スキルの弱点
2025年6月2日改稿しました。
シダンサールは稲妻を受け跡形もなく燃えた。
「殺しちゃった……ここまでやったの初めてかも」
稲妻が落ちた跡とそこから出る煙を見てカーリアンはおののいた。
「な、何と言う威力だ、あんなガキがあんな力を、早く殺さねば」
カーリアンは少し恐れながら歩を進める。
それを部下は止めた。
「いけません! そいつをあまり追い込むと凄い力が」
「分かっておるわ!」
カーリアンは俺を攻撃しようとしてるが警戒してる。
俺は構えた。
「カーリアン! よし、もう一発食らわしてやる」
「ぬっ!」
カーリアンは身構えた。
ところが俺の構えや祈りにも関わらず何も起きず虚しく静寂が流れた。
俺は手からも天からも何も出ないから慌てた。
「で、出ない」
と言うか、一旦発動したら連続で出せると思っていたんだ。
「もしかして、貴様はその大技を自分の意思で使えんのか?」
「う」
「まぐれか運でしか出せんのかな?」
まずい。ばれた。
というより俺が法則を理解してないんだ。
体力かメンタルが限界を超えれば出ると思ってた。
違うみたいだ。
俺はさらに念じたが出ない。
「うおお!」
気持ちを込めたが出ない。
カーリアンは隙をついて切りかかった。
「ぐわ」
俺は肩の肉を切られた。
そして倒れた。
その時、俺の腕に電気が集まって来た。
すかさず俺はそれを発射した。
ところがほんの細い雷しか出ない。
とても相手を倒せる程じゃない。
「はっはっは! もう力がないようだな」
でも俺は望みを捨てなかった。
「俺は駄目でも最後まで信じて祈って見せる!」
そう思うと母さんが殺された場面が突如フラッシュバックした。
「ぐああ!」
すごい頭痛で祈りも集中も出来ない。
「はっ!」
今度は左腕の肉を切られた。
「どうも本当に駄目なようだな。次で終わらせる!」
その時、突如頭に声が響いた。
「スカーズさん!」
「ラセル君か!」
「僕達は着地して生きてるよ! 今から僕が神のパワーを送るよ。そうしたらさっきと同じ様に念じて」
「死ね!」
カーリアンが剣をふりあげた瞬間俺の脳の余計な物が消え祈りのパワーが満ちた。
「行けえ!」
すると先程と同じ稲妻がカーリアンと部下に落ちた。
「ぐあああ!」
俺は力を無くし倒れた。
しかし何とカーリアンは稲妻を下から支えている。
「ぐ、ぐぐ」
「何て化け物だ」
「お願い、押し切って!」
「これが効かなかったらもう終わりよ」
遂に稲妻はカーリアンが支えきれなくなった。
そして無防備状態に直撃した。
「う、うう」
カーリアンはぼろぼろで立ち上がった。
「お、おのれ、この借りは返してやる」
「カーリアン様!」
カーリアンは馬に乗って来た援軍が連れて帰った。
「スカーズ!」
ロミイとティルは俺に駆け寄った。
「薬と回復魔法を」
敵もいなくなり少し落ち着いた。
「勝ったけど、まぐれだよ。俺は自分で大技をコントロールできないってわかった。カーリアン達にも知られた。それともう一つ、祈ろうとしても親が殺されたシーンが思い起こされると祈れなくなるんだ。それも克服しないとね」
「そのスキルはどうやったら解読分析できるのかしら」
「ただ、最初から当てにするのは駄目みたい。でも克服しないと」
しかしロミイは言った。
「克服しなくていいわ。優しいからこそお母様の事忘れられないのよ。その方がスカーズさんらしい」
「そうか、ありがと」
俺は母さんのペンダントを握りしめた。




