49日
ゆっくり読んでみてくださいね
四十九日目の朝、陽菜は静かな気持ちで目を覚ました。
襖越しに差し込む冬の淡い光は、どこか優しく、まるで彼がそっと見守っているように感じられた。
夫の翔太が突然この世を去った日から、日常はどこか空洞を抱えたように感じられていた。
悲しみは静かに彼女の中に根を下ろし、しかし時間とともにその痛みはかすかな温かさを伴うようになっていた。
今日は彼の四十九日。
家族や親しい友人たちと一緒に彼を送る日だ。
陽菜は仏壇の前に座り、彼の写真に語りかけた。
「翔太、もう四十九日だよ。そっちではどうしてる?」
笑顔で写る翔太の顔が、まるで答えているようだった。
親族が集まり、読経が始まった。
僧侶の声が響く中、陽菜はふと、翔太と過ごした日々を思い返した。
出会いの春、二人で笑い合った夏、結婚式を挙げた秋、そして何度も迎えた冬。
どれも愛おしい記憶ばかりだった。
その日の夜、会が終わり、皆が帰った後、陽菜はふと翔太の部屋に足を運んだ。
翔太の机の引き出しを開けると、そこに一通の手紙が残されていた。
「陽菜へ」
震える手で封を開け、手紙を読み始めた。
---陽菜は手紙を読む手を一瞬止めた。
翔太の文字は見慣れたものだったが、もう二度と目にすることはないと思っていたその筆跡を目にした瞬間、胸がぎゅっと締め付けられるようだった。
深呼吸をして、彼女は再び文字を追い始めた。
陽菜へ
これを君が読んでいる頃、僕はきっと君のそばにはいないんだろうね。
でも、大丈夫。僕は君の中に、僕たちの思い出の中に、ずっといるよ。
陽菜、僕は君と過ごした時間が何よりも幸せだった。
君の笑顔、君の声、君の些細な仕草まで、全部が僕の宝物だ。ありがとう。
僕にとって君はいつだって特別だった。
でもね、ひとつだけお願いがあるんだ。
僕がいなくなっても、君にはちゃんと笑っていてほしい。
きっと寂しいし、辛いこともあると思う。
でも、僕は君が幸せに生きている姿をずっと見ていたい。
僕のことを忘れなくてもいい。
忘れる必要なんてない。
ただ、僕がいなくても君が前に進めるように、僕はここで君を応援している。
だから、どうか一歩ずつでいいから、進んでいってほしい。
最後にもう一度、君に伝えたい。
陽菜、君に出会えて、本当に幸せだった。
ありがとう、ありがとう。
そして、さようならじゃないよ。
僕たちはきっと、どこかでまた会えるよ
読んで頂きありがとうございました
またよかったら別のも読んでみてくださいね
よろしくお願いいたします❗️