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間違って転生したら悪役令嬢?困るんですけど!  作者: 山春ゆう
第一章 〜出会ってしまえば事件は起こる〜
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14.誕生日会に向けて勉強をするのです

「お初にお目にかかります。ルトバーン商会長男、フレデリックと申します。以後お見知りおきを」


「フレッド!言葉はちゃんとできているわ。あとはその……ガチガチの動きをなんとかしないと」


 動きやお辞儀の角度に苦戦しているのか、右手と右足を一緒に動かして歩いているようなガチガチ。関節はないのか?!とツッコミを入れたい。


「ちゃんと家で復習してるもん!先生も、覚えるのが早いって誉めてくれたよ」


 確かに覚えるのは早い。復習してるなんて、偉いよー!真面目で素敵な人なんだな、フレデリック。


「先生のおっしゃる通り、フレッドは早いわよ。私だってこんなに早く覚えられないもの」


「……立場が違うって理由だけでお祝いできないなら、俺が頑張って近くに立てるようになって、堂々とお祝いできればいいってことだろ?」


「フレッド……」


「俺は子供の頃からずっと商会の勉強だけだった。歳の近い子とは遊ぶ時間もなかった。貴族の家に行ったって、平民ごときがと見下されるばかりだ。でもドリーは違った。貴族や平民の壁なんか、会った瞬間にそっちから砕いてくれた。いきなり過ぎてビックリしたんだよ。でも同じ歳だと知って、仲良くなれると思ったんだ。しかも商売の話もできるしね!」


「ふふ……そうね。商売の話をする子供なんていないもの。それに、私達はトランプを作った友達よ!」


 フレデリックの暗いブラウンの瞳が大きく開く。


「友達……。そうか、友達なんだね!初めての友達だぁ!あ!あとね、俺は誕生会の時にドリーの両親にも改めて挨拶したいの。『ドリーを産んでくれてありがとうございます』って」



 その言葉に、私は驚いた。真っ直ぐなフレデリックの言葉一つ一つに心が温かくなる。大人になってから、気づけばこんなにまっすぐな言葉を聞かなくなっていた。正直に思っている言葉を発したいのに、大人になるにつれ難しさや恥ずかしさ、そんなものが先回りしてきちんと自分の気持ちを伝えたことがあるだろうか。曇りのない想いを向けられるとこんなにも幸せな気持ちになるのか。



 ……だめだ、今こんなに幸せになってはいけない。このままシナリオ通り進むなら、私は第一王子の婚約者になってしまう。そして下手すれば死刑だ。

 その前に今月の誕生日会!そうまずは目先の課題を片付けなければ!

 私の瞳を見て微笑むフレデリックは「まだ頑張るからね!」と言って、その場を離れた。









 さてさて。

 私はチート転生者ではないので、プロ並の料理は作れない。でも、せめて初の誕生会では皆がびっくりするものを出したい。

 クッキーや簡単なサンドイッチが殆どらしく、


「私が作れるもの……材料も少なくて手間が少ないもの……あ」


 これなら材料もわかるし、もしかして作れるかも。ただ分量がいまいち覚えていないんだよな。少しずつ試していくしかないか。




「あの、お嬢様………こちらは厨房でございます。お嬢様が入るようなところではございません。お部屋に戻りましょう?」


 私は今厨房にいる。材料を探しているのだ。もちろん暇な時間よ。さすがに忙しい時間には入らないですから。


「ここって冷たいものを保管する時どうしてるの?」


「冬の時期に取っておいた氷を氷室に保管しております。そちらを刻んで持ってきて、冷暗所に入れております」


 ということは冷蔵庫がないってことね。まぁキンキンに冷やさなくても食べられるし。


「料理長が空いてるときで構わないので、私に時間をくださるよう伝えていただける?」


 近くにいた厨房担当のメイドに声をかける。


「かっ、かしこまりました!すぐにでも確認いたしますぅーーー!」 


 驚きなのか恐怖なのかわからない声を出して、メイドが頭を下げてその場を去ってゆく。


「あっ……今じゃなくてもいいんだけどな」


「お嬢様。お部屋に戻りましょう。いつ確認取れるかわかりませんし、ここでお嬢様を待たせていたら、それはそれで向こうが困ります」


「確かに……。とりあえず戻ろうか」








 部屋で待っていると、厨房担当のメイドがドアをノックした。


「し、失礼いたします。お嬢様、料理長はただいま買い物に出ておりまして、あと30分ほどで帰るかと思います。その後は夕食までお時間があるのでその間なら可能かと思われます」


「わかったわ、ありがとう。じゃあ手か空いたら呼んでもらえるかしら?」


「か!かしこまりました!」


 普段公爵家の人たちと直接関わることがないのだろう。とても緊張した表情で会話をしている。うーん、そうだよねー。平社員が重役会議のメンバーに余裕で声なんてかけられないよね、わかる。私も複数経営の幼稚園だったから、理事長とか直接会ったことないもん。





 しばらくして再びドアをノックする音が鳴る。


「失礼いたします。公爵家料理長のロレンツと申します。ご用件があるとお伺いいたしました」


 30代後半だろうか。髪は短めで清潔感があり、身長は高く、元々が騎士だったのではと思うほどにガッチリとした体型と威圧感が凄まじい。だけども丁寧な口調やしぐさは仕事に真面目なのを感じさせる。


「忙しいところ申し訳ありません。今月末の私の誕生日会に向けて試しに作って頂きたいものがありますの」


「……試しにですか?」


 あのワガママだった私もといドロレスが冒頭謝ったことに一瞬驚いたな今。もう慣れたけどね。


「えぇ、先程厨房を除かせていただいたのですが。卵とミルク、砂糖を使いたいの。用意できるかしら?」


「かしこまりました。さきほどミルクは買い出しの時に購入したので材料には余裕があります。よろしければ今からでも試作いたしますか?」


 まじか!タイミング抜群。


「ありがとう、今からやりましょう」




 料理長と共に厨房へ向かった。




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