妃菜と日曜デート!? では決してない③
俺たちは家を出て、モール行きのバスに乗るために、バス停に向かって歩いていた。
「ふん、ふっふ、ふん、ふっふん」
「楽しそうだな」
横で鼻歌を歌いながらスキップをしている幼児を見ながら俺はそうつぶやいた。
「だって、先輩とデートできるんですよ。楽しくないわけないじゃないですか!」
「だからデート・・・・・・もうこれはいいや」
俺としてはデートと認めたくないが(端から見たらデートだろう)それを今話題にすると、またさっきみたいなことになることは、火を見るよりも明らかなので不本意ながらデートにした。
「にしても、妃菜がこんなことで喜ぶなんて意外だな」
これは俺の本心だ。
妃菜は控えめに言って色欲(性欲)の塊だ。それは今まででの間に散々経験させられた。その頭にねじがぶっ飛んだやつが普通の恋人(俺たちは違う)がやるようなデートごとき? で喜ぶとは思っていなかった。
「どうしてですか? 私は亮祐先輩と付き合いたいんですよ。デートしたり、手をつないだり、一緒に夜景を見たり、食事したり、キスしたり、足舐めたり、下着をかぶったり、子供作ったりしたいじゃないですか」
手の指を折りながら、考えながら妃菜が言った。
俺としては驚きだ。あの妃菜でも普通のことに対して喜びを感じるんだな。普通じゃないこともちらっと聞こえたような気がするが気にしない方がいい。
「だから、私は毎日幸せなんですよ。先輩が私の作った料理を『美味しい』って言っていってくれて、『いつもありがとう』って言ってくれて、新しく掃除したところとかがあれば『今日はそこもやったんだ。すごいな』って気づいてくれて私は本当に幸せなんですよ。この世の誰よりも自分が幸せ者だて言えるくらい幸せなんですよ」
妃菜の飾り気のない、純粋無垢な笑顔が俺に向けられる。その笑顔が輝いて見えることは言うまでもないだろう。
何か照れるな。俺は妃菜に向けていた顔を真っ正面に向けた。照れ隠しだということは俺にもわかっていたが、それでも顔を背けずにはいられなかった。
いつもなら、はいはい、という感じで受け流すこともできるが、こんな似まっすぐに言われると心の中がくすぐったくなるのをおさえられない。
「今のポイント高くないですか!?」
「・・・・・・そうだな」
ポイント高いと思うぞ、それを自分で言わなければな。
それが妃菜らしいと言えば、妃菜らしいか、と思いながら俺たちはバス停に着いた。一応言っておくが、妃菜に対してドキドキはしていない。




