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間違って転生したら悪役令嬢?困るんですけど!  作者: 山春ゆう
第一章 〜出会ってしまえば事件は起こる〜
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37.意思の確認をしておくべき

「あら、私だけですか?」




 今日は誕生日会。その前にどうしても話したくて早めの時間をレベッカに伝えていた。


「えぇ、ごめんなさい。でも二人でお話ししたかったんです」


「……クリストファー殿下のことですわね」


「お察しがよろしいようで」


 そう。レベッカのクリストファーに対する本気度が知りたかった。

 ゲームの中ではスチルも名前も登場しない。クリストファーの話にちょろっと出てくる程度のキャラクターだった。だからゲームの中のレベッカの本当の気持ちを知らない。

 でも目の前にいるのは生身の人間。


 正直な話、私的にはヒロインがアレクサンダールート以外に進んでほしいわけで、クリストファールートを塞いでしまえば一人分の道が減ってしまう。そうなるとアレクサンダールートの可能性が1/4から1/3になり、確率が上がるのだ。

 もちろん国庫のお金に手をつけるつもりもないし虐めるつもりもない。ただ、シナリオ補正が入ったときが心配なのよ。何もやってなくても疑われてしまう可能性はなくもない。


 彼女が本気でクリストファーに惚れているのならば、私がこっそりと応援しようと思ったのだ。もちろん、前世でありそうな結婚相談所の全戦全勝自信家仲介オバチャンのようなグイグイ押せ押せはしないよ。さりげないサポートね。


 私が転生してる時点ですでに歯車が狂ってるわけだし、もしかしたら全てが良い方向に進むかもしれない。そんな淡い期待をしている。





「メイドも下がらせたし、私しかいないわ。失礼とか不敬とか、そういうのを一切なしで話したいの。もちろん他言無用で」


 レベッカは黙ったままだ。目だけは私と合わせている。



「クリストファー殿下のどこを好きになったの?」


「……フワッといたウェーブのかかる白金のような御髪に、煌めく明るい澄んだ翡翠のような瞳、そして兄をとても慕い敬う様子や、好奇心旺盛なところ、トランプのときの人を見る洞察力、上目遣いをされたときの破壊力、あとは───」


「わかったもういいわレベッカ様落ち着いて」


 予想以上に惚れてるぞこりゃ。真面目な顔して私から視線を外さず早口で教えてくれた。


 その惚れ方が間違った方向じゃなければ問題ないからね。あのギルバートの横にいた令嬢のように。



 そしてこれが本題。


「クリストファー殿下とはどうなりたい?」


「出来れば、婚姻を結びたいと思っていますわ」


「それは、【王子】だから?アレクサンダー殿下を堕として王妃になれる可能性があるから?クリストファー殿下が平民だとしても?」


「……ドロレス様、無礼をお許しください。あなた様の発言は非常に不愉快ですわ」


 おっと、危ない。こんなところで仲違いする予定じゃないのよ。


「ごめんなさいレベッカ様。そういうつもりじゃないの。クリストファー殿下は立場的に、可能性は少ないですけど一応次期国王候補でもあるわけで。来月のお披露目パーティーで初めて顔を見る令嬢たちはきっと【王子様だから地位も完璧で名誉になり、見目麗しく、アレクサンダーとも繋ぎを持てるし、王妃の可能性もある優良物件】だと思っているわ」


「まぁ!そんなの失礼極まりないわ!ドロレス様、見損ないましたわよ!」


「いや違うっ!私じゃないわ!私もニコル様と同じ『王族になんてなりたくない派』ですわよ!……まぁそんな令嬢もいるでしょうし、レベッカ様には【王子の彼】が好きなのか、【彼自身】が好きなのか聞きたかったのです。私はあなたを応援したいのよ。本当に申し訳なかったわ」


「……いえ。そういうことでしたら大丈夫ですわ。ちなみに後者です。彼が借金を背負って平民になるなら、私も働いて一緒に返していきますわ」


 言い終わってからレベッカの顔がポッと赤くなった。



 そっか。それなら安心した。無いとは思ってたけど、立場ではなく彼自身を好きになったってことね。ならば応援する!決めた!



「ねぇ、前に勉強を増やしたって言ってたじゃない?もしクリストファー殿下と婚姻を結ぶなら、学園前にはほとんどの勉強を完璧にするべきだと思うわ」


「なぜですか?勉強をするために学園に行くのですよ?」


「もちろんそうよ。でもよく考えて。家格的には婚約者に選ばれる可能性はあるけど、どのタイミングで婚約者になるかわからないじゃない?王妃ではなくても王族になるわけよ。もし学園が始まってから婚約者になれたとして、そこから勉強するのと、学園に入る前に勉強してプライベートでクリストファー殿下とお茶をする時間を作って親しくなる時間を作るのと、あなたはどっちがいいと思う?」


「断然後者ですわ!そうね……言われてみれば納得できます」



「さらに!クリストファー殿下は年下だから、レベッカ様が卒業した後も1年間は学園に通うのです。同級生には令嬢がたくさんいますわ。何処の馬の骨かも知らない令嬢と親しくならないよう、学園にいる間に絶対的なお互いの信頼を勝ち取るしかないのですわよ!」


「そ、そうですわね!ドロレス様に言われるまで、そこまでの考えには至りませんでしたわっ!さすがドロレス様!私、一生ついて行きますわ!!」


 席を立ち、私の方に来て私の手をガシッと握るレベッカ。愛が強い。凄まじい勢いで手を握りながらぶんぶんと上下に振っている。本気がダダ漏れすぎてちょっと怖い。

 でも彼女はきっと努力を惜しまないタイプの人間だから、きっと上手くやるだろう。ヒロインが来るまでになんとしても二人の関係を構築させ、クリストファールートに入らないことを願おう。

 クリストファーの心がヒロインへ移行するきっかけも私は知っている。だけどそこまで伝えてしまっては彼女のためにならないから、最後の切り札として残しておこう。


 ……あれ?私結局、仲介オバチャンになってない??





「本日はアレクサンダー殿下が参加されるので、もしかしたらクリストファー殿下も来るかもしれません。まず最初の課題は、扇子で口元を隠さないことですわ」


「ええっ?!あれは私の仮面なのです……あれがないと顔から蒸気が溢れ出てしまいますのよ……」


「あら、じゃああなたが顔を見せないうちに、扇子もなにも持たないニコニコ顔で殿下に近寄る可愛らしい令嬢がいてもよろしいのですか?」


「よろしくないです!がっ頑張りますわよ……」


「これからはさりげなーくサポートするのよ。アプローチではなくサポート。食べ物を取ってあげるとか、一番最初に声をかけてあげるとか。でも媚を売るような仕草はダメ。さりげなーく、でもあなたが一番優先ですよ、くらいのね!」


「わ、わかりましたわ。ドロレス様はもうお母様やお父様並の歳のようですわ。そんなにも詳しく教えてくださって……」


「あ、……よくお母様から聞いていたのですよほほほほ。内緒ですわよ?みんなが知ったらみんながやってしまって効果がなくなりますから」


 危ない。前世の少女漫画や小説、恋愛指南本で読んだ知識がここにして暴走してしまったわ。実際うちのお父様とお母様も前世の私と同世代だもの。




 いやしかし、ツンデレベッカは本当にかわいい。これにクリストファーも気づいてほしいな。笑うとめちゃくちゃかわいいのよレベッカは。



 これでレベッカは頑張ってクリストファーを振り向かせようと努力はするだろう。

 二人ならきっとお似合いだろうな。年上女房の夫婦。クリストファーがレベッカに甘えて、それをしょうがないなぁなんて言いながら受け入れるレベッカ。あぁ素敵。恋愛漫画みたいな展開だわ!頼むよレベッカ!





 そんなこんなで盛り上がっていたらあっという間に誕生日会の時間になった。



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