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出会いは突然にとよく言うが突然すぎる①

 桜の花が少しずつ花開き始める季節になった。


 小鳥のさえずりが聞こえるすがすがしい朝だ。

 新生活のスタートにはもってこいの日だろう。




「ふぁー」

 もぞもぞとベッドから起き上がり、背伸びをすると大きなあくびが出た。寝起きなので体の動きが悪かったが、そんなことをいちいち気にしていたら、人生など気になることが多すぎて疲れてしまうだろう。


 俺は寝ぼけ眼のまま洗面所に向かって歩き出した。

 眠い、眠すぎる。昨日まで春休みで昼まで寝ていたから、朝に起きるなど久しぶりだ。学校か、面倒くさいな。


 洗面所に行って、顔を洗う。給湯器のスイッチを入れ忘れてしまって、水道から出るのは水のままだった。目を覚ますには丁度いいと、わりきってしまえば造作もないことだ。


 顔をタオルで拭いて、鏡を見た。そこには、百人が百人「普通」と言うであろう顔が、頭をボサボサにした状態で俺の方を見ていた。誰だこいつは・・・・・・あっ、俺か。


 なんとも特徴のない顔だ。まぁ、強いて言うなら、やる気のなさそうな目が特徴なのだろうか。それにしても髪が長いな。そろそろ散髪にでも行くべきなのだろうか。考えておこう。






 俺の名前は嘉神(かがみ)亮祐(りょうすけ)、現役バリバリの高校二年生だ! などというどこかの主人公のような自己紹介をする気はサラサラない。顔に似てごくごく普通の男子高校生だ。もう少し言うと人付き合いはそれほどいい方ではないだろう。


 全く話さないということはない。挨拶をされればちゃんと返している、と思う。ただ、俺は平穏に過ごしたいのだが色々な理由で悪目立ちしている。






 顔を洗い終わると俺は台所に向かって歩き始めた。台所に着くと冷蔵庫から挽いた状態のコーヒー豆の入った袋を取り出す。


 マシンにコーヒーフィルターをセットしてそこに適量のコーヒー豆を入れる。すくうだけでこれだけの香りがするのは素晴らしいな、などというそれっぽい感想でも述べておこう。


 マシンのタンクに水を入れ、スイッチをオンにする。作動音のほとんどしないこのマシンは俺のお気に入りだ。


 コーヒーが入れ終わるのを待つ間に、食パンの入った袋を棚から出す。食パンをトースターにセットして電源を入れる。


 これ以外に朝食は用意しない。父親の影響で料理は多少するのだが、朝から用意するほど俺は真面目ではない。


 コーヒーができあがるのとトーストが終わるのがほとんどだった。毎日同じことをやっているからなのかもしれない。


 再び冷蔵庫の中を見るとバターがなかった。そう言えば、昨日丁度なくなったんだった。小さくため息をつき、仕方なくトーストした食パンをそのまま皿に載せ、コーヒーをコップに注いでテーブルに向かう。(リビングダイニングだ)


 テーブルにコップと皿を置いてテレビの電源を入れると、ちょうど占いをやっていた。

「今日の運勢で最も悪いのはごめんなさい、天秤座のあなたです。自分の人生を狂わせるような大きな事件がありそうです」


 なんだその大それた占いは。占いを信じる方ではないが、これだけのことを言われると少し不安になってしまう。


 俺はコーヒーをすすってトーストを一口かじった。少し焼きすぎのような気もしたが、しょうがない。食べられないほどではないし、トーストと言えば多少の失敗はつきものだ。


「ピーン、ポーン」

 そこで玄関のチャイムがなった。


 誰だ。別に友達と登校をする約束をしているわけではない。と言うよりもそんな友達はいない。いや、友達がいないのか・・・・・・いや、多少はいる。と見栄を張っておく。


 俺は訝しく思いながら重い腰を上げて玄関の方に向かった。服も髪も直していなかったが大丈夫だろう、と思った。


 外に出る用の簡単な靴を履いて玄関を開けた。まぶしい光が俺に降り注いだ。

 そう言えばカーテンを開けるのをすっかり忘れいた。




「はい。どちら様ですか?」

 急な光りの変化に目を細めながら問いかけた。




「おはようございます、先輩!学校へ行きましょう!」

 そこにはかわいい女子がいた。


 制服を着ている。しかも俺と同じ高校の制服だ。「先輩」と言ったからにはおそらく新入生なのだろう。それにしても誰だ。


 俺は見知らぬ女子が家の前にいること、しかも先輩と言っていること、さらに一緒に行こうと言っていることに戸惑った。と言うよりもこの状況で戸惑うなという方が無理があるだろう。






 あっ、もしかしてこれが占いで言っていた人生を変えるような出来事なのか・・・・・・悪寒がしてきた。

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[一言]  外に出る用の簡単な靴を履いて玄関を開けた。まぶしい光が俺に降り注いだ。  そう言えばカーテンを開けるのをすっかり忘れいた。 忘れいた→忘れていた
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