視点変更 森の中の迷子 黒幕は誰か
7月1日改稿しました。黒幕の正体変わってます。
ここで神族の少年に視点を移します。
スカーズ達の特訓の翌日。
捜索は続いていた。
一方、少年は近くの森で迷っていた。
「わからないよう」
この少年こそスカーズ達が今探している、神族の夫婦の息子である。
一人で好奇心で森に遊びに行ったがどうやら迷ってしまった。
「どうしよう。暗くなったら狼とか出るかも。パパ、ママ」
不安だらけの心境で何の目印も当てもなく少年は恐る恐る森をさまよった。
「怖いよう」
そこへ六歳の少年より少し年上のクールで根暗そうでひよわで人間嫌いそうな少年が鉢合わせた。
「ん?」
少年は年上の少年に藁をもすがる思いで恐る恐る聞いた。
「お兄ちゃん、道知らない?」
「……迷ったの?」
年上の少年はそっけない
年上の少年は人間嫌いそうに下を向きながら話した
「出かける時は地図で調べたり道を覚えながら行かなきゃ駄目だぜ」
年上の少年は淡々としている様で少しおどおどしている印象も受ける。
神族の少年は光が見えた様に言った。
希望が見えた。
「お兄ちゃんは森の道が分かるの?」
一方年上の少年は相変わらずそっけない。
「全部じゃないけど」
しかし神族の少年は嬉しかった。
「教えて! 僕を連れて行って! 一人じゃ出られなくて怖いよ!」
「……勝手についてきな」
「ありがとう」
少年はまるで森の構造が頭に入ってるかのように無駄ない道筋を歩いて行った。
神族の少年は感心し心を開いた。
「お兄ちゃんすごいね」
「まあ、地形には少しだけ詳しいよ。地図を書く夢があって。おしゃべりはこれ位にしとくわ。しゃべるの嫌いだし」
「僕、トーボ。お兄ちゃんは?」
「一応言っとく、ケビン」
ケビンはすいすい森を抜けていく。
「ケビンお兄ちゃんありがとう。僕一人だったら何も出来なかったよ」
「俺だって道が完全に頭に入ってるわけじゃない油断は出来ない」
「ん?」
「どうした」
「悪い人が来る!」
現れたのはお金を拾ってくれたあの優しげな男だった。
「あれ? さっきお金を拾ってくれたおじさん? どうしてここに?」
男は言った。
「もうじき悪い人が来る! おじさんと一緒に逃げるんだ」
さすがにトーボは意味が分からなかった。
「は? 何言ってんのおじさん?」
しかしおじさんはさらに大きな声で必死に訴える。
「トーボ君! 来ないと駄目なんだ!」
「でも、知らないおじさんについてっちゃダメって言われてて」
そこへ声が聞こえた。
「おーい! トーボお坊ちゃん!」
「ジム!」
後ろから名前を呼びながら走って来たのは捜索を命ぜられていた召使のジムだった。
ジムは喜んだ。
「坊ちゃん! 見つかって良かった! さあ帰ろう」
トーボは安心したのだが
「あれ? 何か違和感を感じる」
ところがおじさんは言った。
「このジムと言う召使を信じては駄目だ。おじさんと一緒に来るんだ」
「え?」
さすがに意味が分からずトーボは戸惑った。
勿論ジムはおじさんを睨んで言った。
言いがかりだと言わんばかりに。
訳のわからない犯罪者扱いされた事に。
「は? 何言ってんだ怪しい男だな。貴様が坊ちゃんを誘拐しようとしてたんだな? 目的は金か?」
男は必死でトーボにもジムにも釈明した。
「違うんだ! わけあって正体は言えんが儂を信じてくれ!」
ジムは睨んだ。
「どこの世界に身内より知らない怪しい男を信じる人間がいるんだ! 行こうお坊ちゃん!」
ところがケビンはジムの匂いをかいだ。
「何だ君は」
「お兄さん、血の匂いがする」
「何?」
ケビンは言った。
「こいつ何か怪しい。むしろあっちのおじさんの方が信用できる。勘だけど」
ジムは怪訝な顔をした。
「何を言ってるんだ。さあ坊ちゃん」
「うん」
「うおおお!」
何と怪しいと言われたおじさんがジムに体当たりをした。
「何をするんだ、うっ!」
何とジムの顔の皮がはがれた。
「変装用覆面が」
「何だって?」
そして軍の兵士達が現れた。
ジムはまるで変身するように人の好さそうな姿から鎧の騎士の姿に変わって見せた。
「え?」
ジムの本当の姿は三十八歳程の顔が大きく四角い、顔の皮膚が厚い男であった。
背はさほど高くないががっしりしている
図太そうだが落ち着きも感じる。
「トーボ君だね。探したよ。私は騎士エグイゼル。私達と一緒に来てもらおうか。軍の人間だと言う事を隠して子供に目星をつけていたんだ。我々は光を発する子供を探していた。遠くから見ていて君はあやしいと思った。家を出て一人になるまで見ていたんだ。そしてここにおびき寄せる為木を何本か伐採したんだ」
「え?」
「そう、君は木の神だから木の心と声が分かる。例えば木を切れば木が『痛い』と言って君にメッセージを発してくる。そうなると木の神である君は操られた状態の様になり無意識でその木や森の方向に向かうんだ。情報を色々集めて分かったよ」
「ジムが悪者の化けた姿だったの?」
そして遂におじさんは正体を絞る様に言った。
「私は人間ではない神だ。マスター・マッコルンの使いだ。正体を隠して迫害から神の子を救う為来たんだ」
「そうだったの?」
一方ジム=エグイゼルはばれたからいいと思って本性を現した。
「君は神族の子供だね。本来ならここで殺すところだが、君には予言能力があるらしいね。他にも力がありそうだから興味があるから一緒に来てもらおう」
「くっ!」
ケビンはトーボの手を引いて逃げようとした。
しかし後ろを兵が塞いだ。
「うう!」
トーボの目が光り圧の様な気を発し兵士達の目をくらました。
「ぐあ!」
エグイゼルは言った。
「ほう! さすが神族の子供、不思議な能力を持っているようだな。ますます興味が出てきたぞ」
トーボは怯えた。
「待てっ!」
そこへスカーズ達が現れた。