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ARIA  作者: 残念パパいのっち
フェイクビレッジ
24/99

監視カメラ

「ミスター山内、ミス雫、大学が閉まるまでだからな。帰る時は声をかけてくれ」


「はい、ありがとうございます」


僕と雫は、過去二ヶ月の監視カメラの映像を解析し始めた。


三神教授に頼み込んで監視カメラの映像確認の許可を貰った。


SNSに投稿された僕の画像は半袖のポロシャツを着ている。白をベースにした青色の太いストライプが入ったデザインだ。


『亮ってその服好きだよね。よれてきてるし、買い替えた方がいいよ』呆れた顔で言われた。


雫は記憶領域からこの服を着ていた日をピックアップしてくれたが、5月後半から7月末までに16回着て出かけていたらしい。


思わぬ真実に苦笑いした。


大学にこのポロシャツを着て行ったのは計11回。僕らは毎日、昼休みと午後の授業終了後の約1時間をテラスで過ごしている。


その日時に絞って映像を確認することにした。


雫が映像を見やすいように三脚でスマホを固定し、16倍速で映像を再生する。


「これなら11日分の映像も1時間半で見終わるわ」と彼女は言っていた。16倍速で映像を見たことがないが、そんなにうまくいくものなのだろうか。


授業は1限目は9:00から始まり、5限目が終わるのは18:00。


1限目: 9:00 - 10:30

2限目: 10:40 - 12:10

昼休み: 12:10 - 13:10

3限目: 13:10 - 14:40

4限目: 14:50 - 16:20

5限目: 16:30 - 18:00


「授業と授業の合間の休み時間は飛ばしていいけど、毎日5限まで授業があるわけじゃないんだよな」


『亮の時間割だと水曜日は4限まで、木曜は2限だけないね』


そこまで考慮すると16倍速で2~3時間くらいはかかりそうだ。


「さて、犯人が見つかるまで、じっくり映像を追うしかないな」と映像に目を凝らした。


『亮は見なくていいよ。16倍速じゃ何が何だかわからないでしょ』


思わず、目をパチクリさせてしまった。「いや、頑張るけど……」


『無理しなくていいよ。機械の操作だけお願い。まずは6月25日から』


「うん……」


釈然としないものを感じつつ、言われるがままに映像機器を操作した。こうやってAIに仕事を奪われていくのかなと考えてしまった。


『止めて!』


「はい、これでいい?」


『そこから、コマ送りして……』


コマ送り、早戻し、早送り、再生……。目星がついたようだ。テラス席に座る僕の右斜後ろからスマホを構えた人物が映っていた。


「この動画以外にも同じような位置関係の人いたよね。なんでこの映像を確認したの?」


『SNSに上がっている画像から逆算すると、映像に映っている人物の撮影位置がぴったり合うんだよね』


僕にはピンと来なかった。


「……そういうもんか?」


『うん。だからもうおしまい』


「いやいや、まだ15分しか見てないぞ。他にも同じ位置の人間がいるかもしれないのに」


『いないよ』


「なんで、そんなに自信満々なんだ」


雫の顔は自信に満ちていた。


自信の根拠が皆目検討がつかない。


『私達の写っているあの画像から気象条件や撮影日時を推測し照合した結果、ぴったり合うの』


「そんなことが分かるの?」


『あの写真には思ったよりも沢山の情報が詰まってるからね。ま、何より調査する前に大分条件を絞り込めたのは大きいかな』


「はあ……」


気合を入れていたつもりだったが、拍子抜けするくらいあっさり終わってしまった。


「で、結局、僕らの写真を撮ったのは誰なの?」


『映像を三秒戻して。そこ。やっぱり、中原美奈(なかはらみな)だ』


「?」


『……亮って、前から思ってたけど、コミュ障だよね』


「コミュ障ではない、寡黙と言ってくれ」


『自分で寡黙とか自画自賛にも程があるよ。亮は関心ないかもだけど、亮と同じクラスの娘だよ』


目を凝らして見たが全然記憶にない。


「思い出せない……」


『本気で言ってるの。ひどっ。いつも黒っぽい格好してるでしょ。だから、カラスって呼ばれてるの』


言われてみれば、いつも黒っぽい格好の人がいたことを思い出した。


『彼女もコミュ障みたいだからね。声小さいし、引っ込み思案だし』


「話したことあるんだ」


『何度か。笑顔がかわいいんだけどね。声が小さくてあまり聞き取れないんだ』


「ふーん」


ジトッとした目で雫がこちらを見る。


『さらに言うと、同じアパートの一階に住んでるんだけどね』


「うえっ!?」


『本当に酷いね……』


コホンと咳払いをして話を戻す。


「つまり、このスレッドを立てた可能性が高い人物が中原美奈ってことだね」


『そうなるかな。ちょっと信じられないけどね』


そう言った雫は物憂げだった。心なしか、雫が少し大人の顔をしているように感じる。


「同じアパートなら話は簡単だ。直接聞きに行こう」


『……うん、そうだね』


三神教授にお礼を言って、アパートへ急いだ。


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