ダンス!ダンス!タンス!?
パンッ!
パンッ!
バーン!
ばばばんっばん!
盆踊りの曲と共に、軽快な木を打つような音が!?
なんだ?
弁慶か?
一体何をやっておるのだ?
音のする方へ、足早に歩く若。
「え!?」
そこには、タンスの引き出しを、音をたてて開け閉めしながら曲に合わせて踊る弁慶がいた。
すこぶる真剣だ。
「・・・」
若は、一瞬怯んだが、声をかけずにはいられない。
「弁慶、楽しんでいるところすまない。これは何の騒ぎなのだ?」
若の声に振り返る弁慶。
「あっ!若!タンスでございます!」
音楽を止めて若を見た。
「え?あ、ああタンスだな。」
確かに部屋に置かれた箪笥の前に、弁慶はいた。
「作用です!!タンス!です!」
楽しそうに、もう一度言う弁慶。
「?」
一体弁慶は何を言っておるのだ?
若は、混乱した。
「先日、買い物の帰りに、若者が音楽をかけ、手足をバタバタさせながら、このような音を立てていたのでございます!」
そう言うと、弁慶は、タンスの引き出しを開けて思い切りパァーンと締める。
弁慶の弾むような声が続く。
「それはもう楽しそうで!!ただ、室内が全部見えた訳ではございませんので、ドンドンバタバタのような物音をどのように出しているのか、建物の外からは、分からなかったのでございます。」
弁慶は目をキラキラさせて、若に話し続ける。
「しかし!!しかし、若!聞いてくだされ!弁慶はヒントを見つけました!!」その部屋の壁には、『和ダンス!』と書かれたポスターが貼ってあったのが見えたのでございます!間違いない!その軽快な物音の正体は、『和ダンス』なのだと!」
弁慶は、そう言いながら、部屋に置かれた和ダンスの前で踊りながら、タンスの開閉音を打ち鳴らす。
「ほら!そっくり!この音です!まさに!拙者は正体をつかんだのです!」
嬉しそうにくるりとまわり、はしゃいでいる。
「・・・」
若は、絶句した。
そ、それはまさかダンススタジオでは。。。?
音楽が和だから、和風のダンスで和ダンス。。。?
洋楽に合わせてダンスしていたら、洋ダンス。。。
弁慶はこのために洋ダンスを用意して洋ダンスもしていたのだろうか。。。?
弁慶が踊りはしゃいでいる部屋には、和ダンスが3つと、洋ダンスが2つ並べられていた。
いや、もしかすると、私が勘違いしているのか?雑誌の読みすぎか?
確か雑誌の記事には、木の棒や和太鼓のふちなどを叩いてリズムを取るとかかれていたような。。。
若の頭の中は、大混乱。
ちらっと弁慶をみやる。
「若ー!若もご一緒にいかがですかー!楽しいですぞ!あははは。」
楽しそうにはしゃぐ弁慶の姿を見ていると、、、
「・・・」
楽し・・・そうだな・・
弁慶の動きにつられて、自然と若の手がリズムを取り始める。
「うむ!私にも教えてくれ!」
「もちろんでございます!」
「よし!行くぞ!弁慶!」
「はい!若!」
弁慶と、若は、
「「よぉーお!!」」
という掛け声と共に、それぞれ別の和ダンスの前に立つ。
「それでは、若!」
「おう!弁慶!」
「ミュージックスタート!」
弁慶は、スイッチを押した。
そうして、掛け声を掛け合いながら、近所から苦情が来るまで、曲に合わせて和ダンスを打ち鳴らし、踊りまくった2人なのでした。
めでたしめでたし