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第175話 悪意ある脅しと呼び出しに、可憐様は御怒り!(1)
「(ああ、もしもし、澤田さんの御宅ですか~?)」
「(はい、そうですが……。どちらさまでしょうか……?)」
「(あの~、安子さんは居ますか~?)」
「(えっ! あっ、はい、私ですがどちら様でしょうか……?)」
と言葉を返した安子さまですが。その後は、御自身の脳内で。
(一体誰?)、(誰だろうか?)、(初めて耳にする男の声だけれど……)、(一体誰……?)
と呟きつつ困惑をする彼女ですが。今の令和の時代とは違い世紀末……。激闘の昭和の時代の終焉が近づくあの頃は、まだスマートフォンなどなく、家庭の方も電話がかかってきた相手が解らない、黒電話が支流な時代でしたから。
安子さまの方も電話に出たくない相手でも自然と出で『もしもし』と電話の向こう側がどんな人物か解らなくても問いかけてしまう。
それに相手から『安子さまは居ますか?』と問われたら、自然に『私ですが』と、いくら不愛想な安子さまでも丁寧に、電話の向こう側の謎の人物へと困惑しながら言葉を返して、ついついと言わなくてもよい言葉……。
「(あの、私に何用ですか?)」
と、自然に尋ねてしまうから。




