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不審な母

 アンナの夫は、一ヶ月ほど前に医者から、もう長くないと宣告された。

 狭い家の中には、絶えず通夜のような空気が流れた。


 双子の息子であるジョーとウィリーは、アンナが仕事に行っている間、甲斐甲斐しく父の面倒を見ていた。一分一秒を惜しむように、父のそばにべったりしていて、離れなかった。


 ある日、次男のウィリーが、兄に向けて言った。


 「ママは、可哀想だよね。パパが辛い時にも、朝から晩までお外で働かなくちゃいけなくて……パパもうすぐお空に行っちゃうのに……」


 余命幾ばくもない夫と、残りの時間を大切にすることも出来ないアンナは、世間的に見てもかなり涙ぐましい境遇だろう。


 母の気持ちを想像すると、ウィリーは涙声になるのを抑えられなかった。

 が、兄のジョーはこの言葉を聞いて、不思議と眉を顰めた。

 そして、沈んだ声音で言うのだ。


 「本当に働いてるのかな……」

 「え? 何言ってるの、ジョー?」

 「俺さ、見たんだ。ママが知らない男の人と、腕を組んで歩いているの」

 「えっ! そんなのありえないよ! ジョーの見間違えじゃない?」

 「それこそありえない! どれだけ離れてたって、ママを間違えるものか!」

 「でも……じゃあ何でママは、パパ以外の男の人と、腕を組んで歩いてたんだよ。それっていけないことなんでしょ? 第一パパが可哀想だよ!」

 「しっ。家の中のパパに、聞こえるぞ。そう興奮するな。ひょっとしたら、そういうお仕事なのかもしれない」

 「お仕事? イチャイチャして歩くことが?」

 「俺も詳しくは知らないけど、女の人が男の人と仲良くすると、お金を貰えることがあるんだってさ」


 ということは、ママは病気のパパをほったらかして、他の人と遊んでいるわけではないのか。

 いや、わからない。それを確かめるためには、ママを観察するしかない。


 「ウィリー、明日仕事に行くママの後をつけるぞ」

 「うん。僕もおんなじこと思ってたところ」


 こうして兄弟は、母が不貞しているかどうか、調査することにした。

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