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間違って転生したら悪役令嬢?困るんですけど!  作者: 山春ゆう
第一章 〜出会ってしまえば事件は起こる〜
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81.みんなでお食事会

 12月に入り、日も暮れかける時間。以前みんなと約束をしたロレンツの料理店に向かっている。フレデリックとウォルターを迎えにルトバーン商会に来て二人を乗せた。



「奢るから来ない?って言われたから乗り気で来たけど、ドロレス様の誘いは貴族だらけになるのをすっかり忘れてた……」


「いい加減慣れろ。ウォルトが自分の食い意地に負けただけだぞ」


「そうよ、あなた達はおとなしく巻き込まれなさい」


「食い物に負けた俺って……」


 前回のバイキングが楽しかったので今日も乗り気でいたらしいウォルターは、先程馬車に乗るときに「ハッ!!もしかして今日も王子様とか来るのか!?」と急に固まってしまった。それをフレデリックと私に無理やり乗せられ、馬車の中で今に至る。



 今日は私達3人に加え、アレクサンダー、ジェイコブ、レベッカ、ニコル、エミーを誘った。オリバーには敢えて手紙を送らなかったが、アレクサンダーから「オリバーも呼びたい」と言われてしまい仕方なく許可を出し、ニコルにも伝えておいた。徹底的に守らねば……。

 これでもう店の半分近くの席を埋めてしまっため、今日は1時間半だけ貸し切りにしてもらった。ジェイコブはテレンスという護衛とその家族を呼びたいと言っていたので許可を出すと、アレクサンダーも自分の護衛を誘いたいと言い出し、結局満席になったのだ。貸し切りのお金は少し多めに渡しますよ……。ルームソックスで莫大な儲けが出たからね。


 料理店に着くと、フレデリックが先に降りた。私も降りようとすると彼は手を差し伸べてくれた。


「あ……ありがとうフレッド」


「どういたしまして」


 ニッコリと笑うフレデリックを見て、少しだけ胸が熱くなる。ちょっとドキドキする……。


「あ、フレッド!それ俺がやろうとしたのに。こないだ教師に習ったやつだろ?学園で必要になるかも、って。俺も練習したかったのに先にやるなよ」


「ちょっ……ウォルト!ドリーに誤解されんだろうが!」


 なんだよ練習台かよ!この胸のドキドキを返せバカ!


「練習じゃないからね!俺がやりたかっただけだからね!」


「はいはい」


 いつまでも手を離さないフレデリックを軽くあしらってると他のメンバーも到着していた。アレクサンダーとオリバーだけがまだか。



 少し待つと、アレクサンダーとその護衛たち、オリバーもやってくる。今日はちゃんと平民の装いで来てくれた。オーラは隠しきれてないけど。


「ニコル様、またお会いできて光栄です。本日もとても素敵な笑顔ですね。あなた様が微笑むと私も心が穏やかになります」


「どうも」


 主催の私のことなど無視し、ニコルのそばに行くと胸に片方の手を当ててびしっと挨拶をするオリバー。それを遠い目と乾いた笑顔で返事をするニコル。



 それを不思議に思うアレクサンダー。


「……オリバーはどうしたのだ?」


「どうやらニコル様に恋心を……」


 アレクサンダーが眉をひそめた。


「ほっといて行きましょう」


「あぁ。……あいつも惚れた女性がいたのか」


「え、なんですか?」


「なんでもない」


 ボソッと呟いたアレクサンダーの言葉は聞こえなかったけど、あのオリバーは私達が何を言っても聞かない気がするので放置することにした。

 マジでオリバーのキャラ変しすぎじゃない??




「ドロレス様、お久しぶりです!」


 ロレンツをはじめ、アンやサマンサが寄ってくる。


「久しぶり!バイキングも順調みたいね」


「そうなんです!あまりの盛況ぶりに営業時間をあと1時間伸ばそうかとも思ってます」


 そんなに繁盛してるんだ!嬉しいなあ。


「1人下働きの男の子を雇うことにしたんですよ。おい、こっちこい。この料理店の料理開発をしてくださってる方だぞ」


「はい!」


 ロレンツが後ろに声をかけると威勢のいい声で返事が来る。


「はじめまして、カイといいます!13歳です。よろしくお願いします」


「はじめまして。ジュベルラート公爵家長女のドロレスです。私の一つ上ね。よろしくお願いします」


 キリッとした顔立ちのカイは元気に挨拶をする。


「私の知り合いの息子なんですけど、小さい頃から料理人になるのが夢と聞いていたので声をかけたら大喜びで来てくれたよ」


 追加で人を雇えるくらい余裕が出てきたのね。男手があるのは店としても助かるよねきっと。


「さて仕上げをやるぞ」


「アン、鍋の方よろしく」


「ええわかったわ」


 ロレンツの声かけに、カイはアンを誘って向かっていくも、こっちに残るサマンサの横のダニエルが頬をを膨らませてふてくされている。


「カイがアンと一緒にいることが多いからいつもあんな感じなんですよ。歳も自分より近いし」


「ああなるほど……」


 ダニエルはアンに対して本気の好意があるのか。そりゃそうなるわ。アンと歳が近い男の子が入ったら、気が気じゃないだろうな。




 今日の貸し切り分の支払いをしようとするとサマンサに止められた。


「実は今日の料金なんですけど、カフェタイムに来た方が支払いを済ませていかれたんです。しかも多めに寄付としてくださって……手紙を預かっています。どなたですかね」


 えっ?誰?そんな知り合いいないんですけど。お父様かしら?

 小さな紙には、短い時間で書いたのか達筆の文章があった。




「………………………………は?」






『巷で噂の店にようやく妻と来れた。妻の言うとおり甘いお菓子がとても美味しくて何個も食べてしまった。今日の夜には息子も来ると聞いたのでお礼に代金は払っておこう。また会おう。バルトロ・ランド・フェルタール』







 来たの?国王来たの???えっ???さっきまでいたの???っていうかみんな気づかなかったの???国王の顔を知らないのか??オーラ消しの魔法でもあるの????



「誰でしたか?」


「あなたは知らないほうがいいわ……」


 サマンサに聞かれるも答えられない。うわー、知らないところでとんでもないお忍びがあったのね!!恐ろしい!!


「アレクサンダー殿下、本日国王陛下はどちらかに行かれてました?」


「ああ、昼前会ったときに母上と公務に行くと言っていた」


 公務じゃないでしょ。なに内緒で来てるのよ国王!バレなくてよかったわよほんと!!

 ……でも少しだけ嬉しかったのは、国王も王妃もハンコを使ってくれていた事。代金を出してくれたことよりそっちのほうに喜んでしまった。



 席についてみんなで食べはじめる。みんな喜んで食べているのを見るとやっぱり嬉しい。テレンスや、アレクサンダーの護衛たちは大盛りで思いっきり食べている。彼らはきっと普段から食事量が多いだろうから、バイキングが一番ピッタリだろう。



「これなに?」


 一緒に料理を取りに来たフレデリックに次々と聞かれる。前回にはなかった新しいメニューをいくつか作ったので気になっているようだ。


「こっちはかぼちゃコロッケ、ブロッコリーのチーズ焼きよ」


「じゃあこれとこれは俺が持っていくからドリーはこっちを入れて、席で分けて食べよう」


「そうね。私も少しずついろんなものが食べたかったのよ」


 二人で分けて持っていき、席で食べる。相変わらずロレンツたちが作る料理は美味しい。冷めても美味しいのはさすがだわ。





「ニコル様、私がお持ちいたします。怪我でもされたらーー」


「いえ結構です。お皿を持つだけで怪我などいたしません。ご自身のをお持ちください」


「いいえ、お持ちしますからご一緒に回りましょう」


「結構です!」


「ニコル様、こちらで食べましょう。オリバー様はアレクサンダー殿下のところに行ってください」


 ふと料理の方を見ると、全開の笑顔で拒否されているのにも関わらずめげないオリバーがいた。ニコルはレベッカによってなんとか逃げ切っている。……これって、なんとなくだけどレイヨン公爵がモレーナにアタックしていた馴れ初めと一緒じゃない?親子そっくりすぎて苦笑いになるわ……。




「僕も混ぜてくれ」


 取ってきた料理がそろそろなくなりかけた頃、私とフレデリックが座るテーブルにアレクサンダーがやつてきた。


「それは二人で分けて食べているのか?」


「は、はい。お互いに違うのをお皿にとって二人で食べています……」


 フレデリックが緊張しながらも答えている。

 貴族的に言えば、食事の時に1つのお皿から複数の人が取る行為はマナー違反らしい。前世でもバイキングでのシェアはあまりやらないのは基本だけど、子供同士だし居酒屋とかでは当たり前の行為だったので、こういうところではあまり気にしないで食べていた。……流石に公爵家令嬢が王族の前でやるのはまずかったかしら……。



「次は僕と取りに行こう」


「えっ?」


 突然何を言い出すかと思ったら、アレクサンダーは席を立ち、こちら側に来て私の手首を軽く掴む。


「えっ。あの」


「なにがおすすめなの?」


 よくわからないまま料理のところへ連れられていく。振り返るとフレデリックが驚くようにこちらを見ていた。この間の社交界パーティーから随分と強引なんだけど……私の誕生日会の時に言った『強引』の意味を履き違えてませんか???強引っていうより強制に近いんですけども!

 それほどまでに私を婚約者にさせる気なのこのゲームは!!私が婚約者にならないとゲームが始まらないの?!



「こちらとあちらのも珍しいですよ」


「そうか。じゃあ一緒に食べようか」


 大丈夫?いくらお忍びだとしても王族がシェアして食べるのとか抵抗あるんじゃないの?


 席に戻ると、早速私に食べるようにすすめるアレクサンダー。いやいや、流石に私が先に食べられないでしょ。


「どうした、先に食べていいぞ」


「いえ……殿下からどうぞ」


「じゃあ僕が食べますね」


「ジェ、ジェイク?いつの間に」


 お互い譲り合っているところにジェイコブがやってきて料理をパクリと口に入れた。


「わぁ、これもおいしいですね。他の料理も美味しかったです!今日は本当にありがとうございます」


「こちらこそ、喜んでもらえて良かったですわ」


「お前はいつもいつも……」


「ドロレス様、何かあったらいつでも僕に言ってくださいね。必ず味方になりますから」


「まぁ嬉しい。次期宰相のジェイコブ様に味方になってもらえたら素敵ですわ」


「任せてください!」


 ポンと胸を拳で叩くジェイコブ。なぜかそれを悔しそうに睨むアレクサンダー。


「くそ……僕も簡単に言える立場ならそう言うのに……」


「アレク様、今日は楽しく食事をしましょう」


「お前が言うか……」


「アレクサンダー殿下。時間も決まっていますから、せっかくのお忍びを楽しみましょうね」


「あぁ。ドロレス嬢が言う通りだな……」


 アレクサンダーをなだめながら残りの時間の食事を楽しんだ。








「ごちそうさまでした、美味しかったです」


 みんながロレンツたちに挨拶し、店を出る。このあとは通常営業だ、あまり話せなかったのでまた今度行かなくちゃ。


「たまに貴族の食事マナーを忘れて食べるのはとても楽ですわ」


「ええ。美味しくて行儀とか気にしないで食べてしまいました」


「ドロレス様、ごちそうさまででした」


「野菜をあんなにも食べられた自分を褒めてあげたいですわ」


 次々にみんなから感想とお礼を言われる。





「皆様、ここで重大なお知らせがあります。実は今日、私が払う前に支払いが済まされていました」


「え?」


「どういうことですか?」


「じゃあ公爵様がお支払いされたんですかね?」 


 次々と疑問を口にするメンバー。




 私は先程の手紙を、みんなの前に見えるように持つ。




「国 王 陛 下 の お ご り で す」



「「「「「…………」」」」」







 みんなが10秒ほど止まる。その後はほぼ無言で解散。特に護衛の人たちは顔を真っ青にして帰宅していった。最後の最後に爆弾落としてごめんなさいみんな。だけど……みんな私の心労の巻き添えよ……ふふふふ。

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