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突然のNEWS

「この時間は、予定を変更してNEWSをお送りしています。今日、朝5時頃、……の桜の木の下で事件が再び起きました。」


私は、そのNEWSから目が離せなかった。


「えー。すでに、男の身柄は、拘束されています。」


胸のドキドキが、静まらなくて。


TVのNEWSが、頭に全然入ってこない。


「この場所で、20年前に茶色のボストンバッグと血のついたジャケットと大量の血痕を残して消え去った。……光さんの、事件の犯人と同一犯なのでしょうか?」


私は、リモコンを持ったまま固まっていた。


「なっこ、出来たわよ。なっこ、どうしたの?」


静樹は、私の顔を覗き込んだ。


「どうしたの?そんなに泣いて」


「彼のNEWSが、NEWSが、」


その言葉に、静樹はリモコンを私から取ってボリュームをあげる。


「20年前の犯人なのでしょうか?」


「まだ、確定はしていません。」


静樹は、TVを消した。


「不確かな情報に振り回されなくていいわ。なっこの彼は、生きてるから。どこかで」


私の心が壊れないように、静樹はそう言って頭を撫でてくれる。


「ご飯食べよう」


「あっ、うん」


私は、涙を拭ってご飯を食べる。


「今日、行こうとしてた?」


「あっ、うん」


「毎年、誕生日に行ってたもんね。桜の木」


「気づいてたの?」


「うん」


私は、静樹が作った卵焼きを口に入れた。


ほんのり出汁がきいてる卵焼きは、食べるだけでホッとした。


あの場所で起きた事件の事を静樹に話したのは、一緒に住み始めてすぐの事だった。


「ごちそうさまでした。」


私は、食器を下げに行く。


175センチの大人の男が、忽然と姿を消すことなんて有り得ないと静樹は、私に言ってくれた。


「気になる?」


ソファーの前に、膝を抱えて座る私に静樹は声をかけた。


私は、黙って頷いた。


静樹は、ココアを持ってきた。


「どうぞ、冷ましてあるから」


ぬるめのココアだった。


「ありがとう」


「どういたしまして」


静樹は、TVをパチンとつけてくれた。


私は、ココアを持ちながらそれを食い入るように見ていた。


「えー。今、犯人が供述しました。20年前の事件にも関与していると言う事です」


私は、その言葉にドボトボとココアをパジャマに(こぼ)していた。


「なっこ、大丈夫?ぬるくしててよかったわ」


静樹は、タオルをキッチンからとってきて拭いてくれる。


「20年前の被害者は、今どちらにいるのでしょうか?」


「これから、さらに詳しく取り調べが始まるそうです。」


「今の段階で、被害者の生死はわからないと言うことでしょうか?」


「はい、そうですね。」



TVがCMに切り替わった。


漫画みたいに、ガタガタと手を震わせてTVを消した。


「静樹」


ココアを拭いてくれる静樹を抱き締めた。


「なっこ、大丈夫?」


「怖い」


身体中が、ガタガタと震えている。


20年前の今日、彼が行方不明であるとNEWSが告げた。


出血量からして、亡くなっている可能性があると言った。


その10年後、彼の弟が生きているとTVで捜索してもらっていた。


そして、今、犯人が逮捕をされた。


「なっこ、まだわからないじゃない」


私は、気づかないフリをしていた現実に突き落とされるのが怖かった。


静樹は、背中を擦りながら言ってくれる。


「死んでるに決まってるじゃない」


その言葉に、静樹が泣いてる。


「どうして、静樹が泣くの?」


「だって、死んでるに決まってるなんて…。そんな悲しい言葉をなっこから聞きたくなかった。」


「ごめんね」


私は、静樹に謝った。


「真実がわかるまで、憶測で話すのはやめましょう」


「わかった」


「ほら、服を着替えて。出掛けましょう?今日は、なっこの誕生日なのよ」


「そうだね」


10年後のサプライズは、彼じゃなくて別の人達がしてくる。



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