表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
間違って転生したら悪役令嬢?困るんですけど!  作者: 山春ゆう
第一章 〜出会ってしまえば事件は起こる〜
22/242

20.みんなでわいわい、のほほんお茶会

 暑さを通りすぎ、風が冷たくなってきた10月も終わる頃。




「お久しぶりです、ドロレス様。本日は僕のワガママなお誘いをお受けいただき、ありがとうございます」


「こちらこそ。そちらの家ではなにかと不都合があると思いますから、我が家でお茶をすることは大歓迎ですわ」



 マクラート公爵家次男、ジェイコブである。日々のギルバートからのストレスを発散しに我が家へ来たのだ。


「私もお誘いいただき光栄です」


「今日は思いっきりお話ししましょうね!」


 さすがにジェイコブとの二人でのお茶会は変な噂が立つ可能性もあるため、前回の誕生日会で仲良くなれそうなメンバーを集めた。


 サンドバル侯爵家、レベッカ。

 ケルツェッタ伯爵家、ニコル。

 ブラントレー子爵家、エミー。


 そして、男の子1人だと居心地悪いかと思って、フレデリックも呼んだ。このメンバーは平民だからといって見下さない。ちゃんと下の者を大事にする貴族だ。



 ちなみに誕生日会でレベッカとはほとんど話せなかった。クールビューティーな彼女は全然笑わないので、素なのか、誕生日会がつまらないのかわからなかった。

 それでももっと話してみようと思っていると、食べ終わったプリンのシャンパングラスを片手に、新しく出されたプリンを凝視していた。

「おかわりしても大丈夫ですよ」と声をかけたらみるみる顔が真っ赤になり「あっ!そんなにはレディーはっ!食べませんのよ…でもドロレス様が、どうしてもとおっしゃるなら?えぇ、どうしても食べてほしいのでしたら食べますわっ……美味しい…」としどろもどろにツンデレを大爆発してきたので、あぁこれは可愛い……仲良くしたいと思ったのだ。


 ちなみにニコルは昔からこのツンデレを知っているらしい。

 他の人が見ると私の次に悪役令嬢らしい風貌だけど、こんな可愛いツンデレをみんなに広めたい。でも秘密にもしておきたい。



「フレデリックくん、僕はお兄様に色々とやられてるせいで友達がいなくてね……、そんな僕でもよければこれからも仲良くしてくれるかな?」


「あっ!いえ!いや、あの、違う、えっとこちらこそ!ふつつか者ですがよろしくお願いします」


 フレデリックが緊張して何を言ってるのかわからなくなっている。こないだせっかく勉強した貴族マナーはどこ行ったの?!すっかり抜けてしまっている。ふつつか者ですが……って、プロポーズの返事かっ!



「最近お兄様は外に出ることが多くなりました。そのお陰で僕は少しだけですが自分の時間を取ることが出来て、ホッとしています」


「そうなのですね。お時間が出来ただけでも心休まると思いますわ」


「えぇ。……僕はこのままお兄様が宰相になるのは正直無理だと思っています。そして、なってほしくないと思っています。ですので、僕は彼が何かやらかさないかと密かに行動をチェックをつけることにしたんです」


 え。何を始めたの……。

 ジェイコブの決意は固く、今まで見たことのないような眼差しを向けてくる。そしてめちゃくちゃ楽しそうだ。


「僕の家の者をつけさせているんですが、まぁ顔が知られているので一日中ついていることはできません。誰と会ったかくらいはチェックするようにしました。殆どが女の子と会っています」


「まぁ……あのような方でも女性に慕われるのですね。私は死んでも嫌ですわ」


 弟がいる前でギルバートをバッサリ切るニコル。毒を吐きつつも顔は笑っている。


「はは……。本性を知ってる人はそうなりますよね。ただ知らない人は【次期宰相で公爵家、見目の良さ】を持った男なら優良物件ですよ。貴族の結婚なんてそんなものでしょう」


 貴族社会の結婚はほとんど家と家との政略結婚だ。そんな中でギルバートのような優良物件が転がっていたら、誰しもが食いつくだろう。性格を知らなければ。


「貴族って大変ですね。やっぱり恋愛結婚って無いんですか?」


 フレデリックは自分の知らない世界の話を聞いて、素直な疑問を問いかける。


「確かに家同士の政略結婚がほとんどですわ。でもうちの祖父母は恋愛結婚でしたの。私の家は子爵ですが、お婆様が公爵家の人間なんです。当時は王族に嫁がせようとしていたらしく、格下の子爵に嫁ぐなんてと相当揉めたそうです。でもそのお陰で祖父母は私の両親の結婚にもとても寛容でしたわ。お母様は平民出身ですのよ」


「えっ、平民でも貴族と結婚できるんですか?」


 エミーの話にフレデリックが驚いて声を上げる。


「簡単ではないでしょうけどね。うちはそこまで大きな貴族ではなかったですし、なんとかなったのかもしれません。お母様はうちの特産の紙工場で働いておりましたの。視察で向かったお父様が一目惚れして、何度もプロポーズしていたそうですわ」


「まぁ、素敵な話ですわね」


 読み書きをほとんど勉強しない平民が貴族と結婚することはそんな簡単ではない。やることが全く違う。日本人で例えるなら、英語が全く話せない書けない人が、英語圏でいきなり書類仕事を任されるのと同じだ。エミーのお母様の努力は相当なものだっただろう。



「出来るなら私も恋愛結婚がしたいですわぁ」


「私は家のためになるなら、ある程度は諦めております」


 夢を見るニコルと、現実を受け入れてるレベッカ。対照的な二人だが、だからこそ仲良くなったのだろう。


「あ、そういえばこの間宰相様にチョコレートをいただいたんですけど、とても美味しかったのでうちでもお取り寄せしましたの。それで砕いてクッキーに混ぜた【チョコチップクッキー】と、溶かしたものをかけた【チョコかけクッキー】をご用意しました。ぜひお食べください」


 隣国にしか存在しないチョコレートはとても美味しかった。お茶会ではクッキーが主流だけど、王道のクッキーしかない。味の変化もなにもないのだ。

 すっごい高いチョコレートだったので砕いたり溶かして食べるのさえもったいなかった。でも、たまにはちょっと違うクッキー食べたいじゃん?私チートじゃないから開発できないのよ。ちなみに試作したときにはもうメンバーであるかのようにお父様が立ち会い、出来たクッキーの半分を持っていかれた。お父様、娘より先に奪うのやめてください。


「チョコレートを溶かすなんて、もったいないと思っちゃいますわ。いただきます……まぁ美味しい!サクッとしたクッキーを噛む度にチョコレートの甘味がとろけてとても合いますわ」


「本当ですね、これなら紅茶はお砂糖無しでも充分ですわ」


 確かに。甘いものを食べてたら、飲み物は少し渋いくらいがちょうどいいわよね。レベッカ、もう大人の味覚だわ。今度は紅茶クッキーでも作ろうかな。



「ドロレス様。僕、トランプやりたいです!」


 初めて会った時の、ギルバートに怯えていた彼とは思えないくらい可愛らしい笑顔で自分の発言が出来るようになったジェイコブ。


 とても穏やかなお茶会。なんて平和な世界だろう。この時間だけは、嫌なことも将来のことも忘れて楽しめている。


「今は邪魔な人たちもいないですしね。おほほ」


 ニコルよ、【人()()】って言ったわね?ギルバートの後に参加したあの方のことも含めたわね??……聞かなかったことにしよう。


「それなら、【神経衰弱】やりませんか?皆さんまだやってないですよね?俺が教えますよ!」


 フレデリックが立ち上がった。このメンバーは平民の彼にも優しく接してくれるため、フレデリックも緊張が取れてきたみたいだ。このままきっといろんな遊びを教えて、商売に繋げようとしている。策士め、なかなかやるわね。




 こうして初挑戦の【神経衰弱】もわいわいと楽しく遊んだ。さすがの将来頭脳派攻略対象者、ジェイコブ。この【神経衰弱】の上手い攻め方を早速見つけて圧倒的勝利を勝ち取っていた。





「あっ!もうこんな時間。僕はこのあと王宮で手伝いがあるので、そろそろ帰ります」


「ほんとですわ、時間がたつのが早いですわね。ではお開きにましょう。ジェイコブ様、この間宰相様からチョコレートを教えてもらったお礼ですのでよろしければクッキーを持ち帰りになりますか?本日大量に作りましたのよ。皆様もよろしければお包みいたしますわ」


「いいんですかー?!ありがとうございます!いっぱい持っていきます!お兄様に見つからないように食べます!」


 キラキラした薄黄色の目と明るい笑顔でお礼を言うジェイコブ。絶対にギルバートに見つからないでね!頑張って!


「私も両親のお土産に持ち帰りたいです」


「わ、私はチョコチップクッキーだけでいいですわ。……その分多めに入れてくださいまし」


 出た、ツンデレベッカ。かわいい。可愛い顔のツンデレ最高だわ。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ