ロミイの変化
ドラゴンは動きを停止した。
「やったぞ!」
ワーグは歯ぎしりした。
「何故あいつがドラゴンの弱点を知っているんだ! 見抜いたとでも言うのか!」
突然ロッドロンは叫んだ。
「はっはっは! 私が彼にドラゴンの弱点を教えたのだ! これでドラゴンは二度と動かん!」
俺はまずいと思った。
「博士! 言っちゃだめですよそんな事! 殺されますよ!」
「私は勇気を出したかったのだ」
「え?」
「私も、殺されると分かってても勇気を出したかったのだ。スカーズ君達ばかりに戦わせるわけには行かない。もとはの原因は全て私にあるんだ。脅されて命ぜられるままに兵器を作った私はもう罪ほろぼしは出来ない状態なのだ。そういう運命だったんだ」
「そんな事ないですよ! ワーグ達が全て悪いんじゃないですか! 貴方は素晴らしい科学者だったんだ! 世の中に一杯貢献できる」
ウォレンも言った。
「そうです、貴方に罪はない」
「私は、弱い人間だ。悪人に脅されると言いなりになり人殺しの兵器さえ作る。そういう人間だ。例えワーグ達を倒せてもきっと今度は別の悪人に狙われるだろう」
「そんな事!」
「儂は……うっ!」
博士の背中に矢が突き刺さった。
「……!」
「博士ーっ!」
誰よりも早くロミイが駆け寄った。
「早く回復魔法をかければ」
「私はもう良い。ロミイ、君を不幸にしてすまない。全て私の弱さが招いた事だ」
ロミイは涙を流した。
「私は不幸なんかじゃない! スカーズさんやご両親や皆と出会って苦しい事もあったけど楽しい事もたくさんあった! 幸せだった! 博士が私を感情のある機械に作った、いえ生んでくれたからよ!」
「私はこの年になっても配偶者がいず機械で寂しい気持ちを紛らわす老人じゃ」
「そんな事ない! 死なないで博士、いえお父さん、うっ……!」
ロミイの背中に矢が突き刺さった。
ロミイの動きが止まった。
感情さえ消えてしまったみたいに。
突如ロミイはすっくと立った。
言葉を発してないのにここまで威圧感を感じた事はない。
兵達は挑発した。
「おーい御大層なメロドラマみたいな事やってんじゃねーよ」
「機械の癖に」
ワーグは言った。
「そいつは確かに素晴らしい頭脳を持っていた。だが気が弱い。いつも脅され我々の言いなりになるしかなかった男なのよ!」
「……」
ロミイは手を震わせながら背中の矢を引き抜いた。
ウィッセルムはさらにあおった。
「悔しいか、憎いか娘? いくら怒ったところで貴様の力じゃどうにもならんがな」
「貴方達を憎くないと言えば噓になる。でももっと辛いのは、自分の力のなさのせいで博士、いえお父さんを救えなかった。そしてスカーズさん達の役にも立てなかった。だから」
ロミイは不意に振り向いた。
「ティル! あの道具を貸して」
「え? でも!」
「今しか使う時はないわ」
ティルはブレスレットを貸した。
「はあっ!」
ロミイはブレスレットを付け祈り呪文を唱えた。
すると彼女の体が浮かび上がり光を発し天女の様な衣と天使の羽根が出来た。