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第7話「到着」


あれから、馬車に揺られること半日ほど。

やけに大きな夕日が沈みかける頃、ようやく街が見えてきた。

道の先に明らかな人工物。門と、城壁。

俺はワクワクしすぎて、さっきから御者席のロズさんの隣に座っていた。

「ここがナーグル国の入り口、国境の街『ナギ』だ」

イガルさんがホロから顔をのぞかせる。

街。異世界の街だ。どんな街並みなんだろう。

エルフとかいるのかしら。ドワーフが武器作っているのかしら。ギルドとかあるのかしら。

異世界あるある妄想が止まらない。

「一応国境だから、入るには手形が必要なんだ。君もわしらの用心棒ということにするから、すまんが馬車に入っていてくれ」

「はーい」

イガルさんに声をかけられ、馬車の中に戻る。

「アンタそわそわしすぎじゃない?」

馬車の中ではリンちゃんがあきれた顔をしている。

「だって異世界の街だぜ。初めての街!」

「異世界ねぇ……」

「エルフとか、ドワーフとか、ギルドとか、ある?」

「ないわ」

ないんかい。

「嘘よ」

あるんかい。どっちなんだ。

「いるにはいるけど、エルフもドワーフもほとんど人間の街なんかにはいないわよ」

そうなんだ……異世界のくせにつまらんな。

「大体、それぞれの種族で町があるから」

「エルフの町……」

行ってみたいもんだ、美人のエルフがいっぱいいる町……。

ドワーフの町は絶対、最強の武器を作っているに違いない。

「あと、ギルドね」

ギルド!冒険者といえばギルドですよね。

「アンタいくら牙を売ったっていっても、金貨20枚じゃ1ヶ月ももたないわよ。替えの服だって無いんでしょ?」

「ないですね。居合道着ならありますが」

「だから、街に入ったらさっそくギルドに冒険者登録しに行くわよ」

「冒険者登録!さすが異世界」

………で、システムの説明をお願いしまーす。



―――ギルドとは。

全国ネットワークの冒険者支援協会。大きな街にはたいてい支部があるらしい。

公共や住民からの依頼と、冒険者の労働力をつなぐ機構。

冒険者はギルド登録することで、依頼を受けて報酬を得ることができる。

冒険者にはランクがあり、銀一つ星からスタート。

例外はあるそうだが、100件の依頼を達成し、成功率80%以上で昇級。

銀三つ星の上は金一つ星で、最高ランクは金三つ星だそうだ。


「ま、金星に上がるためには面接とか顕著な功績が必要だから、あんまりなれる人はいないけどね」

そういうリンちゃんはすでに銀二つ星らしい。若いのにすごいな、と素直に感心した。

冒険者の証、銀星のネックレスをチラリと見せてくれた。


「門に着いたぞー」

ロズさんが声をかけ、馬車が止まった。

イガルさんが馬車から降り、槍を持った門兵と話す。

俺はホロから顔を出して辺りの様子を眺めた。

城壁は4、5メートルくらいだろうか。なかなか頑丈そうだ。

門も鉄製の、重厚なつくりだ。まあ、魔獣が外をうろついていることを考えたら、当然か。

イガルさんは縦開きの巻物のようなものを見せて談笑している。通行手形なんだろう。

朗らかな雰囲気だ。いきなり「怪しいやつめ!」と牢屋にぶち込まれる展開にはならなそうで良かった。

あっさり、門が開いた。


「…………おお」

目が輝いてきた。街だよ。街。この世界に来て初めての街。

門からまっすぐ続くメインストリートは、馬車がすれ違いできるほど広く、石畳で舗装されている。

両サイドには二階建てや三階建ての洋風な、石の土台と木造の家屋が並ぶ。

中世ヨーロッパ?のような街並みだ(中世ヨーロッパをよく知らんが、他に例えが浮かばん)。

馬車はしばらく大通りを進み、2、3回角を曲がったところで停車場に止まった。

「ここが、しばらく滞在する宿だよ」

イガルさんに促されて馬車を降りてみると、3階建ての大きめな建物が目に入った。

各階の窓の数から見ると、全部で10部屋くらいだろうか。

「なかなか良さそうな宿ね」

続けて降りてきたリンちゃんが言う。

「ここは飯も美味いし、宿賃も安い。長居するにはもってこいの宿だよ」

さすがイガルさん、ベテランの商人の風格です。頼りになる。


―――それから。

俺たちは手荷物を持ってチェックインに向かう。

馬車は停車場、馬は隣の馬小屋へ。宿の裏は柵に囲まれた小さな放牧場になっているらしい。

なるほど、馬が主な移動手段だとそういう設備が整っているのか。

玄関を入ると、ロビーと受付のカウンターがあった。現実でもよくある、普通の宿の構造だ。

イガルさんが手早く交渉を済ませ、部屋のカギを受け取る。

1階は食堂と浴室などで、2階と3階が客室のようだ。

受け取った201号室のカギを開け、無事に部屋の中へ。

ツインのベッドルーム。10畳くらいだろうか。なかなか広い。

俺は部屋の隅に荷物を置いて、どっかりとソファにくつろいだ。

目の前の恐ろしい現実から目を背けるためだ。


「ふぅーーー」

わざとらしくリラックスを表現する俺をよそに、

部屋の入口では顔を真っ赤にして拳を震わせたリンちゃんが立っている。


「なんでアンタと同じ部屋なのよ!!」







部屋単位の料金なのはラ○ホシステム?

普通のビジホみたいに同じ部屋でも一人と二人でそれぞれお金を取られるのはちょっとおかしいですよね。

アメニティを考えたら大した加算にはならないはずなのに。

ちなみに○ブホは一人でも泊まれるところもあります。

普通のビジホより機能充実していて案外楽しいもんです。

……二人で行くのが正しい使い方ですが。

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