表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
間違って転生したら悪役令嬢?困るんですけど!  作者: 山春ゆう
第一章 〜出会ってしまえば事件は起こる〜
28/242

26.木を隠すなら森の中でひっそりと

いつも読んでいただきありがとうございます。評価が増えたり、ブックマークが増えるとめちゃくちゃ喜んでいます。皆様のおかげです!

 レベッカは大爆弾を落として帰っていった。


 お茶会はお開きになり、今私は自分の部屋で一人、ソファーに座っている。




「まさかレベッカが……クリストファーに一目惚れなんて」


 クリストファーがお茶会に登場してから、レベッカはずっと扇子で口元を隠していた。お菓子もお茶もほとんど口につけていなかったのだ。でも表情に照れや動揺は全くなく、むしろいつもの無表情に増して能面をつけたような状態だった。


 あれが一目惚れしたときの表情なの?!




 クリストファーが帰ったあとすぐ倒れたときには大丈夫かと体調を心配したけど、まさかあれが一目惚れのせいだったなんて。よく我慢していたわね、レベッカ。


「そういえばクリストファーに婚約者なんていたっけ?」


 転生したからすでに5ヶ月経っている。私の記憶も、細かいことが忘れかけているようだ。


うーん、思い出せ思い出せクリストファーのルートを。









 ─────『僕はね、国王になんてなりたくないんだ。兄上の方が相応しい。なのに僕の派閥は僕を推すし、僕に近づいてくる女性は、次期国王の座を僕にしてほしい派閥の者か、兄上の婚約者や側妃にしてほしいっていう魂胆なんだ。僕の婚約者も内定はしているけど、ほとんど会っていない。会っても無表情でさ、きっとどちらかの理由だから僕になんて興味はないんだ。


 でも、あなたは違った。あなたは、僕の目を見て、僕だけを一番に考えてくれた。初めてだったんだ。あなたのことを……誰にも渡したくない、あなたと共に歩みたいって』





 ─────────────






 いた!!

 内定だけど婚約者いたーー!!

 これどう考えてもレベッカじゃん!王子を前にして無表情な女の子、レベッカしかいないってば!


 うわぁこんなところに別フラグが……これじゃ、私は死なないにしてもヒロインがクリストファールートに入ったらレベッカはどうなっちゃうのよ?!

 レベッカのスチルは出ていなかったから、そこまで重要視されてないだろうしその後の話なんて設定してないと思うけど……ほぼ婚約破棄のようなものだから、レベッカが次に婚約するの難しくなるじゃん。


 どうしようどうしよう。ヒロインの邪魔はしたくないけど……結婚は家に任せると言ったレベッカの恋を……応援したい。こんなんじゃ、他のところに嫁いでもクリストファーのことが忘れられないじゃん!





 ………これはひとまず置いておこう。もう少しすればレベッカも落ち着くかもしれないし、一目惚れじゃないかもしれない。今の段階で深く関わるのはやめよう。









 数日後。

 家庭教師の授業が終わり、部屋でくつろいでいると、ドアをノックする音が聞こえる。


「お嬢様、今月の第一王子誕生祭のドレスが仕上がったそうです」


 リリーが部屋に入ってきた。そうだ、今月はアレクサンダーの誕生祭兼お披露目パーティーがあるんだった。


 8歳になるアレクサンダーのお披露目をかねた誕生祭。社交界デビューをしていない10歳未満の子供たちはついていくだけでいいし、名乗らなくても大丈夫だ。国王とアレクサンダーに最初に挨拶し、他の貴族たちの歓談やアレクサンダーの挨拶回り、食事が主である。ダンスの時間もあるが、ほとんどが大人たちだ。子供たちは親と共に行動をするのが普通である。



 そして、これが転生後初のパーティーなのよ。日本人だってこんなパーティーやる人なんて少ないのに。8歳の姿で、私はドレスを着るのだ。まさかこんな小さいうちにアニメのようなドレスを着るとは思わなかったわ……。


 ドレスの試着をする。

 誕生祭はなるべく目立ちたくない。自分でいうのもあれだけど、キツめの顔だけどとても美人な顔立ちなのよ。

 この顔で真っ赤とか着ちゃうと【ザ・悪役令嬢感】がめちゃくちゃ増す。

 かといって地味な色にしても逆に目立つし、周りの歳近い女の子たちがプリプリのかわいい色にしてくると思うので、それと同じ系統の服にして埋もれる作戦です。木を隠すなら森の中だ。



「おぉ……ドロレス、とても素敵だよ。お人形みたいだ」


「ドリーちゃん、今までの真っ赤のドレスも似合っていたけど、ピンクのドレスもとても素敵だわ……淡い色が似合うなんて、もう立派なレディーよ!」


 鏡を見る。わぁ、とっても素敵。この顔にも似合うドレス。


 今回お願いしたのはとてもシンプルなものだった。

 オフショルダーのデザインは胸元から肩にかかる部分を白に、胸元から下は桜色。模様を入れずにAラインで足元に続く裾の先に、銀糸で軽くボタニカル柄を入れただけのものだ。

 これで、フレッドからもらったパレッタも合うわ。オーダーメイドって素敵、最高。



「今までとは違うデザインをご所望とのことでお伺いしたときは驚きましたが、こんなにも美しいお嬢様が会場にいたら、男の子たちはメロメロですな。このようなシンプルなドレスはなかなかないですよ」


 確かに今までのドレスとはまっっった違うけどね。転生するまではコテコテのゴリゴリのお姫様みたいなドレスだったわよね。ゴスロリよりも凄かったわよ。


「とてもかわいいけど、これを着てるところを他の男共に見せたくない。このまま誰かに惚れられて連れ去られたら私はどうすればいいのだろう……」


 お父様が頭を抱えて唸っている。お父様大丈夫よ!私まだ8歳だから!そして誘拐は犯罪だから!



 そして今回のパーティーで、貴族のみんなに今年の召喚の儀で使われた魔石が配られるらしい。さわれないから【魔力制御】の力が必要なわけだけど、触ったら死ぬとかそういうわけではないらしい。なので、運ぶときは国王が直接向かうことがほとんどだが、一応道具を使って間接的に触れて動かしたりすることはできるそう。一体魔石とはなんなのだろうか。不思議なものよね。


 魔石を砕いたり形を整えたりする作業をする人はめっちゃ防具装備を着けながら作業していると聞いた。王族が制御をかけたあとは、手袋などをして直接触るのを回避しているらしく、それにさらに制御をかけた石留をつけて、やっと問題なく素肌で触れることができる。この作業をする人は大変だ。


 そして形のいいものを優先的に貴族へ渡す。だから平民には形の悪いものが行くが、それでも売ればお金になり、それを貴族が買い上げてアクセサリーなどにすることにより、経済と商会が潤っていくのである。







 パーティーまではお父様も忙しくしており、私もお茶会など開催してる余裕はないので、勉強に励む。強制お茶会だってギリギリだったんだよ?あんな忙しいのに開催するの大変だったんだから。

 勉強ばかりやっでる時点でゲームのドロレスではなくなっていることはつっこまないでね。


 しばらく勉強漬けの日々が続き、パーティーまであとわずかのある日。




「お嬢様、ルトバーン商会が本日お越しいただいてますがフレデリック様には会われますか?」


 アレクサンダーのプレゼントの取り寄せの関係で、ルトバーン商会の会長と、フレデリックがついてきていた。別部屋で話しているそうだが、商会長とお父様が「ドロレスと遊ぶか?」と言ってくれたらしく、リリーに伝わり私のところに話が来た。


「フレッドが来てるのね、行くわ」



 商談の部屋とは別の部屋を用意してもらい、フレデリックが待つ部屋へと向かった。


「あっ、ドリー!久しぶり!……です」

「ふふ、今更なにを敬語使ってるの?私しかいないから」


 公爵家の中にいるので一応貴族対応をしたのだろう。でも第一声からもう抜けていたので語尾だけ敬語でも意味がない。




「王宮からのトランプの購入があってさ、すげーんだよ!国王様と二人の王子様の分をやっと作って送ったばかりなのに、こないだ追加で王妃様側妃様王女様のために各1個ずつ注文が入ったんだ!」


 まっまじか。そんなにトランプを持っていても、遊ぶときは1個しか使わないのよ……王族の方々は知ってるのかしら?さすが、お金持ちは違うわ。一人1個なのね。


「それぞれの瞳と髪の色を使って、好きな花のデザインを模様にと希望があってさ、みんな徹夜で高速で仕上げたよ。ありゃ参ったなほんと。お陰でだいぶ儲かったけど。他の貴族からも少し注文が入ってるよ」


「……ねぇ、もしかしたら、12月の王子お披露目会が終わったら急激に忙しくなるかもしれないわよ……なんとなくだけど。覚悟しておいた方がいいわ……」


 嫌な予感がする。念のために覚えておいて、とフレデリックに釘を刺しておいた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ