洗濯機がやってきた!
「ふふふん ふふふん」
弁慶はご機嫌だった。
「若が拙者のために洗濯機という箱を買ってくださったのだ!これはすごいぞ!」
数日前
「弁慶!」
「はい!若、お呼びですか!」
「電気屋というのが近所にできたそうだ。」
「左様で。」
「行ってみたい。」
「では、早速参りましょう。」
「うむ。」
歩いて10分ほど。
「大きな建物だな。」
「作用でございますね。」
扉を開けて中に入ってみると、
「うわあ、広いですね!若!」
「そうだな。それに、白い箱みたいなものがたくさん並んでいるな。」
「そうですね。ちょっと眩しいですね。」
「おっ、最初は冷蔵庫コーナーか。」
「ああ、昨年隣町にできた電気屋で購入いただいたあれですね!冷蔵庫は、素晴らしいです!夏に冷たいお茶や氷までできて。」
「そうだな。あれは素晴らしい箱だったな。」
「左様で!して、今日は何を?何か見るものがあったのでございますか?」
「ああ。先日雑誌の広告欄に出ていたのだが・・・。あ、あった!これだ!」
通路を奥へと進んで行くと、腰の高さくらいの大きさの、やはり白い箱のようなものがずらっと並んでいた。
「これは?」
見ると、『洗濯機』と書かれていた。
「これは、新発売の『洗濯機』というものらしい。こうやって蓋を開けて。」
若が、一番手前の白い箱に手をかける。すると、蓋になっているようで、パカッと蓋があいた。
「この中に、洗濯したい衣類などを入れて、洗剤を入れ蓋をする。そして、脇にあるスイッチを押すと、中でくるくる回って汚れを落とし、ピーと音がなったら蓋を開けると、中の衣類が綺麗になっているという仕組みらしい。あとは干すだけ。風呂の残り湯を使って洗うこともできるそうだ。」
「それは素晴らしいですね。」
「うむ。これから寒くなる。外でタライに水を溜めての洗濯は辛いだろう?これを購入しようと思う。」
「若―!!!!」
弁慶は感動した。
拙者のことを考えて、ここにきてくれたのだ。
そして、先ほど電気屋さんから配達され、洗面所に設置されたばかり。
「ふふふん。ふふふん。ふふふふ〜ん♪」
弁慶は、蓋の真ん中にあるガラス窓から、洗濯機が回る様子を楽しげにみていた。
「回ってる。回ってる!」
とても楽しそう。
子供のようにじっとみては、鼻歌を歌い上機嫌。
「これが水と一緒にクルクルしなくなったら、勝手に水が抜けて、またクルクルを始める。その後ピーとなってクルクルが止まったら、蓋をぱっと開けると〜!」
そこまでいうと、
ピーーーー!
「あ、鳴った〜!」
弁慶は、嬉しそうにパッと蓋を開けた。
中から洗濯物を取り出すと、
「軽く絞った状態になっている!すごいぞ!拙者が絞るよりシワが少ない!!!」
目をキラキラさせながら、洗濯機を愛おしそうに撫でる。
「お前はすごいな!クルクル回って、クルクル回って、パッと開けたら、『はい!出来上がり!』」
そこへ、若が通りかかった。
「あ、若!これ、素晴らしいです!本当に素晴らしいです!ありがとうございます!」
「そうか!良かった。使えそうか?」
「はい!」
そう返事をして、今開けたばかりの蓋を閉める。
「本当に、『クルクル回って、』」
一緒に蓋の窓を見て、それから弁慶はパッと蓋を開ける。
「『パッ!』です!そしたら、ほら!洗濯物が綺麗になっているんですよ!」
若は、蓋が開けられた洗濯機を覗き込んだ。
「おお!本当だな!洗濯物が綺麗に洗われているな。しかも、程よく水気も切ってある。」
「そうなんですよ!!クルクル回って、一旦止まって水が出て行って、再びクルクル回って止まったら、パッと蓋を開けると、『はい!出来上がり!』なんです!すごいです!若、ありがとうございます!」
とても嬉しそうに、初めての道具にはしゃぎまくる弁慶を見て、若は、買って良かったなと嬉しさが込み上げてきた。
「そうか!クルクル回ってパッ!か!」
「左様です!クルクル回ってパッ!」
あははは。
なんだか、二人楽しくなってきたー!
「クルクル回ってパッ!」
「クルクル回ってパッ!」
「クルクル回ってパッ!」
「クルクルッ、パッ!」
「クルクルッ、パッ!」
「クルクルッ、パッ!」
弁慶と若は、その場でクルクル回りながら、パッというところで止まって顔を見合わせる。
「あはは。楽しいな!」
「楽しいですね!」
2人は、クルクル回りながら、パッと止まり笑い合っては繰り返す。
「クルクルッ、パッ!」
「クルクルパー!!」
「クルクルパー!!」
あははは!
もう、クルクルパーって言っちゃってる!!
そんなことお構いなし!
2人はものすごく楽しそうに回り続けていた!!
良かったね!