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間違って転生したら悪役令嬢?困るんですけど!  作者: 山春ゆう
第一章 〜出会ってしまえば事件は起こる〜
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16.呼んでいない迷惑な客

 いよいよお茶会当日である。


「マナーや所作は元から身についているし、当日来る人達の名前も一通り覚えたわ。あとは楽しく過ごすだけよ……」


 ただの誕生日会ではない。前世では体験すらしたことのない貴族のパーティーだ。一つ一つの動作に家の品位がかかっている。失敗すれば、ジュベルラートの評判を落としかねない。

 今回は立食パーティーにした。もちろんテーブルと椅子も用意してあるが、2時間近く座っていなきゃいけない私自身が耐えられないのだ。

 そして食べ物はバイキング形式にもなっている。自分で持ってきてもいいし、連れてきたメイドに取りに行かせてもいい。気軽に移動して食べてほしいのだ。




「緊張しているかい?」


「ええ、お父様。でも大丈夫ですわ。私も公爵家の娘。お父様に恥をかかせないよう成功させて見せます」


「ドロレス……本当に人が変わったみたいに素敵なレディーに育ち始めたな」


 ええ、中身がまるごと入れ替わりました。雷のせいと言うべきか、雷のおかげでと言うべきか。




「ほら、そろそろ集まるぞ」


「はい!お父様」



 ぞろぞろと人が集まってくる。今日は私と同じ歳もしくは前後1歳しか離れていない貴族令嬢と令息が来る予定だ。それと、今日まで必死にマナーの勉強をしていたルトバーン商会のフレデリック。

 立食にすれば、食事の時のマナーの悪目立ちが少なくなるだろうという思惑もあった。



「本日はお招きいただきありがとうございます。サンドバル侯爵家長女、レベッカと申します」


 上に兄がいる。深い緑色の瞳は少し細い。ブラウンのストレートな髪を真ん中で分け、胸元までのびるさらさらな髪が揺れ、クールビューティーのような美しさをこの歳で醸し出す。同じ歳だ。


「本日はお会いできて光栄ですわ。ケルツェッタ伯爵家長女、ニコルでございます」


 こちらは兄が二人。柔らかみのあるベビーピンクの髪は丸みを帯びて肩下までの長さでふわふわしている。少し垂れた目の中にある薄いブラウンの瞳は大きく潤んでおり、私が男ならこの場で一目惚れしてしまいほうな微笑みを浮かべている。こちらも同じ歳。



「お誕生日おめ───」


「マクラート公爵家長男のギルバートだ。弟だけでは頼りないからな。兄である俺も来させてもらった」



 挨拶をしている令嬢の前に入り込み、上から目線の挨拶をしてくる。

 マクラート公爵ってことは、現在宰相を勤めている公爵家の長男ってことか。私は次男を呼んだんだけど。何でこの人しゃしゃり出てきたの?てゆーかあなたのこと呼んでないんですけど。

 そのうるさい長男ギルバートの横で、申し訳なさそうにお辞儀をしている男の子がいる。


「……お誕生日おめでとうございます。マクラート公爵家次男、ジェイコブでございます。本日はお招きいただきありがとうございます。申し訳ありません、ご迷惑にならないようにいたします……」


 段々と声が小さくなっていく。きっとギルバートが普段から何かしらやらかしているのだろう。そしてそれの尻拭いをさせられるのがジェイコブってことか。



 っていうか!ジェイコブって!!攻略対象!!!!

 なんで私招待状作成の時気付かなかったのよ!はっきり【ジェイコブ・マクラート】って見たのに!顔見るまで気づかなかった!

 このストレートな銀髪。そして常に不安や迷いがあるように揺れている薄い黄色の目。髪の毛は眉毛が隠れるまでのばしている。今はオカッパのような可愛らしい髪型だが、これがゲーム開始時にはイケメンに成長してサラサラな髪をなびかせて歩くのだ。


 ゲーム内では学園生活から始まるのでもう少し大きくなってからになるんだけど、とてもおとなしい静かなキャラだった。ある出来事により頭脳派戦略人間になり、ヒロインが自然と彼のことを好きになるように裏で手を回していた。もちろん犯罪はしてないよ。ヒロインだけのための手回し。


 そうその出来事が、兄であるギルバートの窃盗事件だ。

 魔石を何回か盗むという悪事を働かせ、次期宰相としての立場を失い、次男であるジェイコブにその座が渡される。

 その事件が、学園始まってからヒロインとの協力によって発覚するのだ。

 その時点でギルバートは卒業しており当主の勉強をしていたため、大きな出来事となった。





 そんな問題児が今、うちにいる。

 呼んでないのに。あぁ迷惑。


「ジェイコブ、グズグズするな。あっちで食べるぞ」


「はい、お兄様……」


 ギルバートがジェイコブをひきずるように連れて離れていく。


「お父様、人数が増えるなら先にお伝えください」


「いや……私も聞いていない。おそらくあの長男が勝手に判断したのだろう。たぶん親にも言っていないと思うぞ」


 なんて男だ。ギルバートのせいでマクラート公爵の品位が下がってしまいそうだわ。




「ドリー……じゃなかったドロレス様。お誕生日おめでとうございます。ルトバーン商会長男、フレデリックです」


「ありがとうフレッド。あなたもよくここまでマスターしたわね」


 イライラした気持ちがフワッと消えていくかのような明るい声だ。フレデリックが来てくれた。緊張した動作で挨拶をするものの、習いたての頃よりも堂々とした態度で挨拶をしている。


「あと、ジュベルラート公爵様、公爵夫人様、あの……ドロレス様を産んでくださりありがとうございます。ドロレス様と友達になれたこと、とても光栄です」


「まぁ!なんて素敵な言葉なの!」


 お母様が涙ぐむ。こんな言葉かけられたら、私も泣いちゃうよ!産んでくれてありがとうって、言いたくても照れてなかなか言えない。なんという8歳児だ。


「フレデリックくんは今日までよく頑張った。家庭教師も誉めてくれたよ。今日はわが公爵家と仲良くしている家ばかりだ。美味しいものもたくさん用意したから楽しんでいってね」


「はい!」


 フレデリックが元気な声で返事をする。本当に忠犬のような男の子だな。




 一通り挨拶を終え、誕生日会が始まる。

 たくさんの焼き菓子がある中で早速私はみんなにプリンをおすすめする。


「まぁ、口の中で溶けますわ。こんな食べ物初めてです!」


「周りのフルーツも見てくださいまし!こちらは星形になってますのよ」


 ロレンツ料理長は高みを目指す宣言をした後、果物を星やハート型に切るというスゴ技を身に付けた。彼の言う、味も見た目も素晴らしい料理の第一歩である。


 プリンを食べ終えたニコル様がこちらに体を向き直す。


「ドロレス様、わたくし噂で【トランプ】というものを開発なさったとお聞きしました。新しい遊びというものはどのようなものなのでしょう?」


「あの、私も気になっておりまして…」


 横から続いてそっと話しかけてきたのは、ブラントレー子爵家のエミー様。

 薄紫の長い髪は前の方だけ縦ロールになっているが、どうやら天然パーマらしい。そんな派手な縦ロールがあるにも関わらず性格はおとなしく、灰色の目が揺れている。眉毛も目も少し垂れぎみだ。歳は1つ下。


「皆様トランプに興味がおありで?よろしければ一緒にやってみませんこと?」


「ええぜひ!」


「私も!」


 とりあえず4人でやってみることになった。ただし私が参加だと説明する人がいないため、フレデリックを呼ぶ。

 参加する3人を紹介し、そのあとフレデリックを紹介した。チャンスよ、トランプをガッツリ売り込んでちょうだい!


「こちらはルトバーン商会のフレデリックですわ。フレッド、トランプの説明役に回ってちょうだい」


「わか……かしこまりました。ルトバーン商会長男のフレデリックです。以後お見知りおきを。トランプについてご説明させていただきます」



「まぁ、ルトバーン商会といえば下級貴族並の大商会よ」


「下手に貧乏貴族に嫁ぐよりも、ルトバーン商会なら平民でも貴族並に暮らせるわ」 


 後ろの方でコソコソと声が聞こえる。ルトバーン商会ってそんなにも大きいんだ。他の人の話を聞くとより信憑性が増すなー。



 そして【魔物(デーモン)抜き】が始まる。


 カードを引く度にフレデリックがたどたどしくも丁寧に説明し、順調に進む。あー、歳相応で遊んでる感じがする。普通に楽しい。女の子同士でワイワイキャッキャするのって素敵。







「……なぜ私が負けたの……?」


 一番ルールを知っている私が負けた。


「あらドロレス様、あなた顔に出すぎですわよ」


「【魔物(デーモン)】を引いたのだろうと一発でわかりましたわ。だってそのときだけ指で額を触るんですもの」 


 なんてこった!そんな癖があったのか!だから前世でも弱かったのか!トランプを自ら広めようとしてるのに自分が弱いなんて。気を付けよ……。




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