再起の特訓 スキル、神術説明
2025年6月7日改稿しました。
ゼッツリオンに敗北した俺達は一から特訓する事になった。
「ティル、頼む。容赦なく」
「まずは筋力トレーニングよ」
腕立て伏せからみっちりきつい練習は始まった。
十、二十、三十、四十。
ひとまず基礎体力作りが終わった。
「で、まずこないだは剣の特訓したけど、今度は神術中心にしましょう。貴方は遠距離攻撃の方が強いから、それがキーになるわ。まず、木に印付けるからエアカッターで狙ってみて」
「狙い撃ち練習だね」
「効果を数倍にする為空と大地のエネルギーを吸い込んで」
俺が深呼吸すると体にエネルギーが満ちてきた。
「小さい印だねえ」
「コントロールを測る為よ。二十メートルくらい離れて」
「ここだと見え方が微妙だな」
「貴方の視力とかの関係も測るの」
「良し」
俺はじっくり集中して狙い、エアカッターを木に向けて発した。
だが、命中した弾は印から少しずれた。
気を取り直した二発目も同様に少しずれた。
ニセンチ位。
「うーん、すごく正確じゃないわね。まずはこの位の距離から完璧に当てられるように」
そこから完璧に当てる練習を何発も繰り返した。
次こそ真ん中にと。何度でも不器用だけどやろう。
ティルは言った。
「次は私を狙って」
「え?」
これは戸惑った。
しかしティルは毅然と言う。
「大丈夫よ。変な甘さは見せないで」
「良し」
「はっ!」
俺はティルのわき腹辺りを狙って撃ったがうまくかわされた。
ティルは聞いた。
「連続で行ける?」
「二十秒位空けないと駄目」
「連射出来る様になると良いわね。後何でわき腹を狙ったの?」
「え?」
「まさか、女の顔に傷を付けたくないとか?」
「あ、ああ、無意識に」
ティルはため息をついた。
「甘さは捨てなきゃだめよ。後、敵と戦う時どこを狙う?」
「顔かな」
「ウーとの戦いの時こんなの効くかって言われたわよね。あれは威力と撃つ場所両方が悪いの。切断技ならもっと大きくして一撃で相手の首を飛ばす様に狙うの」
「え?」
「怯えちゃだめよ。あと組み立てとコントロールも大事ね。どんな状況で順番で技を使っていくか」
「野球の投球術みたいだね」
「ヤキュウってなに? 本当はこないだ私がウーを倒す事は出来たけどあえて貴方にやってもらったの」
「甘さを捨てる為とか?」
「後貴方は迷ってた。当たらないでくれとか思ってた?」
「うん」
「それも少しずつ克服しよう。良い所なんだけどね優しいとこが」
良い所なんだけどねだけ小声だった。
「さっ、特訓開始」
「君って会話に無駄な部分入れないね」
「今度はエアカッターを私の手足に撃って。最後は首と顔に」
「えいえい!」
ひとしきり特訓は続いた。
少し遠慮せずティルの顔を狙えるようになった。
「次は再度エアショット。岩に向けて撃つ練習の後は私を狙う練習。スピードをまず上げて次に威力。速度アップに神力を注いで」
「はっはっ!」
言われた様にスピード、正確さ、威力を意識して上げて行く。
微妙な違いはティルならわかるだろう。
「はっはっ」
「もう少しスピードを上げて」
激を受け手にさらに神力をこめる。
ひとしきりこつこつ特訓は続く。
つかれた。
「さらに次。体に石をつけて重りにして、そのまま川に潜って水中で電気を呼ぶ特訓よ」
俺は四十キロはある石をつけたまま川に飛び込んだ。
ちょっと怖い。
水がどわっと散る。
で、縄はティルが持っている。
泳ぐんじゃなく、もぐったままで耐える。
「もがきながら電気を起こす訓練よ。さらに水中の僅かな空気を操るの」
「が、がう!」
窒息しそうになった。
いや本当に。
わずかに息継ぎしてまた戻る。
これを繰り返し十五分、二十分。
何とか終わった。
「溺れそうだった」
「さらにスクワットと短距離ダッシュ。下半身と瞬発力をきたえ風に乗るようにスライド移動を覚えるのよ。名付けてエアスライド」
「エアスライド、地面をすべる感じだね」
「さらにスキル『追い風』で速度を上げるのよ」
短距離ダッシュの進化スライド移動。
ちょっと限界っぽい。
これがひとしきり続き休みティルは言った。
「さらに狩りをやるわ」
「狩り?」
森に入ると案の定熊がいた。
「この前は止めたけど今度はやっつけてみて」
「こないだは失敗した。もしかして俺に自信を付けさせる為に?」
俺はまずエアショットを撃ちひるんで突っ込んできた所を地熱パンチで狙った。
爪に気を付けて……うお!
パンチがヒットして勝てなかった熊を倒した。
「やったわ! あはは!」
ティルは見た事もない笑顔で笑った。
「クールな君が満面の笑みで」
「あっ……」
「最終段階、あのウサギを狙って」
「え⁉」
「どうしたの?」
「出来ないよ。あのウサギ前俺が助けたウサギかも知れないし」
「……優しいのね。じゃあ特訓今日はこれで終わり」
ティルは初めて優しい顔で微笑んだ。
何故か怒らなかった。
次の日。
「ゼッツリオンに勝つには生半可な特訓じゃ駄目だ。そのうえ時間がない。ならばキーになるのは俺の神としての力なんだ。感情が極点に高ぶった時だけ稲妻を呼べる。それを任意に出来るようにするんだ。それと父さんと続けていた地震を起こす特訓」
「任意にですか!」
ティルは言った。
「そこまで考えていたの。私の及ぶ部分じゃないわ。何せ天候コントロールだもんね。自然の掟で言えば雨も雪も雷も全部説明できる理屈なんだけどね」
「うん、理屈だけじゃなく本物の神の怒りの稲妻を天から呼ぶんだ」
「理論が通じる世界じゃないわね」
「人間がこれを言ったら頭がおかしいと言われるけど神だからこそ、神としての力、それを皆の為に有効に使うんだ。じゃあ特訓はじめ」
「はあああ!」
俺は全身に力を込めた。ありったけ。
体がぎしぎし音を立てる。
しかし待てども暗雲は来ない。
甘かった。
「よし、怒りを込めよう。父さんと母さんが殺された時の事を思い出すんだ。うおお!」
続けてみたが稲妻は落ちない。
「何でかな」
「怒る理由と言うか、外からの刺激要因が必要って事じゃないかしら」
ロミイは言った。
「と言う事は怒る理由がまたあれば稲妻を呼べる?」
俺は言った。
「でもそうだとすると怒りの理由となる悲劇が必要となってしまうんだ」
「あっそうですね」
「それにまぐれじゃ駄目だ。使いこなせないと」
ティルは言う。
「ごめんね力になれなくて。最高レベルの神は稲妻を呼び落とすけど、あれは自分で作るのかしらそれともさらに上の神に祈るのかしら」
「あっそうか。俺が落としたんじゃなく、もっと強い力を持つ天界の神が行使したのか」
「メカニズムはよく分からないけど」
「じゃあ、今度は祈ってみよう」
今度は敬虔な祈りを込めた。
一分、二分、三分。
「駄目だ」
「仕方ないわ。貴方は地上で誰一人やった事のない事をしようとしてるんだから」
ロミイは言った。
「でも出来ない事に挑戦するなんて素敵」
ティルは怒った。
「あからさまに褒めないで。見せつける様に」
「見せつけてなんかいないわ! 何怒ってんの」
「誰でも男に露骨に『素敵♡』なんて言う女を見たら不快に感じるわ。分からない?」
「私は何も間違ったことしてないわ!」
「褒めるのにもう少し抑えた奥ゆかしい感じにしなさい」
「な、何でもめてるんだ? 意味が分からない」
「あー気にしないで特訓中止しないで」
そこへ下を向いた八才ほどの子供がとぼとぼ来た。
「どうかしたの?」
「あのね、僕稲妻が呼べるって学校で嘘ついちゃったの。嘘だと分かったら嫌われるよ」
「よし! お兄ちゃんが稲妻を起こしてあげるよ」
「本当!」
「明日学校に隠れて付いてくよ」
ティルは言った。
「ちょっと! そんな約束して!」
「こうなったらやるしかない」
その夜俺は祈りと怒りを繰り返した。
でも雨雲は出ない。
ああ、俺はあの子の願いを叶えてやりたいだけなのに。
出てくれ。
出ない。
そして当日が来た。
そしてどうしていいかわからないまま子供の登校時後ろからついて行くと友達が来た。
「見せてくれよ」
「あのその!」
すると突如黒雲が現れ雨が降り稲妻が遠くに落ちた。
「えーすげえ!」
「偶然出てよかった。偶然てあるんだね」
ロミイは言った。
「いいえスカーズさんが起こしたんですよ。怒りじゃなくあの子を思う気持ちが」
「褒められた」
「ロミイ! あけすけに褒めないで!」
「ティル! ここで何してんの!」
「スカーズに負けない為新技の特訓よ。お披露目するわ」
「見て、光の弓矢よ」
ティルは光で弓矢を作り岩に向け放った。
岩に傷がついた。
「凄い威力だ」
「後、威力を下げる代わりに広範囲を攻撃出来る様にも出来るわ。それにもう一つ」
ティルは剣を持たず素手で岩を殴ろうとした。
「えっ!」
しかし、ティルの拳は当たった様で当たっておらず穴が空いた。
「え?」
「拳を当てると見せかけぎりぎりまで近づき、拳から見えない速さで光の刃を出して貫く。『ミリインパクトエッジ』」
「すごいな、もう出来たんだ。さすが天才だね」
「わ、私はあまり天才と言われるの好きじゃないわ。ただコーチなのにこないだは貴方に助けてもらってばかりだった。面目躍如と罪滅ぼしよ」
「俺も頑張る」
ロミイが怒った。
「私だってやるわ!」
何で怒るのか…………
ただ、今回は俺は子供の夢の為やったけど、戦闘用に使える様にしなきゃ駄目だ。
ランダムやまぐれじゃなく確実に。
ティルが言った様に「誰もやった事がない事」だから難しくて誰も教えてくれないんだ。
でも必ず身に付ける。
ゼッツリオンを倒す。いやそれだけじゃなくて。
その夜も特訓を続けた。
ロミイが心配そうに見ていた。
「地面に手をつけて何やってるんですか?」
「人為的に地震を起こす特訓」
「今度は地震ですか!」
「父さんから敵と戦う時に備えて少しずつ練習してたんだ。まだ成功した事ないけどね」
「スカーズ、地盤沈下を起こして敵を一気に地面に埋めてしまうんだ。これが出来ればかなり戦える」
回想の最中少し地面がぐらっと来た。
でもこれは偶然だと思う。
「あきらめないぞ! 地震と地盤沈下を身に付けるんだ」
「スキル研究の結果が出たわ」
「え?」
ティルはレポートを持って来た。
「貴方が何故稲妻を落としたり出来るかよ。これまでのデータを天界の上司と先輩に送って分析してもらったわ」
「は、早いね」
「元々研究は進んでたんだけどね。でその結果だけど、貴方にはつまり『上級神術限定使用スキル』があるのよ!」
「『上級神術限定使用スキル』?」
「そう、つまり貴方がこれまで雷や地震が呼べたのは近い未来のレベルで覚える高威力の『上級神術』をまだそのレベルに達してなくても特定条件下で使える様になってるのよ。これは混血神にしかないスキルよ。例えばレベル三十五で覚える落雷をレベル八で一回だけ使えるとかね。嵐、突風、地震とか」
「そうだったんだ! 生まれつきそんなスキルがあったんだ」
「でその条件だけど『肉体、メンタルのいずれかが限界に近い状態になった際百パーセントではないけど使えるようになる』、でそれ以外の発動条件としては『通常の数倍の神力を込める、寿命を縮める、無心の祈りの力が頂点に達する』『エネルギーを長時間溜め込む』、等よ」
「寿命を縮める、何か怖いね。あと『無心の祈りの力』って?」
「この前稲妻を落とせたのはあの子供の為に無心に祈ったからよ。自分の利益とかじゃなくて」
「じゃあ俺は大ピンチになると強大な力が出るって事?」
「でもそこにポイントがあるの。このスキルは『俺には強力なスキルがあるから逆転できるだろう』と言うような油断や甘く見る気持ちがあるとそれが邪心となって邪魔をしてスキルが発動しなくなるの」
「なるほど」
「だから基本は奇跡を当てにせず戦わなければいけないしそれだけの力を身につけなければいけないわ。でも矛盾するようだけどまだ弱い貴方が強敵や大群と戦うにはこの力がキーになるわ」
「そうか、当てにせず、だけどって感じだね」
「貴方の今の力、それに旅しながらの限られた時間の修行じゃ限界があるわ。だからこのスキルが鍵になる」
「怒りが限界を超えたり、体力も死にかけたりした時とかか。使いこなすのは難しそうだね」
「そうね。神だけど神頼みみたいな。それと貴方がこのスキルに対し無意識になればなるほど発動確率は上がるわ」
レベルごとの発動条件(上がる毎に発動条件は増える)
レベル五 メンタルが限界に達した時 体力一パーセント 十パーセント。
レベル七 上記及び神力ゼロ
レベル十二 体力が三パーセントに追い込まれた時 四十パーセント。
レベル十八 無心状態+体力十パーセントを切る
レベル二十二 無心で祈りを一定にorメンタル大変動。
レベル三十五 五分エネルギーをためる。
レベル四十 十分貯めることでしばらく使い放題。
「メンタルだったり神ちからだった李発動条件がその時によってランダムに決まるみたいなの。
「ランダム?」
「それで自分では選べずルーレットみたいに発動条件が選択されるわ。どれかは自分ではわからない」
「実質自分の意思で出きるのはレベル三十五からか。四十でちから溜めると無敵状態みたいになるんだ」
溜めて発射する上級スキル
・大型風の刃
・突風
無心の祈りか感情爆発で出来る物
・稲妻
・地震
・嵐
・地熱火柱
・風の精をあやつり飛ばす
・全身硬質化
・疾風の動き
・木、石、草の精操り。
・エアバリア
等等。
「究極的には意思で上級神術を操ること」
「前に夢で見た大軍をふっとぱす感じ。風の精操りは母さんにならった」
「全身硬質化は大地の力よ。後願いだけでなく『引き換え、代償』も有効よ。パワーがおちるかわりスピードあげてほしいとか生命力を削った技とか時間制限とか。自分の何かを引き算か犠牲にはすると成功しやすいらしいわ。後エアショットの威力を上げたければ体力、魔力、メンタルを削るの。またはエアショットに空の精のスピードと大地の精の重さをプラスするとか。そして段々レベルと共に段々巨大な規模の嵐、地震等が呼べるようになるわ天界では常に未知の心術解析研究が行われてるの」
で試すため魔物狩りに行った。
するとゴリラと熊、コブラがいた。
「よし」
俺は危険を承知で突撃した。
すると三匹は無防備な俺に容赦ない攻撃を浴びせた。
ゴリラのパンチ。
熊の爪。
コブラの牙と毒。
あっという間に俺は追い詰められた。
死の寸前に。
わざと追い込んだ。
すると、賭けではあったがねらいどおり本当に雷が落ちた。
三匹の獣は一瞬の内に焼けこげた。
危険な賭けだった。
ティルは言った。
「もしかして『奇跡力』がキーなのかも」
「『奇跡力』?」
「人間にはない奇跡を行う力で体力、魔力、神力と同様のパラメータの一つ。これはレベルに関係なく一から百まで。例えば最大の技雷を呼ぶのは奇跡力が最高にならないと出来ない、自己意思ではコントロールできずコンディションみたいな物」
「なる程、例えば体力一で奇跡力が百なら雷を呼べるんだね」
「体力と奇跡力は連動反比例してるんだと思う」
「奇跡力は意思じゃ変えられないから運任せか、まてよ? 例えば比率が五十:五十だったら、つまり体力半分奇跡半分の状況なら雷ほどじゃない中くらいの威力の技を半分自分の意思で呼べるとか。一か百かじゃなく五十五十。自分の力と奇跡半々、でないとまぐれでしか勝てない人になっちゃう。つまりエアショットみたいに奇跡力ゼロでも使える基本技、奇跡力百で使える雷落とし、で五十で小型竜巻が使える、みたいに俺が腕を上げることと奇跡にたよること、その半々、みたいに体力やレベルと奇跡力の関係を考えて新しい技の習得や使用をしていけばいいんだ」