる。

 その隣にはまだ年若いエルフの魔法使いと魔族の少年が控えている。

 二人とも今、この瞬間でさえ僅かな乱れもない老魔道士の魔力をつぶさに観察していた。


「先生は怖くないんですか?」


 エルフの魔法使いが老魔道士に問う。


「何がだい?」

「あの、魔王さまが……」


 おずおずとした様子で魔族の少年が問いかける。

 エルフもまた同じ問をしようとしたのだろう。

 同調するように無言で頷いている。


「怖くはないさ。むしろ楽しみかな」

「楽しみ?」

「私の技が今年はどこまで通用するかがね」


 老魔道士の言葉に少年とエルフが顔を見合わせ、その直後に頷き合う。

 自分たちが進もうとしている魔力の世界の奥深さを垣間見たように気分になったのだ。


「で、そろそろ作戦会議を再開してくれない? 私としてはもうとっとと皆に強化魔法をかけちゃいたいんだけど」


 退屈そうにサキュバスの治癒魔法使いが欠伸をする。

 その言葉に勇者は舌打ちをする。


「なんて緊張感のないパーティーだよ。魔王に挑むんだよ!?」

「毎年恒例のな」

「うるさい!」

「はいはい。そこまで。ほら、準備を始めましょう」


 ようやく作戦会議が再開する。

 今年こそはと皆が心に固く決意をして。



 ***



 所変わってこちらは魔王の部屋。

 数千年を生きる魔王は落ち着きなく辺りを警戒する。


 予想ではそろそろのはず……。


 なんて考えていると突如、目の前に老魔道士が現れる。


「お久しぶりです。師匠」

「あっ、あぁ……久しぶり。一人か?」

「んなわけないでしょう? では、まずは挨拶代わりに……」


 老魔道士から特大の魔法が放たれる。

 魔王は大慌てで相殺の魔法を唱えようとしたが、その直後にエルフ達に転送された勇者と魔族の青年が背後から現れた。

 二人の身体は魔力で極限まで強化されている。


「なっ!?」

「覚悟しろ! 魔王!」


 目の前には老魔道士の大魔法。

 背後には強化された勇者と魔族。


 この状況では防御ではなく全力の回避が最もリスクが少ないが、そんなことをすれば老魔道士の大魔法が二人に直撃してしまう。

 故に魔王は被害の大きくなりそうな老魔道士の魔法を真正面から防御し背中を捨てた。


「ぐっ!?」


 背後から勇者と魔族の全力の攻撃の衝撃が伝わってくる。


「いい加減!」

「休めって!」


 同時に二人の言葉が脳にまで響く。


「「言ってんだろ!!」」


 直後、魔王の全身から力が抜けていく。

 二人から放たれた全力の『封印』が作動したのだ。


「ま、まて……私は……まだしなければならないことが……」


 封印されながらも必死に声を出す魔王に勇者は告げた。


「黙れ。しばらく封印されてろ」


 同調するように魔族の青年も問う。


「あんた、前回の封印を解いてから今日までにどれくらいの時間寝た?」

「え、あっ……2時間くらい?」

「「一年で2時間!?」」


 エルフと魔族の少年が驚愕する声が聞こえる。

 やれやれと言った様子で首を振る老魔道士の姿が見える。

 サキュバスはもう男漁りに出たのでいない。


「どーせ、あんたのことだからすぐに出てきちゃうだろうけど、とりあえず封印されている間は大人しく休みな!」


 突きつけるような勇者の言葉を最後に魔王は封印された。



 ***



 所変わって魔王城の城下町。

 魔族と人間が仲良く入り混じり酒を飲む、酒場の中で勇者と魔族の青年が会話をしていた。


「今回の封印、どれくらいもっと思う?」

「さぁな。よくて一週間じゃない?」

「短い……」

「ほんとにな」


 魔王が世界を『統一』したのはもう数千年も前の話だ。

 平和的な魔王だった。

 人間と魔族を真の意味で結んだ偉大な王。

 おまけに最強。

 非の打ち所がない存在だ。

 ……唯一の弱点といえば。


「休まない主君ってのは本当に困るね」

「まぁな。おまけに倒れもしないんだから、こっちからすりゃハラハラしちまうよ」


 良くも悪くも自分以外との認識の差である。

 魔王はあまりにも強く、同時にあまりにも優しい。

 故に限界を超えて無茶をする。

 休めと言われても休まない。


 だからこそ、いつ頃からか勇者を始めとする魔王の友人や忠臣達は彼を無理矢理休ませるため『封印』をすることにしたのだ。


「あーあ、にしても今回は一年くらい封印されててくれないかなぁ」

「無理な話だと思うよ。マジで規格外だから」

「誰かさんと違ってね」

「うるせえ」


 勇者と魔族がのんびり語る平和な世界の中、偉大なる名君は今も必死に仕事に戻るため封印を解こうと躍起になっていた。

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― 新着の感想 ―
部下思いの魔王なら「魔王様が休むまで自分も休みません!」と自分を人質にして脅迫すれば休んでくれないかな? 魔王の連勤に付き合って倒れるまで頑張れば魔王だって休むでしょ。
封印解くのに躍起になってるって事は休めてないんですがw
 拝読に浮かべる現総理の政への真摯な向き合いに照らしても、物語世界の国政をよく考えれば実に皮肉な話ではあるものの、魔王を主とする事の妥当性を感じてしまいますね。
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