互角
カーリアンは俺の稲妻を見て起きている事を完全に受け止め切れず慌てた。
「な?」
さらに続けた。
「何でこいつにこんな力が」
俺は怒りを抑え落ち着いて言った。
少し無駄とは思いながらも。
「降参してくれ」
「え?」
カーリアンは「正気か?」と言う顔をした。
でも俺は続けた。
ロミイを痛めつけた事は置いといて。
相手の良心に響くように。
「降参してください」
しかしカーリアンは納得が行かず荒れた。
「ぐ、ぐう、うおおお」
カーリアンは我を忘れて力任せに俺に殴りかかったが光の膜に跳ね返された。
また彼は現実を受けきれない表情をした。
「うおおお」
その後やけになったカーリアンが何発パンチを放っても膜は壊せなかった。
「一発だけ」
俺はお返しに軽く殴った。
そんなに怒りは込めず。
カーリアンは吹っ飛んだ。
更に脅しでダウンした所に稲妻を撃つと本当に怯えていた。
俺に対して別人を見るような視線だった。
カーリアンはシャークアインに目をやった。
対してシャークアインはじっと俺の目を見る。
俺も合わせた。
「俺がやろう」
「シャークアイン」
遂に後方で見ていたシャークアインが答えた。
俺はダメもとでシャークアインに聞いた。
「あんたは降参しないんですか」
しかし、案の定だめだった。
「俺はこれから復讐を人類にしなければならん」
でも俺は諦めず続けた。
無用な争いを回避したくて。
「そんな事止めましょうよ」
しかしシャークアインには隙が無い。
「俺はお前たち以上に迫害された。人間を幸せにするために遣わされたにも関わらずだ」
「……」
「まずエクスド軍を掌握して迫害していた奴らから奴隷にする。その後一般人への復讐を開始する」
俺は言葉通りむなしく言った。
「止めましょうよむなしいし」
シャークアインは言った。
「お前は本来俺と敵対する側じゃないだろう」
しかし俺は毅然と言った。
「さっきも言ったけど、あんたを止めないと他の人間が苦しむから。神族だけじゃなくて」
この言葉が少しシャークアインは引っかかった様だった。
「『止める』と言ったな殺すとかじゃなくて。まさか俺を説得する気か」
「非常に難しいとは思いますが、あんたも不幸な目に合ったのを考えて出来れば争いたくない」
「もう止まらんさ。個人的怨念でなく神罰でもある」
「貴方って上位の神なのに人間臭いね」
「行くぞ!」
俺は飛び掛かって来たシャークアインと力比べになった。
自分でも信じられない事に互角だった。
「ぐっぐぐ」
「くらえ」
シャークアインはわざと外して稲妻を何発か出した。
「俺はお前と違い稲妻を何発も呼べるんだ」
「俺だって」
俺もシャークアインと同じく稲妻を何発か降らせた。
「ほう」
「どうしても止めないなら実力で行きますよ。本来あんたと戦う理由はそんなにない、逃げて俺達だけで理想郷に行けばいいんだけど、地上の人間達をほうっておけなくなったのさ」
「まあ、貴様は人間にひどい目にあわされた事もないしな。偽善で首を突っ込む気か。ワーグなんかの言う事を何故聞いてやる必要があるんだ。
ティルは言った。
「そこがスカーズの良い所なのよ」
俺は言った。
「稲妻合戦はやめましょう。他の人に当たる。お互い相手だけを狙いましょう」
「いいだろう」
俺は構えた。
「エアカッター」
「私も真似させてもらおう」
シャークアインも同様の構えを取る。
余裕に満ちた表情、しぐさだった。
威力がアップし双方一二個のエアカッターが飛び相殺した。
ティルが言った」
「互角?」