第96話 ユリユリと言えばやはり、硬派の女性走り屋でしょう? (13)
だから木下優さまは反抗期の後輩である安子さまへと。
「──安子~! お前な~?」
と言いかけたところで。
《ポキポキ》
と指の関節が鳴る音が聞こえるから、木下優さまや私も含めてみなさまが……。
『誰だ?』、『誰だ?』、『何者だ!』
と、正義の味方の悪役である悪の組織──。シ〇ッカーのように、挙動不審に辺りを見渡すと言うことはなく、直ぐに唸り声のように。
「優~、誰の亭主が紐ヤクザですって~?」
と、私達のレーシングチーム【堕天使】の副総長である松田彩さまがいつもの『うっ、ふふふ』な、穏やかなお姉さまではなく、自身の眉や目尻を吊り上げ──。般若面のような恐ろしい形相で不満を言いながらこちらへと歩み寄ってきました。
「あ、彩~! あんた~、うち等の話が聞こえたんねぇ~?」
だから木下優さまは驚愕しながら松田彩さまへと尋ねる。
「えぇ、聞こえましたが、それがどうかしましたか、優~?」
木下優さまの問いかけに対して松田彩さまはいつもの、のんびりとしたトロクて柔らかい、お姉さま口調ではなく。大変に重たく、低い声音で木下優さまへと尋ねると。
「家の正君は家にいることが多いいだけで、ちゃんと夜には組のために店回りの集金や酔っぱらいが暴れたら取り押さえる仕事もしているから、紐亭主ではなく、ちゃんとお仕事をしてくれているから」




