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111.幼い頃の約束?

 アイビーが?傘下の男爵家のトーマスをそそのかして私の評判を落とそうとした?なぜ?意味がわからない!


「トーマスはドロレス様が資金援助をしてることを聞いて、嘘をでっち上げてライエルくんにドロレス様の印象を悪くさせ、ドロレス様のせいで学園をやめたと言いふらそうとしたみたいです。でも残念ながら彼のほうが退学でしたけど。おそらく彼は、ドロレス様が直接ライエルくんに声をかけた経緯を知らなかったんですよ。だからライエルくんも彼の言葉を鼻から信じずにずっと疑ってたんだと思います」


「それはわかりましたけど……それと私の評判を落とすのって、関係ないですよね?」



 そうよ、私何も関係ないでしょ?!私をアレクサンダーの婚約者から外したとして自分が側妃になれるかなんてわからないじゃん。


 あ、でも婚約者から外れるのはありがたいけど……でもこのままじゃジュベルラート公爵家が悪評判になってしまう。

 ゲームがもうすぐ始まるのに、こんな濃いキャラいなかったのが不思議でしょうがないわ!



「正直、まだわからないことだらけです。侯爵は本当に関わっていないのか、アイビー様の目的は何なのか。……さっきリンさんを虐めていた令嬢の名前を聞いて、思い出したんですけど」


「何をですか?」


「ヴィオランテ様の後ろに、伯爵令嬢のルティナ様いますよね?」


「ええ、いますわ」


「その伯爵家についているのが、リンさんを虐めている令嬢たちの家です」


「えっ?」



 もしかして……またここにつながるってこと?じゃああの時のアイビーがルティナの言葉を制止したってのは、アイビー的にバレたくなかったってことよね……?

 じゃあ今回のも。


「おそらく、アイビー様がまた関わっていそうですね」



 な、何なのよ……。何を企んでるの?



「ですが、まさか同じ手で来るとは呆れましたよ。リンさんは規則違反停学を盾にしてますよね?あれは、後輩が入ったらそう教えるように、僕がライエルくんに入れ知恵しました。今度何かあったら、実際に停学した男が去年いたぞ、って言えば大丈夫だよって。実際は退学ですけど。ふふっ」


 そういって微笑みながら紅茶を口にするジェイコブ。




「もう少し調べます。でもおそらくこの件に侯爵は関わってない気がします。あの人、バカですから」


「ジ、ジェイコブ様?」


 急に口悪くなったぞ?どうした?


「愛人をたくさん作って再婚もせず、部下に仕事を任せて遊んでいますから。おそらくアイビー様のことなど気にも留めてないでしょう」


「なるほど……」


「ただそれとは別で気になるのは、領地が産業や農業が盛んではないのに、税率が高めなんですよ。十数年前から少しずつ上がってるんです。なので父上が領地調査に行って、税率について高くないか領民に聞いたのですが、みんな口を揃えて『問題ない』と言うのです」


「その分領民に何か還元されているのではないですか?」


「いいえ、何も。おそらく候爵が愛人へのプレゼントや自分の趣味の骨董品収集に使ってる可能性があります」



 クズ野郎じゃん!レベッカが前に言ってた通りだったわ!!


「領地の様子からして、結構苦しいはずなんですが……領民が不満を言わない以上、父上たちは納得せざるを得ないんです。なので別の切り口としてディグス侯爵の金の使い道を秘密裏に調べているのです」



 領民はなぜ何も言わないのだろう。税金は納めたらちゃんと民に還元されるべきじゃない?それなのに、ただ搾取されるだけなんてありえない。


「まだわからないことが多いですが、とにかく、学園のことに関してはアイビー様に気をつけたほうがいいです」


「わかりました」



 アイビーがまた関わってるとするなら、ルティナをそそのかして、令嬢たちに嘘を吹き込んでリンを虐めさせたのだろう。でなければ、ルティナがリンの虐めの内容を知るはずがないのだ。




「それはそうと。今月の16日に【召喚の儀】をするそうです」


 あ、そういえばもう7月だった。いよいよだ。私、結局アレクサンダーの婚約者のままだ!わあ大変!

 気持ちが沈むわ。なんとかなるだろうと、軽く考えていたのかも。

 私、死ぬのかな……。



「正直な話、成功するとは思っていませんが、成功しても失敗してもめちゃくちゃ忙しくなりそうなので、その前にロレンツさんの料理店に行きませんか?」


 さっきまでの話の内容とは全く変わって楽しい提案をしてきたジェイコブに、少しだけ心が晴れる。


 そうよね。成功すれば忙しいのはわかるし、失敗すれば国王とアレクサンダーの膨大な仕事の引き継ぎをしなくてはいけない。


「【治癒の力を持つ女神】が来たらパーティーでもあるのかしら?」


 実際成功するしね。そういえば……かなり大雑把まではあったけど、攻略対象者の選択画面ってこのパーティーじゃん。

 もしゲームと同じように進むなら、攻略対象者は召喚されてすぐの段階で全員挨拶をする。ってことはしばらくヒロインについているのだろう。



「毎回一応準備はしているそうですよ。どんな人が来るかわからないので、ドレスを数着用意しているみたいです」



 あ、ちょっと待てよ。


 召喚されるのはほぼ確実に日本人でしょ?年齢もおそらくゲームと同じ15歳でしょ?



 貴族のマナーなんてほぼ皆無じゃん!!さらにパーティーなんて無理だと思いますけど!!ゲームのようにうまくいくものなの??

 召喚されたら、様子を見てアレクサンダーに助言しよ。




「アレク様は今月は特に忙しいし、そうだなぁ、フレデリックくんも誘いましょうね」


「え、ええ……そうしましょう」


 ニッコリと笑顔で私の顔を見るジェイコブ。彼といると、何でも見透かされているようで恐ろしい。私、自分の気持ちを口にしてないんだけどな……。



 サロンを出ると、まだ人がたくさんいた。もうすぐ夏休みなのでしばらく会えなくなるため、授業後のティータイムが増えるのだ。




 数日後、私はヴィオランテが一人でいるところを発見する。


 今だ……今しかない。アイビーのこと、聞きたい!



 少しだけ大声で名前を呼んでしまい、彼女の肩がびくっと動いた。ごめん、私の声がレディーらしくなかったわ。



 すっごい目つきで見られながらも、私は彼女を半ば強引にサロンへと誘った。




「何の御用でしょうか?」


 私から牽制されるのかと勘違いしているヴィオランテは、低い声で私に問いかける。


「単刀直入に言いますわ。ヴィオランテ様、あなた、私の名前を使って他の人に平民を虐めるよう指示してませんか?」


「な?!ドロレス様!それはあまりにも失礼ですわよ!?あなたと競おうとしているわたくしがそんな卑怯な手を使うとでも思ってるのですか?!」


 水が一気にお湯になったように、急激に怒りの沸点を超えてしまった。

 いや、私も聞き方が悪かった。


「ごめんなさいヴィオランテ様。実は去年も今年も、平民が令嬢や令息たちに虐められているのですよ」


「ライエル様の件は聞きましたわ。ですが今年も、ですか?」


「ええ。しかも、『ドロレス様がお前の悪口を言っていた』と言われるそうです。何故か去年も今年も同じ内容で平民が虐められるんです」


「……ドロレス様が本当にそのようなことを?」


 彼女は疑わしい目で私を見る。私のことをライバル視してはいるものの、認めてはくれている。だから本当に私がやったのか信じられないといった顔だ。


「もちろん言ってないですわ。誰かがそう言うようにきっと指示しているのですよ」


「一体、誰が……?あなたがアレクサンダー殿下の婚約者ということに納得できない人、ということでしょうか?」


 彼女は感情の起伏は激しいけど、頭もいいし真面目だ。私がここまで話せば、ある程度の理解はできていた。




「ライエルに関しては、アイビー様が主犯ですわ」


「えっ?アイビーが?」


「そしておそらく今年の一年の虐めには、ルティナ様も関わっています」


 ヴィオランテは驚いたものの、すぐに冷静になる。


「そんなはずありませんわ。わたくしの友人を犯人扱いしないでくださいまし」


「ライエルの方の犯人は、アイビー様からそそのかされたと事実確認が済んでおります。アイビー様にはまだ確認していませんが」


「……そんな、はずないですわよ……」


「前回、私達といるときにあなたも聞いたでしょう?虐めた人と虐められた人しか知り得ない内容をルティナ様は口走り、アイビー様に制止されています。アイビー様が止める理由なんて1つしかないですわ。『余計なことを口にするな』。私達に聞かれたらまずいことだったのでは?」


 ヴィオランテは俯く。


「アイビーは小さい頃からずっと一緒でしたわ。早くに母を亡くしているので、よくうちに来ていましたから。……そんな彼女が?虐めなど」


 ヴィオランテは否定する。だけど、ほんの少しだけ揺らぎが見えた。もしかしたらヴィオランテもなにかしら思うところがあるのかもしれない。


「ヴィオランテ様。ちなみにアレクサンダー殿下には一目惚れでしたよね?そのときに王妃になろうと思ったんですよね?」


 レベッカから、アイビーは『ヴィオランテを王妃にして自分が側妃になろうとしている』と聞いていた。クリストファーとも情報共有しているから間違いはないだろう。

 ヴィオランテがその目標を立てたからこそ、アイビーはヴィオランテに近づいたのではないのか?




「……少し違います」


「え?どういうことですか?」



 アレクサンダーを好きなんじゃないの?一目惚れじゃなかったの?



「アレクサンダー殿下を初めて見て一目惚れをし、結婚して王妃になりたいと思ったことは間違いないです。ですが殿下に会う前から、アイビーにずっと言われていました。『王妃様になって、私を助けて』と」


「助けて?なにか困ったことでもあったの?」




「困っている、というよりも笑顔で言われていたのです。……こんなこと、派閥の違うドロレス様に言うことではないとは思うのですが……、たとえライバルであろうとあなたのことは認めていますので……」


 ライバルになったつもりはない。

 私のことをライバルだとは思っていても、ここまで話すということは、やっぱり何かあるのかしら?



「わたくしが一目惚れをして本気で王妃を目指すようになったのをアイビーが知ってから、彼女の言葉が『助けてください』ではなく『一緒にいてください』に変わったのです」


「それはどういう意味で?」


「わかりません。ですがわたくしが王妃になれば彼女とは会う機会も少なくなりますから、もし彼女が良ければ側妃に迎え入れようかとは思っていました」


 もしかして、これが側妃に選んでもらうための地盤固めではないのか?そしてヴィオランテにそう誘ってもらうために、そうずっと言い続けてるのかもしれない。


「侯爵当主が少々外れたお方なので、アイビーのことは昔から助けてあげたいと、父と話しておりました。だからディグス侯爵家の……というかアイビーの面倒を見ていたのですが……そのようなことをもし彼女がしているのなら許せませんわ」


「まだ今年の虐めの件は事実がハッキリしていないのでなんとも言えませんが、あの様子を見る限り、なにかしら関わってる可能性はあります。ヴィオランテ様も……こういう言い方は申し訳ないですが、お気をつけて」


「……まだわたくしは信じられない気持ちのほうが強いので……。今日は失礼しますわ」


 二人で部屋を出ると、ジェイコブとフレデリックがいた。


「珍しい組み合わせですね」


 ジェイコブからさっそくツッコまれる。とはいえ内容はわかってるだろうけど。


「ええ。たまには公爵家の令嬢同士で積もる話がありますから」


 ヴィオランテの取り巻きたちも現れ、この組み合わせに若干動揺している。



「それより料理店に行くの、今度の金曜の授業終わりでいいですか?護衛はテレンスを連れていきますね」


「ええ。カフェタイムでいいかしら?」


「はい!そのあと寮に戻りますよね?帰りこのカバンの店に行ってもいいですか?この間ぶつけたら擦り傷ついちゃって」


 フレデリックたちにもプレゼントした同じ高級カバンに擦り傷があり、直してもらいに行くそうだ。ちょうど帰り道になるので問題ない。



「俺も持って行って見てもらおうかな」


 フレデリックも自分のカバンを見渡している。


「じゃあ私も何か買おうかしら」



 3人で話をしていると、私達の横を通り過ぎたアイビーと目が合った。





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