3.そして目覚めた朝
「え」
「お目覚めですか?!お嬢様!!?」
部屋の端にいたメイド服のような女性がこちらへ駆け寄る。メイド服のような、というかメイド服だわ。
てゆーか!お嬢様!?どこに?そんな人この部屋にいた?!
……いや、私の目を見て言ってる。
私はいつからこんな対応してもらえるようになったのかな?ここはとんでもない金持ちしか入れない病院とか?
「只今旦那様をお呼びいますのでお待ちください!!」
「あっ、えっ、ちょ……え……!」
バタン!
答えるのもままならないうちにそのメイドは走って部屋を出ていった。
旦那様って。私結婚してないから旦那様なんていないんだけど。人違いなのでは……どうしよう。戸惑いがどんどん増してゆく。
そしてゆっくり起き上がる。
気づく。
私小さくない?!?!
え、こんなに手は小さかったっけ?ベッドも足より先がだいぶ余ってるよ?!どーゆーこと?!
「ドロレス!!!目が覚めたのか!!!」
「ドリーちゃん!!」
私と同じ年程の、見た目が超絶美しい男女がこちらへ走って来た。絵画かな。目を閉じたくなるくらい美しい顔面の男性が私のことを抱きしめる。
えぇーーーーーーー見知らぬイケメンに抱き締められてるんですけども!!!!
「お……とうさ、ま」
あれ?口が勝手に。でもこの人、知ってる。
いや、私は知らないけど今は理解できる。この人私のお父さんか。
隣にいるのが。
「お母様……」
「ドリーちゃん!!!あぁもうよかったわぁぁーー!全然目覚めないから心配で心配で夜も眠れなかったのよーーー!」
泣きじゃくりながらその場で崩れ落ちるお母様。泣いてる姿も美しいな。
あ、なんか頭と体がこの状況に馴染んできた。
「起きたの?大丈夫?」
お母様の後ろにいる男の子はお兄様だ。
「3日も寝ていたのよ!全く起きなかったんだもの!ごはんも食べさせてあげることができなかったんだから!!」
「私は、……何が起こったの?」
というかこれって前に読んでた小説によく出てくる、【転生】的なやつなのでは……。状況があまりにも違いすぎるし、どう考えてもこんな私のような一般人に壮大なドッキリなんて仕掛けないでしょ。
「うちの庭を散歩していたのは覚えてる?古くからある大木の根元でつまづいて、怒って蹴った時にとんでもない大きな雷がその木に落ちてそのままドロレスにも雷の被害があって、気を失ったんだよ」
なにそれ!!!!根元でつまづいたからって木を蹴るのも残念すぎるし、そのタイミングで雷に感電するって悪運持ちすぎ。雷が落ちれば下手すると死んでたかもしれないのに。
「幸い、顔に傷はないわよ。本当によかった。ドリーちゃんの可愛い顔に傷なんてついたら、家を売ってでも凄腕医者を呼んで治してもらおうと思っていたわ」
はっ!!
「お母様!鏡!鏡はありますか?!」
メイドの一人が手鏡を持ってくる。
心臓がうるさいくらい動く。
お父様とお母様、お兄様に聞こえそう……。
裏返しになっている鏡をゆっくりと回す。
「………っつ!??!?!」
声を出さなかった私を誉めてほしい。
別人になってるんだけど!!しかも可愛い。
はちみつ色のゆるふわウェーブがかかった腰近くまである髪に、ちょっと濃いめのピンク色した大きな目。少しつり目になってるものの、この顔を可愛いと言わない人は左手の指の本数に収まるくらいだろう。
これこそまさに、誰もが憧れるお人形のような顔立ちだった。なんか自分で言ってて少し引くけど、これは自分の顔なのかよくわかっていない状態なんだから、こういう感想が出てしまうのを許してほしい。