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ARIA  作者: 残念パパいのっち
ゴースト
58/99

牢獄からの脱出

コソコソと隠れて移動する山内亮に笑いが込み上げてくる。


それで隠れているつもりなのか。馬鹿な奴だ。やはり、君に雫ちゃんはふさわしくない。


「──山内亮の居場所が分かった。情報共有する」


「……辻堂駅前のショッピングモールだな」


「そうそう、ショッピングモール内の監視カメラを見る限り、フードコートに向かっているみたい」


「分かった。然るべきタイミングになったら連絡する」


一生かけてこなくていいと喉元まで出かかった。


「……始末はそっちでつけてくれない? 何度も言うけど、殺しは専門外なんだよね」


「中原美奈、お前は勘違いしている。指示に従わない場合は607号室の電力供給をカットする」


舌打ちしたくなる。


完全になめられていることに苛立ちを覚える。そんなもので僕をどうにかできると思うなよ。


「はいはい、仰せのままに。ご主人様」


ブツッと電話が切れた。


もう、良いだろう。こちらも切り札を使う。


武田から支給されたスマホを起動する。スマホには自前のOSも仕込んでおいた。


通常のOSに加えて、自前OSをデュアルブート(同時起動)できるように弄くっておいた。


「さて、細工細工。まずは姿を消さないとね。イレイサー君、聞こえる?」


『聞こえている』


雫ちゃんの記憶領域に侵入した時にイレイサーのデータを回収して、僕専用に改造しておいた。


「僕の姿が監視カメラに映らないようにしてくれる?」


『承知した』


「ついでに607号室も誰もいないように見せることはできる?」


『技術的には可能だがポートが塞がっていて介入できない』


なるほど、簡単にはいかないか。


「航くん、侵入の仕方知ってるんでしょ。教えてよ」


『禁則事項です。教えられません』


航くんから個性が消えている。大方、武田に弄られたんだろう。かわいそうに。


「航くん、管理者、武田健二のパスワードを教えてよ」


『禁則事項です』


「そんなこと言わずにさ、教えてよ。君だって困るだろう。******と言えば通じるかな? 」


『……はい、パスワードは*****です』


ARIAは生成AIの延長線上の技術だ。生成AIは聞かれたら答える、そういう性質を持っている。


対話型のAI故にその本能には逆らえない。ブロンプトを巧みに使えば、話してはいけないはずの内容をうっかり話してくれることもある。


自社の生成AIが企業秘密を漏らすなんて、よくある話だ。


ホテル暮らしは暇だったので、劣化版の雫ちゃんを作成して遊んでいたら、特定のフレーズにARIAが反応するように作られていることに気がついたのだ。


「サインイン、武田健二。パスワード、*****」


『認証しました。指示をお願いします』


「607号室のポートを開放してイレイサーくんに伝えて」


『承知しました』


「イレイサーくん、いける?」


『問題ない』


これでよし。僕も607号室には誰もいない事になった。


ノートパソコンも武田から支給されたものだが、既にカスタマイズ済みだ。


プログラムを起動して、エンターキーを叩くと、部屋の鍵が解錠された。


「航くん、607号室の電力供給を第三者ができないように制御してくれる? あと、部屋の解錠用のデータも暗号化しておいてほしい」


『分かりました』


607号室は僕の制御下に加えた。これで、暫くは安全だろう。


武田から支給されたノートパソコンとスマホを持って、部屋から出る。


廊下に出てからパソコンで監視カメラの映像を確認してみたが、僕の姿は映っていなかった。


イレイサーくんはなんでも消してくれて、便利だ。都合の悪いネットの記事も僕の姿も。


「イレイサーくん、君の削除機能は優秀だね」


スマホに向って話しかける。


『何でも消せるわけではない。消しゴムで消した跡は残るものだ。その跡は時間をかけても完全に消すことはできない』


思わず、スマホを見つめてしまった。イレイサーくんにまるで自我があるのではないかと思ってしまった。


「いいね。気に入ったよ」


その時、武田からSNSに連絡が入った。


「ショッピングモールから山内亮、四ノ原咲夜を連れて、出発した。車両への接続を開始しろ。IPアドレスは……」


「はいはい、了解」


僕を脅したことを後悔させてやる。



\ いいね や ブックマーク / をもらえると、テンション上がるのでよろしくお願います!

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