怪しいおじさんから救う
7月1日改稿しました。黒幕の正体変わってます。
体力を回復した俺達は慎重にリンゲの町を目指す事にした。
特にエアカッターの改良版を編み出す為時間は限られてるけどやった。
「ゼッツリオンは死んだのかな」
「彼が死んだかは確認できなかった。でも私が素早く飛び上がったから彼らは私達の死体を発見できていない。まだしつこく探していたり、あるいは死んだと思って本部へ報告に行ったんじゃないかしら」
「いずれにしよ遠回りでも慎重に行こう。もちろん目立たない様に訓練もしながらね。でも俺はゼッツリオンに負けた事、絶対お返しをする程怒ったり気にしてない」
「そうなんですか?」
「そりゃ悔しいよ。でも俺には皆を理想郷に連れていく義務と大義がある。悔しさや怒りより目的を優先する事が出きて個人的感情は和らぐんだ。いや個人的感情は抑えなきゃいけない気持ちになる」
「さすが神様」
そして休み歩いてリンゲの町についた。
俺は言った。
「何か緊張する。神族だとばれないかな。あんまり人間社会に適応してないからさ」
ロミイは言った。
「宰相達が『神族らしき人を見つけたら報告しろ』なんてお触書を出してるかも知れません」
ティルは言った。
「警備兵がうろうろしてるどころか迫害行為真っ只中かも。外見から言えば兵以外の人に神と気づかれるかは多分大丈夫。私も着替えたわ」
「兵は間違いなく見つけたら襲いかかってくる。でもそれ以外の町の人はどうなのかな。俺たちが神だと知ったら迫害するんだろうか、やだな」
俺の家は現世でいう新聞もないしニュースだってない。
だからこの町に神族迫害があるか基本的に知らない。
あからさまな人種差別がある町もあると言う話は少し聞いた位で、知識も認識もその程度なんだ。
世情にうといと言うか。
でも神族迫害もやだけど人間同士の差別も本当やだね。
ロミイは言った。
「スカーズさんは人間は怖いんですか?」
「ばれると怖いとは思ってる。それはまだ根底の部分で人を信じきれてないからだと思う。本当は俺人間と仲良くし、皆が平和に分け隔てなく暮らせると良いと思うんだ」
「優しいんですね」
ロミイの笑顔と言葉にティルがやっかむような視線を向けた。
「昔に比べれば差別は大分なくなってると思う。でも人間の根底には違う人を排除する性質があるのよ」
そして俺達は町に入った。
「寄り道せず地図に書かれた神族の家に最短距離で行こう」
「こっちの方角です」
ところが一本筋に行かなかった。
「お嬢ちゃん、お菓子を買ってあげよう」
と怪しい男が五才位の女の子に声をかけている。
「あれって誘拐じゃ!」
「よし!」
俺は瞬時に飛び出して女の子の手を取り一目散に逃げた。
「あっ!」
と男は叫んだ。
それから俺は三百メートル位凄い速さで走った。
ひとしきり離れた場所で俺は言った。
「もう大丈夫、あやしいおじさんには気を付けるんだよ」
「と言うかお兄さんも誰?」
と女の子も若干戸惑い気味だ。
何か疑われてしまった。
そこへロミイとティルが来た。
「お兄さんは怪しい人から助けてくれたのよ」
とフォローしてくれたが不信感拭いきれず。
女の子は一応安心して去った。
ティルは言った。
「ただ決定的な証拠があるまで様子見ても良かったかも」
俺は弁明した。
「逃げるしか出来なかった」
ティルは言った。
「ただ、やっつけるにも証拠はないし」
しかしロミイは言った。
「スカーズさんは勇気があってかっこいいわね」
「俺が勇気?」
俺にとっては意外性のある言葉だった。
「はい勇気のお守り」
そう言ってお守りをくれた。
ロミイは何故か俺を勇気があると言ってくれた。
ティルは不機嫌に言った。
「ロミイ、媚びた態度を取らないで。でも随分人通りの多い場所で誘拐やるわね」
「そういえばそうだね。何か別の目的とか感じる」
俺達はさらに進んだ。
「見て」
小声で話したティルが指さす方向には神族探索をしていると思われるエクスド兵十名がいる。
俺達はさっと角に隠れた。
「もう包囲網が敷かれている。あいつらと会わない様にしよう」
「顔を隠せる服にした方が良いわ」
その間、兵達は町民を威圧する様に周囲に大声でがなり散らしている。
「私は迫害部隊騎士ベラリアスだ! 隠れて生活してる神族はおらんのか! まさか匿っている人間などおらんだろうな。見つけ次第殺してやる! この世から神族は消す一人残らずだ!」
神族ではない人間達は怯えた。
ベラリアスは近くの中年の男を怪しんだ。
「貴様はどうだ」
「し、知りません!」
「本当か」
「はい」
その様子を見て俺は言った。
「かなり迫害政策が進んでるみたいだな」
そこに兵達と全く裏腹に仕事をしてなさそうだがとても温厚で非戦闘的な中年の男が箱を持って道行く人に呼びかけている。
ボランティアみたいだ。
「差別迫害はいけません! どんな人種も分け隔てなく付き合う運動に募金を」
「立派な人だな」
と俺は言った。
ところがベラリアスはその男に近づいた。
「貴様ボランティアかなんかか? わざと当てつけの様に人権運動をやっているな。それともまさか貴様が神族?」
「めっそうもありません!」
「まずい」
男の危機を感じた俺は出ようかと思ったがティルが止めた。
「貴方は顔を見せちゃだめよ」
そう言ってティルはすたすたベラリアスの方へ行って文句をつけた。
「真面目に人権運動をしている人に絡むなんて裁量の低い軍人、いや男ね」
「何だお前は」
ティルは見下し、軽蔑と怒りを込めて言った。
「国に逆らっても道で一人呼びかけている人の立派さが分からないようね」
ベラリアスは軽蔑を込め反論する。
「こんなやつ無職みたいなもんだろ。立派には見えんが」
しかしティルはさらにバカにした。特に目付きで。
「ふん、かっこ悪」
「何だお前は?」
これがベラリアスを怒らせた。
ティルは迫ってきたベラリアスをギラリと睨んだ。
ベラリアスは凄みに気圧された。
「な、何だこいつ、くっ!」
怯んだベラリアスはそれを払拭するための様にティルを掴んだが一瞬の内に彼女に投げ飛ばされた。
「くそが!」
仲間が驚きながらも怒りティルに襲い掛かった。
俺はまずいと思った。
「俺も行く!」
「駄目よスカーズさんは顔が割れるから」
俺は止められ出られなかった。
その間ティルは一人を素早く腰を落とした重い重いボディブロー一発でいともあっさり気絶させた。
吐きそうになりながら力なく倒れた兵。
一方、もう一人の兵は突如眠った。
「催眠をかけてやりました」
ロミイがにっこりする。
「頑張って下さいね」
ティルは笑顔で運動の男を励ました。
男は怖がりながら少し照れた。
そしてまた歩いて行くとまたさっきと別の怪しい男が男の子に話しかけている。
「そこの光る坊や」
「誘拐だな!」
俺は男に文句を言った。
ところが男の子は言った。
「ちがうよ、このおじさん僕が落としたお金を一緒に探して拾ってくれたんだ」
「え?」
「す、すみません。後その子が光を発して驚いたんです」
男は全く気にせずにこにこした。
で、俺達はそこを去り探索は兵を警戒しながら進んだ。
そして俺達はある一軒家に着いた。
「ここです。神族のいる家」
「何て言って入ろうか」
呼び鈴を鳴らすと三十代の女性が出てきた。
少し何かを恐れていて警戒心が強そうな人だ。
普段から素性がばれるのを恐れているのだろうか。
ロミイが信頼を得られるよう真摯な態度で聞いた。
「エレカーンさんでしょうか。それとご主人はマット様」
「何故それを?」
「信じてもらえないかも知れませんが私達神族の人達をたずねてるんです」
「! 軍の人ですか!」
俺はそう言われ説明しなきゃと少し必死になった。
こんなに警戒してるとは何かあったか話を聞いたんだろうか。
「違います! 俺達も神族なんです!」
しかしエレカーンさんはさらに取り乱す。
「そんなの外見からは分かりません!」
「本当です。スカーズさんは両親を軍に殺されたんです」
「え?」
これで少しエレカーンさんが静かになった。
「お話だけでも聞いてください」
俺達は家に上げてもらえた。
中には主人らしき男がいた。
やっぱりちょっと警戒してる。
誠実そうだけどやっぱり猜疑の目で接してきた。
「スカーズさんですか」
「はい」
「私は女神のティルです」
「何と」
ティルの自己紹介もマットさんを驚かせた。
でも俺は落ち着いて疑われないようにいきさつを丁寧に説明した。
「実はこういう事がありまして」
マットさんの目からこれまでのいきさつを聞いた事で少し疑いが消えた。
「ではその理想郷とやらにいっしょに行こうとお母様がおっしゃった訳ですね」
ロミイは答えた。
「はいお妃様が」
「何と! スルーナ様ですか!」
母さんの名が大きかった大分信用してくれたみたいだ。
俺はマットさんに次の話題に移す様に聞いた。
「どうやって生活してるんですか」
「初めは天界の宝を売っていました。私は農業のノウハウがなく、狩りで捕まえた物を売りに出します。妻は香料造りの仕事をしています」
俺はさらに聞いた。
「馴染めてる感じですか?」
「そうですね。割とこの町は良い人が多かった。私も人間と仲良くしたい」
「困ったことは?」
「うーん、実は息子がですね」
「え?」
「六歳の息子には神族なので特殊能力があり予言が出来るのです」
「予言?」
「ええ。地震が起きるとか雨が降るとかぴたりと言い当てるのです。町の人も怖いと言ったり神の子ではないかと言ったり、これからどうするか。そして光を発するのです」
「光ですか?」
「そう言えばさっきの誘拐犯光がどうとか言ってたような」
「そうですか。やはり僕達に付いてきてもらった方が」
「そういえばおつかいに行った息子が帰ってこない」
え?
俺は不安を感じた。
「ひょっとしてさっきの男の子? 道なりだし」
「ジム、探しに行ってくれんか」
マットさんは召使らしきジムと言う人に命じた。
「わかりました」
確信に近い直感だった。
「探しに行きましょう。光を発するんですね」
と言って外に出ると何とさっきの女の子の方の誘拐の怪しい男と何故かエクスド軍の兵士達八人がいた。
「あいつと兵士が何で一緒に」
兵士が言った。
「俺らは下っ端のチンピラに誘拐とかの仕事をさせてんのよ」
ロミイが言った。
「軍の癖に何て腐った!」
「ところで、どんな奴かと思っていたがまさか今捜索中のガキとはな。ゼッツリオン様と戦って生きているとは意外だったが」
「くっ!」
俺はすかさずエアショットを発射しようとした。
ところがこれは一人に軽くかわされた上に他の兵が一斉に距離を詰めて襲い掛かって来た。
「くそ、二発目を」
と構えた最中に一人にいきなりパンチを食った。
さらに俺がパンチをこらえた間に体勢が立て直せず、もう一人にまたパンチを食った。
さらに横からもう一人がキックを食らわせた。
俺は倒れた。
そして八人の内五人がなだれ込み俺を袋叩きにした。
「くそ、俺は大勢の相手を一遍に相手する技を持ってないからこういう状況不利なんだ」
何とか俺はダウン状態からエアショットを一人に至近距離で当てたがその隙に別の奴に蹴られた。
「こいつは大勢を相手にする技を持ってないぞ」
俺はしばらく一方的に殴られ蹴られていた。
しかしティルは何とか自分の相手一人二人をやっつけ乱入し俺に加勢してくれた。
さらにロミイは叫んだ。
「ゼッツリオンを倒した爆弾を食らわせるわよ!」
「何! ゼッツリオン様を⁉」
ティルは詠唱し力を溜め叫んだ。
「ワイド・フラッシュ・アロー!」
ティルは覚えたばかりの技を食らわせ俺を痛め付けたそのうち三人をやっつけた。
さらにもう一つの新技を出し兵の一人を貫いた。
「ミリインパクトエッジ!」
一人は怯え逃げた。
ティルは駆け寄った。
「大丈夫?」
「俺が大勢の相手を一遍に相手できない事を露呈しちゃった。駄目だ新しい技考えないと。でもトーポ君の捜索もあるし」
父親は言った。
「その怪我では無理です。一旦引き返しましょう」
「よし、新しい技特訓だ。女の子に声をかけたやつはやっぱ悪者だったか、でももう一人のおじさんには失礼な事をしたな」