6.ゲームと現実
本日の授業も楽しく終わることができた。知らないことを勉強するのって楽しいな。
それよりも。
ええ、国王の死なんかよりも。
色々と勉強していくうちに気づいたよ。気づいてしまったよ。
これ、【エターナル・プロミス~選ばれし女神~】じゃん!!!!
まじで?本当に??だってゲームだよ??そんなことある???
しかも私これ、悪役令嬢じゃん!!
なんで?あのとき死んだからこうなったの???
この悪役令嬢ドロレス・ジュベルラートは、第一王子の婚約者に設定されていた。
学園に通い、卒業後に婚約者は正式に婚約式が行われる。
有力候補の数人がいたが、圧倒的にドロレスが最強だったのだ。
しかし召喚により黒髪黒目のヒロインが現れ、第一王子がそのヒロインに付きっきりになり、嫉妬したドロレスはヒロインを学園でいじめたり叩いたり。
挙げ句の果てには、自分に興味を示さない第一王子のせいで、国庫のお金を使いだす。そしてヒロインを盗賊に襲わせる手引きをするという暴挙に出る。
ハッピーエンドではその複数の悪事がバレて、卒業パーティーで婚約破棄。のちに死刑。
バッドエンドは、ヒロインの話を第一王子が信じずそのままドロレスが王妃に。その後に悪事が発覚し、今度は公開処刑になる。
おーーーーーい。うそでしょ。
確かにゲームではそうだったよ?
でもさ、そのドロレスって、今は私なんですけど。
これもしや、召喚したヒロインが第一王子ルートに入ったら無条件で死ぬじゃん!
だって、第一王子はメインヒーローだよ?宣伝ではキャラクターボイスも彼だけだったし、見た目が王道完璧美少年だもん。圧倒的人気だったよ!戦隊ものならレッド、ガールズグループならセンター、それくらい飛び抜けて人気があるんだよぉ!
これどうする?いつから私が婚約者候補に挙がるのか時期がわからない。大人しく目立たないでいればいいのか?ダメだ私公爵家だわ目立つわ。
よーーーくゲームを思い出す。
そうだ、他の攻略者は……色々書き出そう。
ペンとノートを引き出しから取り出す。
第一王子→無条件死刑。
第二王子→死なない。
近衛騎士→死なない。
宰相子息→死なない。
隠しキャラ→不明。
あれ?これ意外と簡単じゃない?だって第一王子ルートさえ逃れれば、後は死なないもん。隠しキャラはどうだかわからないけど、確率としては4分の1なわけだから、そんなに難しくないぞ!!
漫画とか小説とかだと、全員から逃れないとすぐ死亡フラグだったよね。それに比べれば私、そんなに深く考えること無かったじゃーん。
婚約者にさえならなければそもそものシナリオに進まないわけだし、公爵家だけど目立たないようにこっそりひっそり頑張って過ごす!生きる目標出来た!
考えたら楽になったなー。
今日は勉強の時間も終わったし、この家の庭でも散策してみよう。
「わぁー……綺麗」
庭師の腕がいいのだろうか、色とりどりの花が咲いている。香りも花同士がぶつからないようにきちんと区切ってあるので歩く度に違う香りで楽しませてくれる。
その花の中を迷路のような道で進むと奥にガゼボがあった。
「お嬢様、ティータイムにいたしますか?」
メイドのリリーがお茶とお菓子を持ってくる。
「ありがとう」
私がそういうと、リリーは一瞬ビクッとするもののスッと顔を戻し給仕を続ける。
うん、そりゃそうだよね。何かしらにつけて怒鳴り散らしてた少女が急に感謝を言葉にしたら何事?!ってなるよね。
「私が雷に打たれた日って何月何日?」
単純に聞いたのではなく、日付などが日本と同じような月日で表すのかを確認したかった。
「帝国歴638年7月12日でございます。お嬢様が雷に打たれてからちょうど1週間になりました」
ほうほう。まさしくご都合主義。まあそうよね、だって作者が日本人だもの。日本人がいちばん分かりやすい年月日の表現方法になるよね。
「当時って大雨が降っていたの?」
「いいえ。雲行きは確かに暗く重い様子でしたが、あの大きな雷の前も後も雨は降っておりません」
「そうなのね」
雨が降らないけど雷だけはなっていたのか。珍しいよねたぶん。
「その雷によって、あのワガママだったお嬢様がまっすぐな道を歩き始めたかと思うと、私、とても感慨深いです……」
リリーよ。それ本人に言っちゃダメなやつ。確かに今までがワガママのは理解できるからなー。リリーがどれだけ苦労していたのかは表情と態度でわかったもんね。
そして今日は直接耳で理解いたしました……。
「お嬢様担当になったとメイド長から初めて聞いたときには、周りのメイドたちから『可哀想』『あのお嬢様の担当になるくらいなら辞めるわ』と口々に言われ、それでも私は『お嬢様は聡明な方です。そしていずれは国をも揺るがす美女になります!今は子供ですから、のちに素晴らしいお方になったらみなさん後悔しますよ?!』と常々言い返しました。それが!ついに!お嬢様があの雷によって変わられたんです!1度も聞いたことのない感謝の言葉!1度も呼ばれたことのない私のようなものの名前を!そしてついに聡明な美女になるための勉強を─────」
「リリー、もう充分です」
おぉ。圧倒的ドロレス信者だったのか。なおさら今までの傍若無人な態度が申し訳なくなってきたよ。私はやってないけどね。ドロレスだけどね!
「そういえば3日後に孤児院訪問があるみたいだけど、……私、行くの初めてよね?どういうところなの?」
「おっお嬢様が孤児院にまで興味を!感慨深いです。ゴホン。お嬢様は今まで駄々をこねており訪問はされていなかったのですが、この公爵領の中に教会があり、そこに併設されて孤児院があるのです。両親が亡くなり身寄りのない子や、置き去りにされていた子など理由は様々です。孤児院は数年前まで別のところにありましたが、院長が寄付されたお金を私用に使い、子供たちが貧しい思いをしていました。ブチキレた旦那様が教会の横に孤児院を作り、教会管轄のもと、公爵家で運営しているのです」
お父様がブチキレたって言葉しか印象に残らなかったんだけど。
「訪問の時にいつも何をしているの?」
「お菓子を配ったり、本を読みきかせしております」
どうしよう、とても楽しそう。めちゃくちゃ楽しそう!
私が幼稚園の先生だったこと、ここで活かせるんじゃないの?!子供たちと遊ぶのはとても楽しいし、今まで遊んだことない遊びとかあるよねきっと。教えてもいいのかな?ワクワクしてきた。
「お嬢様は今回も不参加とお伺いしておりますが」
「えっ?!行くわ!絶対に行く!お父様にお願いするわ!」
「かしこまりました。本日は夕方にはお帰りになられますので、夕食の時にでもお伝えしてみてはいかがでしょうか?」
夕食の時間までワクワクそわそわが止まらず、時が流れるのが長く感じた。楽しいことを待つって、こんなにも落ち着かないのね!なにをしよう?道具を使うものは時間が無さすぎるから無理だとしても、鬼ごっこもいいし、あっちむいてホイも遊んでくれるかな?
逸る気持ちを落ち着かせ、夕食の時にお父様に孤児院訪問のことを伝えると、お父様の右手からナイフが落ちた。
ちなみにお母様は左手からフォークが落ちた。
お兄様は飲んでいた水を吹き出した。