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第68話「商談」


「……で、加工したい魔石ってのは、どれだ?」

バリオンが先程までとはまるで別人のようなキリっとした顔で聞く。

俺がシェリィに無言で合図すると、シェリィは腰に提げた道具袋から4つの魔石を取り出す。

「……っ、これは!」

バリオンの目の色が変わる。

そりゃそうだろう、見る人が見れば分かるはずだ。

世界最大級の魔石が、4つ。

しかも天然の、国宝級の代物だ。

「あんたら、これをどこで!?」

「話せば長くなりますが、まあホワイトロックで見つけました」

いろいろはしょったが、経緯を説明した。

バリオンの顔がますます険しくなる。


「で、シェリィは一から杖を製作してほしい。俺たちは、手持ちの武器にこの魔石を埋め込んでもらいたいんです」

「なるほど、これは失敗できない依頼だな……」

改めて、バリオンは腕を組んで考え込んでしまった。

「お父さん、本当に大丈夫なの?無理しないで……」

ティファナが不安そうに横の父を見る。

「ティファナよ、心配するな。ドワーフのアルガスはな、超一流の鍛冶職人じゃ。そのアルガスに認められておるおぬしの父は、下手な仕事などせんよ。やる気さえ出せばな」

シェリィはティファナを励ましつつ、最後の一言でさらにバリオンを煽った。

このババア容赦ねえ。

「なんの、これでもアルガス師からは細工の技巧じゃ工房一と褒められたんだ。任せてくれたらきっちり仕上げる!」


そうして、俺たちはどこにどのような細工で魔石を加工するか、バリオンと相談を重ねた。

俺とリンちゃん、ルナはそれぞれの武器が刀、剣なので、鍔を加工して埋め込むことになった。

俺のでんでん丸の鍔は時代物のお気に入りだったので穴は開けたくないと言ったら、元々開いている穴に合わせて魔石を削り出してくれることになった。

リンちゃんも双剣なため、利き手の方の剣に付ける。


問題は、シェリィの杖だ。

「この魔石でメテオの杖レベルの杖を製作するというのなら、材料もこだわりたいよな」

バリオンがシェリィに問う。

「もちろんそうじゃが……あれと同じレベルの材料を集めるのは難儀だと思うぞ」

「メテオの杖って、どんな材料を使ってたの?」

ティファナも話に混ざって聞く。

「確か、の軸は世界樹の枝じゃな。あれが一番魔法の伝導率が良いのよ。縁金具にはデザートタイガーの牙を使っておった気がするぞ。あとは、魔石の周りの金属はミスリルの加工品じゃ。当時の技術の粋を極めた杖を作ったのでな」

出た!世界樹!ミスリル!異世界の定番ワードが飛び出しました。

「あんた随分メテオの杖に詳しいな?まるで作った時に立ち会ったみたいだ」

「立ち会ったも何もわしが指定したんじゃよ。ありゃわしの杖じゃ」

「「!?」」

さっきシェリィがロリババアなことを話したときも目をまん丸くさせていたこの父娘が、また固まった。

「本当にとんでもない連中だな……」

「はあっ、すごい人たちと知り合いになっちゃったみたいね」

2人は大きくため息をついた。

話が進まないので俺が喋る。

「で、今回はどういう材料で作ろうと考えてるんだ?」

それにシェリィも続く。

「うむ、さすがに世界樹の枝やミスリルはその辺には流通しておらんからな。この辺りで得られるもので作るしかないと思うぞ」

「まあ、普通の材料かねぇ。うちの店でもそれなりに良質のものは使っているが、さすがにミスリルは……」

ちなみにミスリルはこの大陸では採取することができない輸入物の超レアメタルだそうだ。

隣接する大陸の統一王国が全ての権利を持っているらしい。

「オルザの王様とか、持ってないかしらね」

リンちゃんがまた突拍子もないことを言い出した。

「持ってるかもしれんけど、こんだけの魔石をもらっといてさらにレアメタル寄越せとか言ったら図々しすぎねえか」

「そこはアンタの交渉術でしょ」

「じゃあ、手紙でも書いてみるか……」



―――そして。

俺たちはまずそれぞれの剣の採寸を済ませ、加工のために魔石をバリオンに預けて宿へと戻った。

ティファナからは、父のやる気を出させてくれたことをものすごく感謝された。

自分も張り切って手伝う、とのことだった。

武器まで預けてしまうと困るので、魔石の加工が終わった後に再度店を訪れ、埋め込みは一日のうちにやってしまうそうだ。

魔石の加工が終わったら連絡が来るということで、一週間程度待機することになった。

ちなみに費用は、魔石の加工&武器への埋め込みが金貨50枚×3。

杖の製作が金貨50枚(材料費を除く)。

コルナ救援の褒賞金がきれいに消えて、杖の材料費分がマイナスになる。

まだ貯えはあるが、最近サボり気味だったギルドの依頼でも少し稼がなければ……。



宿に戻った俺は、オルザ国王にダメもとで「ミスリルとか世界樹の枝とかあったら欲しいな!テヘッ★」的な文面を、これでもかというくらいにへりくだった文章で慎重に作成するのだった。

(もちろん、誤字脱字はみんなにチェックしてもらった)

リンちゃんからは「自分を卑下する具合と相手を敬う度合いのバランスがすごい」という評価をいただいた。

ルナも、「どうやったらこんな絶妙な文章が書けるのですか?」と感心していた。


社畜時代の上司部下に配慮する空気読みまくり能力が発動したのです、はい。





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