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ARIA  作者: 残念パパいのっち
ゴースト
55/99

虚ろな傀儡人形

辻堂駅の改札前には僕、拓人、咲夜、雫というメンバーが集まった。


咲夜以外はいつものメンバーだが、普段来ることのない場所に集まっているのが妙な気がする。


左肘で拓人が俺の脇腹をつついてくる。


「その子、誰? 」


「友達の……」


「元カノの咲夜や。よろしくな!」


『現カノの雫です! 』


「いや、雫ちゃんは知ってるから……ていうか、二人共主張強いな。やまうっちー、……まさか、二股……」


「違う、何もやましいことはない」


拓人が冷めた目で見てくるので、話題を変える。


「とりあえず、佐藤先輩の話を聞かせてくれないか」


「ああ、実はな──」






「──つまり、佐藤先輩は部屋から居なくなっていて、寛さんと木崎さんが警察の事情聴取を受けて、拓人は佐藤先輩のスマホ解析を雫に頼むために合流したということか」


「そうや。それで、亮の部屋に居た私が荷物運びを引き受けたってことや」


「……何故、そこで咲夜が話の中心みたいな雰囲気を出すんだ」


『咲夜関係ないじゃん』


ポーター(運び屋)役ってのはな、映画だと主人公になるくらい重要な役なんやで。自分、知らんの?」


呆れた顔の拓人から、座れる場所を探そうとの提案があった。


スマホの解析にはノートパソコンとスマホを接続する必要があるのと、解析に少し時間がかかるらしい。


近場にあるショッピングモールのフードコートに移動した。


フードコートは壁とテーブルが木目調で統一され、緑の造花で彩られ、落ち着いた雰囲気があった。


平日なので人は少ないが、ここならいきなり襲われたりする事はないだろう。


周囲を注意深く観察するが、こちらを監視しているような人間は見当たらない。


『ねぇ、亮、さっきからそわそわしているけどどうしたの?』


「そやな、めっちゃ気になるわ」


思わず、ため息が溢れた。僕は隠し事は出来そうもない。


「俺の事情を話してなかったね。拓人……悪いけど15分ほど席を外してくれないか? 」


拓人は色々聞きたいことがありそうな表情をしていたが、飲み込んでくれたようだ。


「仕方ないなぁ。後で俺にも説明してくれよ」


「すまない」


拓人は立ち上がり、フードコートの端にあるクレープ屋に向かって歩いていった。


「咲夜、僕のスマホ返してもらっていい? 僕のスマホから雫と通話するよ」


咲夜からスマホを受け取り、雫と通話を開始して、咲夜と雫にここに来るまでにあった事を話した。


『なるほどね。今までの中島コーポレーションの対応を考えると、亮は今も監視・保護されている可能性が高いから堂々としてれば良いと思う』


「そんなもんかな。でも、咲夜はここで別れて大阪に帰って欲しい。荷物は後で送るからさ」


「あほか。その話を聞く限り、一緒にいるほうが安全や。別れた途端にブスリとやられるかもしれんやろ」


「あのな、咲夜……」


『あっ、……解析が終わった。SNSと電話、メールの通話履歴を確認しようか』


そう言うと、パソコンの画面に通話履歴が表示された。


三神教授、寛さん、実家の履歴がほとんどだが、いくつか「非通知」という履歴が残っている。


最新の通話履歴も「非通知」で、昨日の午前10時47分となっている。


SNSは9月頃から一度も開いていないのか、未読が253件になっている。未読を一通り確認したが、怪しい履歴はない。


だが、メールは違った。


一件だけ見覚えのあるメールアドレスがあった。受診日時も非通知の通話日時と近く、10時42分と記録されている。


「|Bottiglia de Gotaz@……comボッティーリャデゴタス」だ。


たしか、フェイクポルノ事件の時に木下が使っていたアカウント名だ。


「ボッティージャ・デ・ゴタズ……。ゴタズさんのボトル? なんのこっちゃ」


咲夜が不思議な発音をする。


「……ボッティーリャ・デ・ゴタスじゃないの?」


「これスペイン語やなくて、ポルトガル語なん? 後、それGotaz(ゴタズ)やろ、Gotas(ゴタス)とは読めへんで」


『|Bottiglia de Gotasボッティージャ・デ・ゴタス………スペイン語で“しずくの瓶“』


「雫の瓶……」


木下は雫に拘っていた。フェイクポルノ事件は雫を閉じ込めるために起こされた騒動だとしたら……。


いや、スペルが違うし、偶然かもしれない。


「話が逸れたね。メールには……URLしか書いてないけど、なんだろうこれ」


『一応、解析したけど、普通のフリーメールのアカウントだし、リンクも動画共有サイトのドメインみたい。リンクを踏んでみるしかないんじゃない?』


意を決してリンクをクリックすると表示されたのは広くて薄暗い部屋で、床には瓦礫や鉄パイプのようなものが散乱している。


「ひっ……」


目を凝らすと死んだはずの木下らしき人物が映っていた。


後ろ手で拘束されているのか、両腕は椅子の背もたれに隠れている。目は虚ろだが、微かに動いていて、体に外傷はなさそうに見える。


『この映像、録画データだね……』


僕たちは映像をじっくりと見つめた。


「壁にK&Kってロゴが見えるで」


「検索してみよう」


スマホで「K&K」と検索すると、複数の結果が表示された。


検索上位に最近話題になった廃工場の名前があった。


なんでも、長い黒髪の女性が夜な夜な工場内を彷徨っているらしく、目撃情報が後を絶えないのだとか。


心霊スポットとして有名らしい。


『K&K Industries。数年前に倒産したって。画像検索でも同じ工場がヒットしたから、多分間違いないよ』


「この動画、いつ撮影されたんかな?」


『撮影日時は分からないけど、動画のアップロードは昨日の午前10時17分だね』


「佐藤先輩に木下のメールアドレスから、拘束された木下の映像が送られてくるのって変だよな……」


皆、沈黙した。


今朝、木下の死体が河原で発見されている。動画の木下は昨日時点の映像で、その映像を佐藤先輩が見ている可能性が高い。


嫌な結論が見え隠れしているが、誰もそれを口にしなかった。


「やまうっちー、この工場近いのかな?」


いつの間にか、拓人が後ろに立っていた。


「ああ、茅ヶ崎の内陸の方だね。車で20分くらいかな」


「なら、佐藤先輩がおるかもしれんし、行ってみるか。誰か、車持ってへんの?」


僕も拓人も車を持っていない。それ以前に免許証も持っていないが。



「なら、俺が車を出そうか、山内くん」



そこには武田さんが立っていた。


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