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昔の作品

一晩の攻防

作者: Moku

眠れなくて書いたものなんで、文章にまとまりがないかもです。だらだらとしながら暇つぶしにでも読んでやってください。一言感想頂けたら恩の字。

 胸部に息苦しさを感じて目が覚めた。金縛りとは違う、何かが乗っているような重さに布団の上を腕で払ってみるとバシッと軽い衝撃が手の甲に当たる。


「ギャッ」


 軽くなった体に満足して寝返りを打つ。再び心地よい睡魔に身を任そうとしている私の背中にペチッと何かがあたった。

 ペチペチッ。今度は二回。

一体なんだろうと眉を寄せて枕に頬を押し付けてやり過ごす。

 ペチペチペチペチペチペチペチ……。

あまりのしつこさに再び寝返りを打ち、背中をペチペチッしてたらしき物体を寝ぼけ眼で睨みつける。

 部屋の中は闇に満ちているお陰でなかなかシルエットが掴み辛い。

 まぶたをこすりながら手探りで側にある自分の携帯を掴んで開けば、時間は三時を少し過ぎたところだった。画面の光に目を細めながら物体Xを照らす。

 それは小さかった。マグカップに入るサイズの小さな人形と同じくらいの大きさでベッドの端に居た。


 光沢のある黒。

 蝙蝠のように骨が浮き出ている翼、左右にチロチロと動く細いコードのようなのは尻尾。振り向いた顔は金色の目がギラギラとしたわし鼻のお爺さんだった。


「……………わー」


 可愛くない。

 ミニマムサイズなのに可愛くない。

 コレが世に言う酒のんだ時に表れて、酒を摘み食いして千鳥足で帰って行くというコルボックル(おっさんな小人)だろうか。

 いや、小人に翼があるなんて聴いたことがない。ならば妖精か。

 …………嫌だ。物凄く嫌だ。妖精がおっさんなんて許しちゃいけない暴挙だ。ティンカーベルが実はおっさんでしたなんて言われたら全ての幻想が崩れ去る。


 だから、きっとコレはあれだ。あれでしかない。あのつくアレだ。


「悪魔だ……なんて醜悪な顔」


 呆然と呟くとミニマムサイズの悪魔はニタリと嫌な笑みを浮かべた。どことなく嬉しそうだ。


「コワイカ、ニンゲン」


 うわー、喋った。

 しかも声が変音機みたいになってる。『あの、私は〜んですけど』的なモザイクが掛かりそうな女性の声。


「キョウフセヨ」


 怖い……と思った筈なのに思わず笑いかけた。キョウフセヨがアニョハセヨに聞こえたんだよ。だって親が韓流オタクだから毎日韓国語が耳に付くから。つい。


「コワイカ」

「ヤリイカ?」


 微妙に余裕が出てきたので言葉をもじって返してみると、悪魔の不思議そうに首を傾げた。

 あぁなんとなくキモカワいいように思えなくもなくなってきた。


「オビエヨ、ニンゲン」

「オボエヨ、アクマ」


 再び首を傾げる悪魔。


「キョウフセヨ」

「あー……………だめだめ!怖くないの!全然だめだよそれじゃあ!」


 同じことを繰り返し始めた悪魔に首を振って全否定。悪魔は訳が分からなそうに目を丸くして私を見つめている。


「あのね………外見が醜悪だろうと中身が怖くなきゃ慣れれば怖くないの。キミの場合は顔が怖いけど優しい人というギャップ系、顔が怖くて中身も怖いヤーサンの王道しか道は残されてないの」

「……ギャッ?」

「ギャップよ!ギャップ!ギャップ萌えなの!」


 なんか違う方のスイッチが入った。

 悪魔が理解しているのかしていないのか不明だが、ギャップについて解説しているといつのまにか夜が明けていて、いつの間にか悪魔の姿が消えていた。

 つまり独り言を永遠と語っていたことになる。


 なんという羞恥プレイ!

 なんという悪魔の所業!


 そうして、寝不足なまま一日が始まり、学校で船をこぎ、家に帰ってくると急激な眠気におそわれた。

 気持ちよく眠っていた私は再びペチペチペチと深夜に起こされた。


 ミニマム悪魔。眠かったはずの目が一瞬で覚めた。

 金色の目はかわらない。だけど決定的に違うものがある。顔がお爺さんから子供のものへと変わっていた。

 ミニマムサイズの可愛らしい子供の外見プラス翼と尻尾。無敵な可愛さだ。

 変化の衝撃に驚いたまま見つめ続けていると、クリクリとしていた金色の目が細められ、ニタリと子供には似合わないニヒルな笑みが浮かんでビビる。


「コワイカ?」


 声は昨日と同じく変声機のような声ではあるが、女性のものから男性のものにかわっていて、少なくとも子供が発するような声ではなさすぎる。


「コワイカ?」

「怖ぇよ!」


 そう心のまま突っ込むと、悪魔はニヒルな笑みをやめ、嬉しそうな顔をすると頷いた。


 気づいたら朝。やはり悪魔は居なくなっていた。

 あの姿と表情と声。

 ギャップが使われていたことに気づいたのはお昼のサンドイッチをかじっている時だった。 奇妙な二晩だった。もう無いだろう。さすがに―――。


 そう思っていた私は、ミニマム悪魔が度々意見を求めて深夜起こしにくる未来をまだ知らない。




end

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― 新着の感想 ―
[一言] 笑えなかった。たぶん、お笑い狙いなのだろう。だから、低評価。
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