23.出会いというものは突然にやってくる
「それでは。メレンゲクッキーとカラメルソースかけのプリンの試食会を始めます」
なんか会議みたいになっちゃったけどまぁいいか。
ロレンツ料理長、お父様、お兄様、私は椅子に座り、料理担当のメイド達は立ったままだがキッチン台のところに自分のプリンとメレンゲクッキーを置いている。
「まずはプリンから。今回は黄身のみ。そして、カラメルソースというものをかけています。砂糖を煮詰めており、少し苦味がありますが、だからこそプリンと相性がよくなるはずです」
私が説明をしているものの、早く食べさせろと血縁二人の訴える目に負け、スプーンで食べ始める。
「おぉ、前回のも充分に美味しかったが、黄身だけにしたらもっと濃厚になるのですね」
「この甘いプリンに、気づかないようなほどの苦味がマッチして更なる美味しさを味わわせてくれるな」
「おいしい。もっと食べたい」
「お兄様。今日は試食会ですから1人1個ですわ」
お兄様がふてくされて口を尖らせるも、顔からは美味しかったと言わんばかりに幸せオーラが吹き出している。この家の男たちはスイーツ男子なのだろうか。
キッチン台の方では、メイド達がキラキラの笑顔でプリンを頬張る。こういう笑顔って見てると癒されるよね。
「では続いて、メレンゲクッキーです。砂糖と卵白のみを使って焼いたものです」
「普通のクッキーよりも小さいな。……っ!食感が不思議だ!サクッとしたと思ったら、その後にフワッとするぞ!これは仕事の合間につまむのに最適なサイズだ。ブラックコーヒーとも合いそう」
「クッキーというから普通のクッキーと同じ感じになると思ってましたが、それはまたいい。確かに、ちょこちょこ空腹を満たすのにはいいですね」
「これ、小さくてすぐ口にポイポイ入れちゃうと思うんですけど気を付けてください。当たり前ですが食べる分だけ砂糖を摂取するので、太りますよ」
お父様とお兄様がピタッと手を止める。親子だな。1人10個は用意していたが、二人ともあと2個しかない。メレンゲクッキーに伸ばしかけた手を飲み物のコップに向けた。
「どちらも最高だったよ。ロレンツ、別途お金あげるからメレンゲクッキーは常時用意しといてくれ」
「かしこまりました。一気に何個も焼けるので、大量にストックしておきましょう。そして私たちにも食べる許可をください」
「よし許そう!なのでよろしく」
「ぼっ!僕も!毎日5個までにするのでください!」
こうして、我が家の定番お菓子にメレンゲクッキーが加わった。
さてさて。国王の半強制的なお茶会開催要請に応えるべく、いつものメンツで集まった。エミーだけは、子爵領の視察の付き添いで既に子爵邸を離れており、どうしても間に合わないということで、レベッカ、ニコル、ジェイコブの3人に来てもらい、お兄様にも参加してもらうことにした。
「みんな、急なお茶会でごめんなさいね。国王様からの【お披露目パーティー前に茶会を開いてアレクサンダーを参加させろ】という手紙をいただきましたの。殿下はまた遊びたいということでしたので、私だけでは人数的に足りなくて……。来てくれてありがとう。その代わりちゃんと新しいお菓子を作りましたわ」
「いえいえ、いつもドロレス様にはお世話になってますので」
「そうですわ。その新しいお菓子でチャラということにしましょ」
本当にみんなありがとう、このメンバーで良かったわ。王子が来てもキャアキャアしないところが好感度抜群なのよ。
少し会話をしていると、外には王宮の馬車が止まった。コッソリにしたいのかしたくないのかわからない。お忍びなら王宮の馬車で堂々と来ないでほしいわほんと。
先に来ていたメンバーは外に向かい、馬車の前でアレクサンダーが出てくるのを待つ。
馬車が開く。
「お待ちしておりました。ようこそジュベルラート公爵邸へ」
「茶会を開き、また僕を招いてくれて感謝する」
招いていません。あなたのお父様からの強制開催だっての。
「それではどうぞこちらへ」
立たせて会話をするのもあれなので、道を案内する。だがアレクサンダーはまだ動かない。
「今日はもう1人連れてきた。僕が行くと聞いて、どうしても一緒に行きたいと駄々をこねてしまったんだ。参加の許可が父上から降りず、部屋から出なくなってしまったので、仕方なく連れてきた。おい、出てこい」
……嫌な予感しかない。こんな唐突に現れるとか、不意打ちもいいところよ?私だって心の準備があるのよ。できれば王家関係とは避けておきたいとずっと思ってた。でも、アレクサンダーが私のお茶会に参加してくるってことは、いずれこういうこともあるんだともっと心構えをしっかりしておくべきだった。
馬車の入り口の両側に近衛騎士がつく。そこから降りてきたふわふわくるくるの髪の毛を揺らし、緑の真ん丸の瞳をした男の子。
「僕の弟、クリストファー第二王子だ」
きたーーー!3人目の攻略対象!
第二王子、クリストファー・ランド・フェルタール。
私よりも1個下の彼は、その甘いマスクで女の子達をメロメロにする。いや、大人もメロメロの生粋の人たらし。
物心つく前からアレクサンダーとずっと比べられ、劣ると言われ続けた。実際はそんなことはなく、成績も優秀だし人を見る目はとても優れている。アレクサンダーに近づこうとするやつらにはその甘いマスクで男も女もメロメロにし、本性をさらけ出させ、不要な人間は切り捨てる。
本当はアレクサンダーのことを尊敬しており、自らが王ではなく、兄のそばで支えていきたいと願っている誠実な人間だ。ヒロインがその真意に気づくことによって、クリストファーはヒロインを心の支えにする。
ってゆーか可愛い。スチルでも充分弟属性を発揮していたけど、実物見るととんでもない可愛さ!たまらん。お茶会の時に凝視しないように気を付けなきゃ。
「初めまして。クリストファー・ランド・フェルタールです。今日はよろしくお願いします」
潤んだ瞳と目が合った。
かっ、かわ……………
落ち着け、自分。




