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第33話「武器」


その日はそのままシェリィの館で一泊し、俺たちは翌朝アライアの街に戻った。

久しぶりに街に出たいとか言ってきたシェリィも一緒に馬車に連れて。

まずはギルドに寄り、シェリィの依頼達成を報告し、報酬をもらう。

というよりシェリィ本人が報告していた。

ギルドにこの子供のナリで入る姿は、さすがに目立っていた。

受付嬢やギルドの職員はもちろん面識があるみたいだったが。

ついでにガーラントの人相確認もできたということで、懸賞金も手に入れることができた。

合計、金貨120枚。120万円か。大金だ。

とりあえず、みんなで甘いものでも食べよう。


「おぬしら、これからどこへ行くのじゃ?うまいなコレ」

シェリィがチーズケーキを頬張りながら聞く。

「いや、ちょっとドワーフの村とやらに行ってみようかと。ほんとだ美味い」

俺もチーズケーキをつまみながら答える。

「アタシ新しい小手が欲しいかなー。軽くて丈夫なやつ。嗚呼、コレ幸せ」

リンちゃんはイチゴのショートケーキを口に放り込んで満面の笑顔だ。

「私は特に必要なものはないのですが……んっふー、おいしいです」

ルナはマロンケーキをすごい勢いで完食した。

……食べながらだと話が進まん。


「俺は純粋にドワーフの作る武器や防具ってのを見てみたいかな。あと、できればでんでん丸を吊る帯みたいなのが欲しいんだ。さすがにベルトにダイレクト差しは不安定で」

「ドワーフの連中は表向きは愛想がいいがな、本当に良いものは一見さんには作ってくれんぞ。観光地ではあるから出来合いを買える店はたくさんあるがの」

「なにソレ、客を選ぶなんて生意気な連中ね」

やっぱり、ドワーフと言えば職人気質。そうなのか。

「ドワーフさんは気難しいと聞きますからね。どうします?マモルさん」

「うーん、まあ、行って聞いてみるしかないんじゃない?日本刀の刀装帯なんて既製品はないだろうし」

「ふふふ……そこでわしを頼れ」

シェリィが急に威張り出したぞ。

「なんかツテでもあんの?」

リンちゃんがジュースを飲みながらそっけなく聞く。

「あるともよ!伊達に長生きしとるわけじゃないぞ。ドワーフはわしの良きチビ仲間じゃ」


……と、いうことでシェリィさんご案内の元、俺たちはドワーフの村へ向かった。



ドワーフの村はアライアの北、山の麓の川沿いにある。

刀剣の鉄を鍛えるのには大量の炭が必要だから、大抵は木々がある山中が拠点になる。

あとは、四六時中武器や防具を鍛える音がトンテンカンテン聞こえたら、近所迷惑この上ない。

どうしても人里離れたところになるわけだ。

太陽が真上を過ぎたくらいで、俺たちはドワーフの村へ到着した。


村の入口には石造りの塀と鉄門があったが、目的が買い物と言うとすんなり入ることができた。

あくまで商売の村だ。観光客は基本的にフリーパスらしい。

この世界のドワーフという種族を初めて見たが、150cmくらいのやや小柄な姿だった。

顔は茶黒く、彫りが深い。そして何より、みんな筋骨隆々だった。

これは鍛冶をしているからなのか、種族的なものなんだろうか。


「マモルこれ見よがしに関所で金星ネックレス出そうとしたでしょ。ぷぷっ、ハズカシ」

「うっせえ」

「残念だったわね、えっ金星?失礼しました~ってのを期待してたんでしょ」

「うっせぇ」

リンちゃん……武器防具を見られるって興奮でテンションおかしくなってねえか。

「このまま村の突き当りまで行くのじゃ。知り合いがおる」

シェリィの案内に従って馬車は中央の通りを進む。

両サイドには様々な武器や防具を扱った店が軒を連ねている。

シェリィの話では本当に良いものは売ってくれないというが、

大した鑑定眼も無い俺からすれば、どれもこれも立派なものに見えた。


「ここじゃ」

村の最奥に、ひと際大きい石造りの工房があった。

中では幾人ものドワーフが鍛錬中なのが見なくても分かるほど、鉄を打つ音が響いている。

「おうい」

シェリィが工房の大きな扉を開けると、5、6人のドワーフが視線を向けた。

その中でおそらく一番年長であろう、たくましいヒゲをたくわえた男。

首にかけた手ぬぐいで汗をぬぐいながらこちらへ笑顔で向かってきた。

「シェリィ!ずいぶん久しぶりじゃないか!!」

「アルガース!」

アルガスという男とシェリィが軽く抱擁をしながら、お互いの肩を叩き合う。

「久しいなアルガス、元気そうで何よりじゃ」

「さっぱり顔を見せないからついにくたばったかと思ったぜ」

そんなやりとりを後ろから見ている俺たちに、アルガスが視線を向けた。

「この連中は?」

「わしの連れじゃ。信頼できる客じゃぞ。相談に乗っておくれ」

アルガスは一通りこちらを見回した後、俺に向かって言った。

「シェリィが信頼できるっていうなら、そうなんだろうよ。よし、何でも言ってみな!」

ずいぶん信頼し合ってるんだな、この2人は。


それから、俺たちは工房の事務所のようなところへ通され、こちらの注文を聞かれた。

「この刀を提げる帯を作って欲しいんです。イメージは、革の筒で吊る感じなんですが」

「どれ、そのカタナとやらを見せてみな」

アルガスに言われるまま、俺はでんでん丸を手渡す。

ゆっくり鞘から刀身を抜き、アルガスはまじまじと見つめた。

「こりゃあ……珍しい形の剣だな」

まあ、異世界のものですからね。

見たことが無いのが当たり前だろう。



「こういう剣、むかーし注文されて打ったことがあるな」


「へ?」




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