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間違って転生したら悪役令嬢?困るんですけど!  作者: 山春ゆう
第三章 〜ゲームスタート〜
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146.猿芝居

 ユリエはそう叫んだあとに周りを見渡し、他の生徒の視線がこちらに向いたのを確認すると尻もちをついた。


「何をするんですかドロレス様!突き飛ばすなんて酷いですわ!私はただお話がしたかっただけなのに!」



 わざとらしく大声で叫び出すユリエ。私は頭を押さえる。だから彼女と関わるのは面倒なんだよ……。



「バカかよ」

「そうなのよ」


 私とウォルターがヒソヒソと話しているのを見て苛立ったのか、また突っかかってくる。


「痛い!怪我したわ。ドロレス様が突き飛ばしたから手を怪我した!人に怪我をさせるなんて公爵家の身分でありながら酷いわ!」



 座り込むユリエと、それを見下ろすように立つ私とウォルター。ユリエのことを知らなければ、確実に私のほうが悪い構図である。ザワザワと周りも騒ぎ出す。


 まずいな、この状況は確実に悪者にされかねないぞ??だって私、悪役令嬢だもの。



「どうしました?」



 そこには歴史のアイザック先生がいた。三十代半ばの男性。優しそうな顔でユリエの手をとった。


「アイザック先生!ドロレス様が私のことを突き飛ばしたんです」


「それは本当か?!本当なら学園の規則違反になるぞ。本当にそんなことをしたのなら、ドロレス嬢は停学処分になる」


 その言葉を聞いたユリエの目が光り、笑顔になった。それは……私は大丈夫だろうか……。


「そうなんです!ひどいですよね?早く罰してください!」


「そうだね、ドロレス嬢が本当にやっていたのならドロレス嬢が停学、ユリエ嬢が虚偽の申告したらユリエ嬢が停学だよ。どちらかしか真実はないけど大丈夫かい?」


「えっ?え、えぇ……大丈夫です!目撃者もたくさんいましたから!」


「では別室で聞きましょうか。他の先生には、目撃していた生徒に話を聞きましょう」


「はい!」




 はぁあぁぁぁぁぁあーーーー。せっかく生徒会が休みなのに!それなら生徒会で忙しいほうがマシだったわ!!

 私はウォルターを睨む。私の視線に気づいた彼は、気まずそうに反対の方へと視線を向けた。


「……なんかおごるからさ」


「私のほうがお金持ってるっての」


「確かに」


 何も得のない会話をしながら私達3人のアイザック先生は空いている教室に入る。



「さて。双方の話を聞きましょうか」


 私とウォルター、ユリエの三人はそれぞれの言い分を話す。だけど当然ながら2対1の構図になった。


「ドロレス様は罰を受けたくないから嘘をついていて、ウォルターは逆らえないからドロレス様と同じ意見なんですぅー。ウォルターは何も悪くないのです。悪いのはこの人だけです」


 私を指差して堂々と宣言する。よくもまあ嘘を自信満々に言えるなぁ。一周回って尊敬するわ。

 すると教室のドアが開いた。


「ああ、ありがとう」


 他の先生から数枚の書類を受け取ったアイザック先生はそれを一通り読むと、ニッコリと笑って1枚の上に何かを書き、再びその先生に渡した。


「さて。悪い人は見つかりましたよ」


「ドロレス様ですよね?!」


 そう言ったユリエのほうに振り向くアイザック先生。そしてこう告げた。



「ユリエ・ボドワン男爵令嬢。下位貴族の者が高位貴族に汚名を着せようとした罰で停学2か月」


「えっ?!なんで?あんなに目撃者がいたじゃない!」


 信じられないといった顔でユリエは先生に詰め寄る。だけど涼しい顔をした先生は続ける。



「叫んで、周りを見てから尻もちをつくのは流石に無理があるよ?やるならもう少しわかりにくくすることだね。とにかく明日から停学だ。わかったか?」


「そんな!私は何もしていません!」


 この状況でも認めないユリエ。訴えかける目が必死である。だけど私は何もしてないんだから。この子は本当に何をしたいのかがわからない。私を陥れたいの?


「先生、知ってますよね?!私は【治癒の力を持つ女神】なんですよ?!私がそんな処分を受けたら国王が黙ってないですよ!そんな処分、絶対おかしいです!」


「何を言っている。君は男爵令嬢だ。そんな特別扱いできない」


「じゃあ私、国王に行ってきます!」


 バッと立ち上がると、そのまま教室を出ていった。

 でも、会えないと思うんだよなー。そんな簡単に会える存在じゃないこと、知ってるのかな?

 私は先生の方へと顔を向ける。笑ったまま、私に声をかけてきた。



「あ、大丈夫ですよ。僕、最初から見てましたから」


「えっ?……そうなんですか」


「なら最初から言ってほしかったよな」


 ウォルターの言うとおりである。あんなに大勢の前で一芝居打つようなことをしなくても良かったじゃないか。



「ちなみに僕は国王直々の命でここにいます。ユリエ嬢の行動監視のためです」


 この先生がそうだったの?!全然そんな雰囲気なかったのに!



「君が、ウォルター……ですね?」


 アイザック先生はウォルターのことをジッと見る。もしかしたら国王から話を聞いているのかもしれない。

 ウォルターは見られていたことに眉をひそめる。


「なんですか?」


「いえ。ドロレス嬢とご一緒でしたが、仲がよろしいのですか?普段から一緒にいるんですか?」


 先生は何を聞いてるの?もしかして私がウォルターと恋仲とかそんなことを思ってるんじゃないでしょうね?!


「仲がいいってゆーか、この人のおかげで色々と人生を楽しむことが出来てるって感じですね。俺、孤児院出身なので、あのままそこにいたら視野の狭い人間になってたなって思うんですよ。だけどそれを無理やりこじ開けてきたのがドロレス様だったわけです」


「ウォルト、そんなことを思ってくれていたのね……私感動しちゃう」


 ねぇ、そんなふうに思ってくれていたの?泣いちゃうよ?私、号泣しちゃうよ??


「なるほどなるほど。では恋愛感情などはないのですね」


「ドロレス様を好きなるのは、もの好きな人だと思います」


「言い方……」


 一応アレクサンダーから愛してるとは言われたのよ私。つまり、アレクサンダーのことをもの好きだと言いたいのね……。



「話は充分にわかりました。ありがとうございます。本当にユリエ嬢が王宮に行ってないことを祈ります」


 そう言ってアイザック先生は部屋を出ていった。

 少したってから、ウォルターはコソッと話す。


「あの先生は俺のこと王子だって知ってんのか?」


「もしかしたらそうかもしれない。でもあなたからは絶対に言っちゃだめよ?『私は知ってるから』とかなんとか言って近づいてくる人がいても知らないふりするのよ?」


「わかってるよ」


 私達も部屋を出る。するとアレクサンダーと出くわす。


「まだ学園にいらっしゃったんですね」


「あぁ。……ウォルターもいたのか」


「……はい」



 なんか……なんか気まずい!!


 アレクサンダーはきっと心の中で『この人が兄で第一王子か……』とか思ってるだろうし、ウォルターは『本当に王子が俺の弟なのか?』とか考えてそう!めっちゃ見つめ合ってる。美しい顔同士が真顔で見つめ合ってる!!

 よく考えれば、雰囲気は一緒だな。ウォルターの言葉遣いさえ直せばアレクサンダーと兄弟と言っても違和感がないだろう。


 一向にどちらとも動かないため、私はアレクサンダーに声をかける。


「ユリエ様が停学処分になりました。2ヶ月です」


「なに?」


 先程あったことを説明し、王宮に向かってる可能性があることを伝える。驚くアレクサンダー。


「そんなことをしても国王に会えるわけないだろ。わからないのかユリエ嬢は」


「それがわかっているなら王宮には行きませんから」


 彼はその言葉でハッとし、ため息をつく。



「じゃあ王宮に行きましょう。ウォルター、また今度ね」


「あぁ。またな」


「また、会おう」


 アレクサンダーもウォルターに声をかける。


「あ、……はい」


 なんとも微妙な空気感である。本来なら【魔力制御】を持つウォルターのほうがアレクサンダーより王位継承権も立場も上になるんだから。アレクサンダーも気が気でないはずだ。ウォルターはどうするんだろう。

 王子って、複雑……。


 私とアレクサンダーは王宮へと向かう。隣にあるので歩いても良かったけど、ユリエに捕まりそうだったのでアレクサンダーに却下され、馬車になった。



「うわ、いた……」



 予想通り、門番とやり合うユリエがいる。


「どうするんだ?」


「そもそも何をしたいんでしょうね?アレク様、ちょっと覗いて聞いてみてくださいよ」


「待て!なんで僕なんだ?!」


「さっきのことがあるのに、私の話なんて聞くわけないじゃないですか。アレク様なら彼女は抵抗なく話しますよ?」


 嫌がるアレクサンダーをなんとか説得し、馬車の窓から声をかけさせた。婚約解消宣言しておきながら、王子をこき使おうとしてごめんなさい。



「……何をしている?」


 その声に、門番の前にいたユリエの顔がパアッと明るくなる。

 ちなみに馬車の中は、アレクサンダーの『ユリエと話したくない』という黒いオーラで充満していた。思わずシッシッと手で払う。


「聞いてくださいアレクサンダー様。私、何もしてないのに停学になったんです。だから国王に停学を取り消すように言いたいんですけど全然入れてくれなくて」


「連絡もなしに会えるわけ無いだろ、バカ娘」


「え?なんですかアレクサンダー様」


「いやなんでもない」



 いや聞こえてます。

 小さく呟いたのでしょうが、はっきりバカ娘って聞こえてます。



「陛下に会うのなら手順を踏め。そうでなければ入れない」


「え、どうすればいいんですか?!ま、待ってくださいアレクサンダー様」


 叫ぶ彼女を置いて私達は馬車を走らせ王宮内に入った。





 あれ?私そういえば、ここに来る用事なかったわ。帰ろ。


「待て。茶でも飲んでいけ」


「ですが私は特に用もないので……」


「君は一応婚約者だ。お茶を飲むくらい問題ないだろう」



 ハァ。イエスじゃないなら馬車を動かさないぞ!と言わんばかりに立ち塞がる彼を見て、こりゃ断れないなと諦める。そしてエスコートされて私達は王宮内へと入った。





 話すことなくない?


 部屋に通されてお茶一口飲んで自分を落ち着かせる。さて何を話せばいいのだろうか。


「そうだ。ルトバーン商会でタングラムという木の遊び道具売ってるだろ。あれ、王宮の来客のときに好評なんだ。いつもは待たせないようにとこちらが気を使うが、待ち時間にハマって遊んでる客が多くて。部屋に行くと皆、やりかけのタングラムがテーブルの端に置いてある。ルトバーン商会で帰りに注文してる人いるんじゃないのか?」


「あ!だから最近口座にまとまった金額があったんだ」


 ライエルの学費を出して、魔石を買って、結構減ったと思っていた残高が何故か増えていたのだ。そういうことか。だって目の前のタングラムパズルのケース縁には色とりどりの宝石がびっちりと入ってるもん。きっと同じように宝石を埋めて買った人が多いだろう。商会長の高笑いが頭に浮かぶ……。



 コンコンコン。


「アレク様、こちらにいらっしゃいますか?」


 この声はジェイコブだ。


「どうしたジェイク」


「失礼します。どうしたじゃないですよ。仕事あるんですから。あ、ドロレス様いらしてたんですね」


 その中性的な美しい顔でニコリと微笑まれる。



「何でこの部屋まで来たんだ」


「そりゃあ少々予定を変更しようと思いまして」


 そう言って彼は後ろを振り向いた。


 そこにはユリエが満面の笑みで入ってきた。




 な ん で だ!!!




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