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ARIA  作者: 残念パパいのっち
ゴースト
56/99

後出しの協力者

「なら、俺が車を出そうか、山内くん」


武田さんは左腕で額の汗を拭い、肩で息をしている。


僕は立ち上がり身構える。横目に見た咲夜も、心なしか表情が強張っているように見えた。


拓人が頬を指の先で掻きながら、不安そうな顔をする。


「えっと、どちら様でしょう? 」


武田さんと僕を交互に見る。


「はじめまして、私は武田という。そこの山内くんと四ノ原さんと雫さんの知り合いだ」


『……誰? 私はあなたの事しらないんだけど』


武田さんは苦笑する。


「そうか、それは失礼した。高瀬さんの同僚と言えば通じるかな」


『ああ、そっち関係の人か。どうも』


雫は釣れない返事をする。まだ、武田さんの情報を精査していないのに、先回りされてしまった。


武田さんは両手を無防備に上げる。


「さっきは俺が悪かった。説明が足りなかった。弁解させてくれないか」


「話は聞きます。でも、こちらの質問にも答えて貰います」


武田さんは首肯する。


「なんでも聞いてくれ」


「僕の居場所はどうやって突き止めたんですか? 」


「監視カメラとエージェントからの報告だ。話は聞いていると思うが、君らには監視がついているからな」


分かってはいたが、身を隠しながら移動しても無駄だったということか。


「拓人や咲夜にも監視はついているんですか? 」


「これ以上は……機密事項なんだが」


武田さんが鋭い目と声で凄む。隆々とした筋肉が服の上からでも分かるし、身長もあるので、圧に負けそうになる。


こんな人と正面から喧嘩したら勝てる気がしない。だからこそ、冷静に考えないといけない。


「もう、結構です。咲夜は監視対象で、拓人は対象外ということで理解しました」


「山内くん、なかなか嫌らしい性格してるね」


『嫌らしいのは武田さんでしょ。なんでも聞いてくれと言ったのはそっちじゃない』


武田さんが両手を下げ、威圧感もすうっと消えて、笑顔を浮かべている。


「どうしたら、僕の事を信じてもらえるかな? 」


「部外者の私から見ても、おっちゃん信用ないで。胡散臭いわ」


拓人が不安そうな顔をキョロキョロと様子を伺っている。


「あの……みんな何の話をしてるんだ。俺、ついていけないんだけど」


拓人に席を外してもらったのが裏目に出たようだ。


「武田さん、拓人は帰らせます。いいですか? 」


「……いいに決まってるだろ。君は僕を誤解しているよ」


拓人の方を振り返らずに言葉だけ伝える。


「拓人、悪いけど、そのまま帰ってくれ」


「でも、佐藤先輩が……」


「その件は僕と雫に任せてくれないか? 」


「亮、さり気なく、私を外さんといてくれる。私も探す」


ため息をつく。咲夜は既に監視対象だし、確かに一緒の方がいいのかもしれない。


「なんだか、分かんないけど、分かった。いつか、必ず説明してくれよな! 」


「すまない。ありがとう」


そう言うと拓人は立ち上がり、駅の方向に向かって歩きだした。僕は去り際の拓人を確認してから、呼び止め、小走りで近づいた。


「忘れ物だ」


「あっ……! すっかり忘れてた。サンキュ」


拓人が去るのを確認して席に戻る。


「さて、これで腹を割って話せるかな、山内くん? 」


「それは質問の回答しだいです。僕の命を狙っているのはだれですか? 」


武田さんは観念したのか、深呼吸をすると話し始めた。


「……中島コーポレーションの人間だ。巨大な企業だからね。そもそも、プロジェクトARIAに賛同している者も、反対している者もいる」


「つまり、反対している勢力から狙われていると? 」


「逆だ。賛同している勢力の一部に狙われている」


『賛同してるなら、こちらに味方してくれそうじゃない』


雫の疑問はもっともだ。


「賛同しているのはARIAの利権に絡みたい連中でね。関係した人間を失脚させて、このプロジェクト自体を乗っ取ろうとしているんだ」


「なるほどな。それで末木さんと高瀬さんを排除しようとしてるっちゅうことか」


「そうだ。連中は秘密を知りすぎている山内くんが目障りみたいでね」


高瀬という言葉に反応したのか、雫の口から高瀬さんを心配する言葉が溢れた。


『……ねえ、高瀬はまだ見つかってないの? 』


「残念ながら」


武田さんは雫の映っているスマホから目を逸らした。


「ここまで話したんだ。君たちを匿うためにも暫くホテル暮らしをしてくれないか? 」


「おっちゃん、ホテルはまだ行かんで。佐藤先輩を探さなアカンからな」


『そうね。人命がかかってるかもしれないし』


「佐藤先輩の捜索に協力してくれたら、武田さんを信じて、ホテルに行きます。それでどうですか? 」


武田さんは両手を組んで、思案した顔をしたかと思ったらすぐに返事をしてくれた。


「だから、初めから言っているだろ。車を出そうかって」


「恩にきります」


「なら、すぐ出発で決まりやな」


咲夜はテーブルの上を手早く片付け始める。咲夜がトレイに空の紙コップを集める。


そして、僕の両手にトレイを乗っけてくる。


「片付けよろしくな! 」


「……僕に渡す前提だったんだね」


「これも頼むわ」


そう言うと、紙のナプキンもトレイの上に投げ込まれた。


「おい、新品もあるじゃないか」


「取りすぎてもうてな」


渋々、トレイを片付ける。真新しい、紙ナプキンが勿体ない気がして、バッグに入れようとしてメッセージが書いてあることに気がついた。




「武田は嘘をついている」




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