表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ARIA  作者: 残念パパいのっち
フィロソファーズ・ストーン
85/99

敗走

「チッ」


足音が天井から響く。俺は、思わず見上げた。


馬鹿な奴らだ。こんな所までノコノコやって来るとは……。まあ、いずれ関係者は全員始末する予定だったし、手間が省けたというべきか。


ただ、この場所がどうしてバレた? それだけが引っかかる。いや、関係ないか。全員殺してしまえば済む話だ。


バッグから銃を取り出し、スライドを引いた。


「逃げた方が良いんじゃないか?」


「あっ?」


その声に俺は苛立った。山内亮……、毎回毎回、俺の邪魔ばかりしやがって。挑発しているつもりだろうが、甘い。


「舐めやがって……全員殺して、拷問再開に決まってるだろ。すぐにお前の横に死体を並べてやる」


俺は静かに部屋を出て、隠し通路のそばで足を止めた。山内のバカが、何を企んでいるのか……。無駄な悪あがきに違いない。


息を潜め、部屋の中の様子を窺う。


「銃を持ってそっちに向かった! 来るな!」


案の定、馬鹿だ。あまりにも無意味な抵抗に笑いがこみ上げる。奴は絶望を知らないらしい。


俺はゆっくりと戻りながら、じっくりと山内の顔を観察した。まだ諦めていない表情……。頭の悪い奴だ。


「ここはな、地下室だ。しかも隠し扉を通らないと来れない。お前の声なんて届きやしない」


そう吐き捨てて、奴の顔面を蹴り飛ばした。



「無駄な努力ご苦労さま」



隣に死体が並んでも同じ顔をできるか、見物だ。俺は足早に隠し通路に向かう。


スマホで監視カメラの映像を確認する。四人の侵入者。二手に分かれているようだが、顔までは確認できない。


問題ない。奴らを一人ずつ慎重に始末するだけだ。隠し通路はいくつもある。まず一階から片付けて、二階の連中は後回しにする。


地下道を素早く進み、梯子を登って浴室へ。壁に身を寄せ、すりガラス越しに様子を伺う。完璧な計画だ。


今日という日は素晴らしい。一度に五人も片付けられるなんて、特に山内亮。奴には特別な拷問を施してやろう。


湊とその弟。ひしゃげた体を思い出すたび、あの時の感情が蘇る。脳裏に焼きついたその光景は、今も俺を興奮させる。


心臓が早鐘を打ち、手に汗が滲む。映像を見る限り、脱衣所に二人が侵入している。あと3秒、2、1……。


銃を構えた。来い。


……?


だが、何も起こらない。浴室は静まり返っている。


妙だ……。スマホには確かに二人が映っているのに。俺は慎重にドアを開け、脱衣所に踏み込んだ。誰もいない。


何かがおかしい。スマホを確認すると、侵入者が脱衣所を抜けて浴室に侵入していた。


浴室に侵入した一人がカメラを見上げている。


瞬間、俺の脳裏に嫌な予感が走る。


「山内亮……?」


急いで隠し通路を引き返し、山内が拘束されている部屋に戻る。


「……いない」


散乱した拷問器具と血痕が残っているだけだ。俺が浴室に移動している間に逃げたのか?


くそっ……!


苛立ちに任せて、椅子を蹴り飛ばす。


くそ、くそ、くそ……!


その時、どこか、ともなく人の声が聞こえた。


「ようやく気がついたか」


声の方に目をやると、そこにはスマートフォンが置かれていた。


「お前の異常な行動、全部撮影させてもらったよ。正直、殺されるかと思ったが……」


「きさま、いつから……!」


頭が燃えるように熱くなる。怒りで体が震え、近くの物を次々と叩き壊す。


くそ、こんなガキに……嵌められたのか!


俺は何度も深呼吸をして冷静になろうとしたが、焦りが全身を駆け巡る。


ここまでは上手くいっていたはずだ。クライアントの作戦通りだった……なのに、なんで先回りされているんだ。



……まさか、クライアントが裏切った? 俺を始末するために……?


まずい、ここで死ぬわけにはいかない。


仮想空間に戻るしかない……。


仮想空間に戻れれば、何度でもやり直しできる。クソ、クライアントにも必ず制裁を食らわせる。


俺は拷問部屋を飛び出し、隣の部屋に駆け込んだ。急いで、専用端末から伸びたケーブルを首筋の入出力ポートに接続する。


もう、この身体はダメだ。


全ての記憶データを吸い上げ、脳みそをフォーマット(初期化)する。


覚えていろ、山内亮。必ず、殺す。






「──寛さん、聞いていたと思いますが、そっちに行きました」



暫くすると部屋の隅から音声が聞こえてきた。



「……ああ、分かっている。後は任せろ」



茶番はここまでだ。中原美奈、いや、武田健二──







\ いいね や ブックマーク / をもらえると、テンション上がるのでよろしくお願います!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ